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ふぐ免許は全国で使える? ふぐの毒性や免許の取得方法について解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/09/18
更新日:2022/12/20
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目次

ふぐは、高級魚でありながら、古くから日本人の間で「ふぐ料理」として食べられる人気の高い魚です。
可愛らしい見た目に反して、ふぐの毒性は非常に高く、調理するには免許が必要となります。

本記事では、ふぐの調理に免許が必要な理由やふぐの生態、ふぐ免許の取得方法などについて詳しく解説いたします。

ふぐの調理に免許が必要な理由を解説

ふぐの調理に免許が必要な理由は、ふぐの毒性の強さと、種類によって可食部分が異なるからです。
古くから毒があると知られていましたが、その美味しさから現在も人気の高い食材です。

ふぐ以外にも、青梅やこんにゃく芋などの毒性があると知られている食材も、調理方法の工夫によって、一般家庭で広く普及した食材もあります。
ふぐはこれらの食材よりも強力な毒を持ち、ふぐの種類も多いため他の食材よりもさらに注意して口にする必要があるのです。

「ふぐ免許」とは?

ふぐ免許は、ふぐ条例に基づき都道府県知事が行うふぐ調理師試験で免許を取得した人に与えられる資格です。
そのため、有資格者以外がふぐの調理をすることはできません。

ふぐ免許は、都道府県によって以下のように呼び名が異なります。

  • ふぐ包丁氏
  • ふぐ取扱者
  • ふぐ処理師
  • ふぐ取扱登録者
  • ふぐ調理者


都道府県によって、呼び名が異なる免許ですが、これらは「ふぐ調理師」として全国で統一されています。
しかし、ふぐ免許は調理師免許のような国家資格ではありません。
各都道府県の自治体が行う試験の内容や認められる調理の範囲によって調理内容や範囲が異なります。

国家資格ではないため、試験を行う地域と、講習のみで認可される地域があります。

  • 試験に合格した場合:「免許」交付
  • 講習会のみで認可される場合:「登録証」や「受講済証」など


東京都の場合、試験が行われるため、「ふぐ調理師免許」が取得可能です。

また、都道府県によっては、他の県と連携しているところもあり、ふぐ調理師免許を保有している場合、他の地域へ移住した際に申請のみで許可が降りる場合もあります。例えば、埼玉県でふぐ調理師免許を取得し、東京都に移住した際は講習を受講し、申請することで、東京都でのふぐ調理師免許を取得することができるのです。この場合は、調理師免許を保有し、健康状態が良好である場合に認可されます。

ふぐの生態・毒について解説

日本では、ふぐ料理は、見た目の美しい「てっさ」と呼ばれる刺身料理や「てっちり」などの鍋料理などが有名です。
一方、ふぐの毒性は非常に強いことから、海外の人や馴染みの少ない人にとっては強烈なイメージを持たれることもあるようです。

ふぐ料理の歴史は、とても古く、縄文時代に日本人が初めて口にしたのがきっかけといわれています。江戸時代にはレシピが記載された書類も見つかりましたが、毒性が強いことで禁止され、本格的なふぐの調理方法が確立したのは明治以降のことです。

フグの生態を解説

古くから食されてきたふぐの魅力は、味だけでなく、その生態も興味深いものです。以下に詳しく解説いたします。

・ふぐが膨らむ理由
ふぐが膨らむのは、「天敵に威嚇するとき」と、「身を守るとき」の2つです。
ふぐは、胃の腹面に空気や水を吸い込むことで膨張します。
膨らむ大きさは個体差によって異なりますが、個体によっては2~4倍ほど膨らむこともあるようです。

・強力な歯
ふぐの口内には、4本の強力な歯があります。
上と下にそれぞれ2本ずつ生えており、その力は海底のえびやカニ、巻き貝などみ噛み砕けるほどです。
その強力な歯は、他のふぐや自分の口内を傷つけてしまうこともあるため、養殖で育てられるふぐは「歯切り」という処置を行うこともあります。

ふぐの毒について解説

ふぐの体内には、「テトロドトキシン」といわれる毒があります。
おもに血液や筋肉、内蔵、皮膚などに毒を持ち、これらの毒はふぐの体内で作られます。

しかし、ふぐは本来、毒を持つ魚ではありません。
餌となる微生物の中には、毒の要素を含む海洋細菌があり、餌を食べていくにつれて毒が蓄積され、強力な毒を持つようになったのです。そのため、同じ海域に生息している同じ種類のふぐでも、個体によって餌が違うため、毒の程度が異なります。

