市場連動型の電気契約プランとは? 仕組みやメリット、デメリットを解説
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昨今の世界情勢にともなう発電用燃料市況の高騰と、電力供給の減少に起因する卸電力市場の高騰を受けて、電気料金が急騰しています。特に新電力と呼ばれる新興の電力事業者が販売する市場連動型プランの電力価格高騰が著しく、契約者にとっては大きな負担です。
この記事では新電力の市場連動型プランにあらためて着目。市場連動型プランとはそもそも何か、市場連動型のメリットとデメリット、市場連動型を扱う電力会社などの項目別にくわしく解説していきます。
市場連動型プランでの電気契約について解説
市場連動型の電気プランとは、消費者に販売する電気の価格が日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格に連動に合わせて変動する電気料金メニューのこと。JEPXは電力専門の卸売市場で、2003年に電力事業の規制緩和で市場競争を自由化するために設立されました。
JEPXで電力を販売しているのは、自社で発電所を運営する東京電力や関西電力などの大手電力会社と、民間の発電事業者がメイン。
一方、JEPXで電力を購入しているのは「新電力」という小売電気事業者で、JEPXで仕入れた電気を企業や一般家庭などの契約者に販売しています。
「新電力」のほとんどは自前の発電施設や送配電設備を持たず、JEPXで仕入れた電気を大手電力会社の送配電設備を借りて販売しています。つまり、電力も送配電設備も大手電力会社と同じであるため、新電力の電気の品質や供給体制が大手より劣ることはありません。
市場連動型の電気料金プランは新電力が独自に販売する料金メニューで、従量料金の算出方法によって従量料金型と燃料調整費型の2つに大別できます。従量料金型は市場連動型の代表的な料金メニューで、JEPXの約定単価に連動して従量料金が変動するプランです。
一方、燃料調整費型は約定単価の変動を燃料調整費の調達調整費という項目に反映させるのが特徴です。料金がJEPXの約定単価に連動して変動する点は従量料金型と同じですが、変動費が電源調達調整費に反映されるため市場連動型だとわかりにくい問題があります。
JEPXで取引量が最も多いスポット市場では、1日を30分単位で区切って48コマとし、翌日受け渡しする電気を1コマごとに取引しています。そのため、電気の約定単価(市場価格)は電力の需給や燃料価格などの推移に応じて30分単位で変動するのです。
平日の場合、約定単価は昼間が高く、夜間から早朝にかけての時間帯は安くなります。もちろん季節によっても変動します。たとえば、真夏や真冬はエアコンの利用率が増えるため約定単価も高くなるのが一般的です。また単価は全国一律ではなく地域によって異なります。
電気はガスや石油と違って貯蔵がほとんどできません。そのため、電力を供給する発電事業者は、常に電気の需要と供給が一致するように発電量を調整する必要があります。電力市場の規制緩和は電気料金の低下とともに電力需給のバランス調整も可能にしました。
ちなみに、大手電力会社が提供する従来型の料金プランは「従量電灯型」と呼ばれ、金額固定の基本料金+使用料の応じた電力量料金+燃料費調整額+再生可能エネルギー発電促進賦課金の合計額で算出されます。
そのうち「再生可能エネルギー発電促進賦課金」は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気の買い取り費用の一部を消費者が負担する制度で、市場連動型の料金プランにも含まれています。
従量電灯型の料金プランは電気の使用量によって1kWhあたりの料金単価が変わります。また発電コストに変動があれば月ごとの燃料費調整額に反映されますが、市場連動型のように電気料金全体が変動する仕組みではないため、変動量はそれほど大きくありません。
市場連動型プランのメリットを紹介
市場連動型プランのメリットは、JEPXの約定単価が一定の水準を下回っていれば従量電灯型プランよりも電気料金を安く設定できること。また、従量電灯型とちがって料金が30分ごとに変わるため、相場が安いときに電気を使うことで電気料金の節約も可能になります。
前述のように電力の約定単価は平日では需要が多い日中が高く、深夜から早朝までの時間帯は安くなる傾向があります。JEPXの約定単価の変動パターンを分析して、消費者の生活スタイルや電気の利用目的に合ったプランを選択すれば、一層の料金節約が可能です。
JEPXの約定単価はWebサイトでリアルタイムに確認できます。電力の約定単価は企業活動や人々の生活習慣、気候の変動などを反映して周期的なパターンで変動します。その動きを観察することで社会の仕組みや環境問題、節電などに対する意識も高まるでしょう。
市場連動型プランのデメリットを解説
市場連動型プランのデメリットは、JEPXの約定単価が一定の水準を上回ってしまうと電気料金が高騰することです。電力市場の相場予測は不可能に近く、過去には約定単価の急騰によって契約時の料金単価の10倍近い電気料金が請求された事例もあります。
電気料金の変動が事前に予測できなければ、企業経営でコスト変動を前提としたリスクヘッジができない、といった問題にもつながります。一般家庭でも料金単価が高騰すると、時間帯によって電気の使用量を抑える程度の節電では焼け石に水です。
2021年以降、市場連動型プランの料金単価が急騰したり、新電力の事業者の撤退や倒産が相次いだことで「市場連動型プランは安かろう悪かろうだ」と痛感した方が多いかもしれません。一方で、約定単価次第で価格的なメリットを得られることも事実です。
市場連動型を扱う電力会社を紹介
JEPX市場における約定単価の高騰により、新電力の倒産や事業撤退をはじめ、大手電力事業者を含む電力契約の解約や新規契約の停止といった事例が相次いでいます。一部では、新規契約のみならず電力契約の更新も不可能になるという「電力難民」も発生しています。
そのため、大手電力会社が高圧以上の法人契約者を対象に、新電元からの切替え希望者向けの市場連動型プランの創設を検討する動きもあるなど、流動的な情勢が続いています。現在のところ、大手電力会社の市場連動型プランは前述したように法人契約者が対象です。
一般消費者向けの市場連動型プランについては、燃料市況や電力単価の高騰により電気料金の現状維持と先行きの見通しが困難な状況にあるため、市場連動型を積極的にアピールする電力販売事業者は多くありません。
現在でも市場連動型プランを設定している電力会社の例として、以下があげられます。
- 「アストでんき」のアストマックス・エネルギー株式会社 アストマックス・エネルギー公式ウェブサイト
- 「エフエネでんき」の株式会社エフエネ 電力で毎日をもっと自由に|株式会社エフエネ
- 「自然電力」の自然電力株式会社 自然電力のでんき|自然電力株式会社
- 「めぐるでんき」の株式会社向こう三軒両隣 株式会社向こう三軒両隣 めぐるでんき事業部|We create the smart community.
まとめ
市場連動型の電気プランとは、電気料金が日本卸電力取引所(JEPX)の約定単価に連動する電気料金メニューのこと。
市場連動型プランは新電力が主力商品として取り扱う契約プランで、JEPXの約定単価によっては低価格で電力を購入できるメリットがあります。
一方で、約定単価が一定の水準を上回ってしまうと電気料金が高騰してしまうデメリットには注意すべきです。
最近は電用燃料市況の高騰や電力供給の減少を受けて電力価格の高止まり傾向が続いていますが、約定単価によっては市場連動型プランの方が価格的なメリットがあります。
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