「あれ? なんだかおかしいな」

 そう感じたのは、息子の寝顔を見ていた時でした。 

 「昨日よりも湿疹が増えてる気がするけどなぁ?」

 息子はまだ生後1週間。新生児はお母さんのホルモンの影響を受けているので肌トラブルが起こりやすい、と、おっぱいマッサージをしながら助産師さんが教えてくれました。

 落ち着かない気持ちで行った生後1か月健診。

 「赤ちゃんのうちはアトピーかどうか判断できないから、心配しすぎないでね」。

 先生の気遣いは感じましたが、「病院に行けばわかる」と思っていたのにわからなかった反動で、「子育ての不安+アトピーの可能性への不安」が一気に膨らみました。

 なにをどうしたらいいのかわからないのに、心臓をギュッとつかまれるような強迫観念。とうとう私は迷走しはじめてしまったのです。

 当時、私の情報源はインターネット。寝る間も惜しんで検索し、期待して試してみては落胆することの繰り返し。氾濫する情報に踊らされ、理性も気力も体力も奪われていった気がします。

 生後3か月を過ぎると、息子の顔は湿疹で赤く、ホッペは黄色い浸出液でカピカピ。体の皮膚は、肌着の縫い目が当たるところに血がにじむ。浸出液の固まりで肌に肌着がくっつくため、脱がせる時にはがれ、ジクジクとまたしみだす。何度洗濯しても、息子のベビー服からは血と黄色いシミが消えませんでした。

 息子の顔から笑顔は消え、私にあったのは絶望感だけ。もう限界でした。

 「このままでは私が壊れる。息子を守れない」

 切迫した気持ちでアレルギー専門医を訪れたのは、息子が生後4か月の時。

 息子を診た途端、先生の顔色がサッと変わりました。

 「どうしてこんなにひどくなるまで放っておいたの!」

 へんな話ですが、叱られながら私が感じたのは安堵です。

 息子の検査結果は、入院加療が必要なほどのアトピーと重篤な食物アレルギー。治療方針を聞きながら、「息子は治るんだ」と、涙がポロポロこぼれてきたのを覚えています。

 そんな息子も今では、見ただけではアレルギーっ子だとわからないくらい元気になりました。

 アレルギーライフは長丁場。良くなっても、ちょっと後戻りして、また良くなっていきます。

 また、アレルギーには個人差があるように、アレルギーっ子にも、アレルギーっ子ママにも個性があって、みんな違う。誰かにとって良かったことが、そのまま自分にも当てはまるとは限りません。

 まわりと比べず、早く結果を出そうと焦らずに、自分のペースでゆっくりと進みましょう。

あなたとお子さんの頑張りは時期がくれば、ちゃんと実を結びます。だいじょうぶですよ。

 


伊藤ミホ (いとう みほ)

アレルギー対応料理研究家。

自身の子供の食物アレルギーを通して、食べ物で体調を整えることの大切さを実感。

小麦・卵・乳製品・大豆・アーモンド・ゴマ・落花生・エビ・カニ・牛肉などを使わないグルテンフリー&食物アレルギー対応の料理教室「コメコメ・キッチン」主宰。

良質な食材を使いながら、できるだけ簡単に、素材の味をいかした「引き算」のおいしさを感じられるレシピを提案。

著書

『寒天を使って、サクサクおいしい! 米粉のクッキーとタルト』(世界文化社)

『家族みんなを元気にする グルテンフリーレシピ』(清流出版)


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