・ふぐの毒による症状
ふぐの毒を口にしてしまうと、最悪の場合死に至る可能性もあります。
ふぐの持つ「テトロドトキシン」は、酸性カリの約1000倍といわれるほど強力な毒です。

毒の強さや部位やはふぐの種類によって異なり、中には毒を持たないふぐもいます。
ふぐの種類別に、毒を持つ部位について解説いたします。

マフグ
筋肉:◯
皮 :✖
精巣:◯

トラフグ
筋肉:◯
皮 :◯
精巣:◯

シマフグ
筋肉:◯
皮 :◯
精巣:◯

サンサイフグ
筋肉:◯
皮 :✖
精巣:✖

参考:自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

・ふぐの毒による中毒症状
ふぐの中毒症状でよくみられるのは、唇・舌の先・指先に痺れを感じ、麻痺を起こす症状です。

症状が軽い場合は、頭痛や嘔吐を発症し、初期の段階で気がつくこともあります。
しかし、症状が重い場合は、神経が麻痺してしまい、呼吸ができなくなることで、最悪の場合死に至ってしまうのです。

こうしたふぐの中毒症状は、食後まもなくから平均2時間前後、5時間以内に発生するといわれています。

ふぐ免許は全国で使えるのか?

ふぐ免許は、都道府県によって受験内容や取得内容、難易度などが異なり、その安全性について疑問視される声も多くあがりました。

一般団体法人の全日本ふぐ協会では、長期に渡って厚生労働省に意見書を提出していたといいます。
こうした長年の働きがけが結実し、2019年6月28日、ふぐ免許を全国で統一する基準がまとめられました。

2021年には、ふぐ免許の全国統一化が決定しました。
ふぐ免許の統一をすることで、今まで以上の信頼を得やすくなり、ふぐ料理に親しみのない外国人へのアピールも計画されています。

ふぐ免許の取得方法を紹介

東京都でふぐ調理師免許を取得する際は、学科試験と実技試験の2つの試験を合格する必要があります。
以下に試験の詳細をご紹介いたします。

・受験資格
フグ調理師試験を受験をするためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 調理師免許の保有
  2. ふぐ調理師の下でふぐ取扱業務の経験が2年以上あること


・費用
受験料:19700円
免許発行手数料:4800円

・学科試験の内容
学科試験では、大きく分けて以下の2つに関する知識を試されます。

  1. ふぐに関する一般常識
  2. 東京都ふぐ取扱い規制条例および同条例施行規則に関する知識


・実技試験の内容
実技試験では、大きく分けて以下の3つの知識、技術を試されます。

  1. 5種類のふぐから種類を答える
  2. 内蔵の識別や毒性の鑑別
  3. ふぐ処理技術(丸ふぐから毒を処理し、ふぐちりの材料、皮ひきを行い、刺身を調します。実際に料理として提供するまでを審査します。)


以上が従来の免許制度の詳細ですが、免許の統一化に基づき、東京都では、令和5年4月1日からふぐ調理師試験制度が変わります。
変更点について以下にご紹介します。

・受験資格の廃止
調理師免許の取得、調理師の下でふぐ取扱業務の経験が2年以上あることの従事経験が不要

・資格名称が「ふぐ取扱責任者」に変更
従来の「ふぐ調理師」の名称から「ふぐ取扱責任者」に変更
(令和5年3月31日までに「ふぐ調理師免許を取得した人は、「ふぐ取扱責任者免許証とみなされるため、再試験や切替交付手続きなどは不要です。)

・試験内容の変更
試験内容に関する変更点は以下の2点です。

  1. 学科試験の試験項目に「水産食品衛生に関する知識」を追加
  2. 実技試験の「ふぐ処理技術」の対象から調理技術の部分が除外される


※令和4年度に行われる試験は、従来通りの「ふぐ調理師試験」が実施されます。

まとめ

ふぐは、最悪の場合死に至るほど強力な毒を持っているため、ふぐ調理師免許を取得している場合のみ、調理が認可されます。
しかし、免許の内容や試験難易度は地域によって異なり、ふぐの調理方法や消費やに対する安全性が不安視されてきました。試験内容や地域によって異なるふぐ免許の名称が、ふぐ取扱責任者となり全国統一されることで、より幅広い人にふぐ料理の魅力を知ってもらうきっかけとなるでしょう。ふぐ取扱責任者の免許を取得する際は、地域によって改正される時期が異なりますので、事前に確認する必要があります。

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