ふぐの調理師免許とは 取得の仕方や勉強方法の解説
目次
寒さの厳しい冬が旬である、高級魚として有名な「河豚(ふぐ)」。
透けるほど薄く並んだ姿が美しい、職人技の薄造り「てっさ」や、骨までしゃぶりたくなる旨味の強い「から揚げ」、
ふぐを隅々まで味わう、出汁の効いた「雑炊」など、楽しみ方は幾通りもある魚になりますが、とても強い毒性を持ち合わせていることから、扱うには特殊な免許が必要なことは有名な話です。
この記事では、ふぐはなぜ免許が必要か、ふぐ調理師免許と合わせて無免許でさばいた場合どうなるかについて、それぞれ解説いたします。
ふぐの持つ毒性は、指先がほんの少し腫れたり、舌先が若干痺れたりするような弱い毒とは違い、人の命を危険にさらすようなとても危険な猛毒です。
この記事を通し、ふぐの持つ毒の危険性とふぐを扱う免許の必要性について知ることで、お店で板前さんがさばいたふぐをより美味しく頂くことが出来るようになるでしょう。
ふぐはなぜ免許が必要か
ふぐの持つ毒は「テトロドトキシン」という猛毒です。
毒性は青酸カリの約1000倍とも言われ、いまだに確実な解毒法が見つかっていない危険なものになります。
ふぐの種類にもよりますが、この毒性は主に血液や内臓に含まれるため、ふぐをさばく際にはこれらを完全に排除し、安全で美味な身や皮のみを食さねばなりません。
少量でも命に関わる危険性の高い猛毒のため、さばかれていない丸のふぐを扱うには絶対に安全な技術力と、それを保障する特殊な免許が必要という仕組みになっています。
ふぐ調理師免許とは
ふぐ調理師、ふぐ処理師、ふぐ取扱者、どれもふぐをさばく際に必要な免許資格の名前ですが、呼び名は都道府県ごとに異なり、その試験内容も難易度が変わってきます。
地方団体によって変わるので一概には言えませんが、
- 海のない内陸県のような場所では丸のふぐをさばく機会はそうないことから、資格を取る際の試験も比較的難易度は低め
- ふぐが有名な下関のある山口県や、東京都をはじめとする関東圏内(埼玉県や神奈川県)は人流が多く全国から品物も集まりやすいことから試験内容の難易度も高め
というような形になっています。
内容が都道府県ごとに定められていることから、基本的には習得した都道府県でのみ有効な資格です。
講習、試験、実技試験、ふぐの種類ごとの識別や内臓の鑑別など、免許をとる際の試験の形式は様々ですが、絶対に抑えるべきポイントは共通して
- テトロドトキシンが含まれる有毒部位の除去方法
- ふぐに対する基礎知識
の2点であるといえます。
免許の取り方
都道府県ごとの試験内容にもよりますが、ふぐ調理師の免許を取るにはいくつか条件があります。
例えば東京都であれば、
- 調理師免許を取得していること
- ふぐ調理師の有資格者の元で2年以上従事していること
- 上記を証明する有資格者のサイン付きの願書を提出すること
と、なります。
4月頃に受験スケジュール発表、5~6月頃に願書受け付け、7月~8月に学科、実技試験となるのが例年の流れです。
試験内容は学科と実技の2科目。
学科では 、
- 東京都ふぐの取扱い規制条例及び同条例施行規則に関すること
- ふぐに関する一般知識
マークシート形式で合計30問が出題されます。
実技では、鑑別と処理技術の2点、を、それぞれ時間内に行うことになります。
学科試験の対策法としては、東京都食品衛生協会から発売されている、
- 試験対策用の教本
- 過去数年間分の問題集
の2点を購入することが出来ます。
一般的に売られている教本もありますが、同じ答えでも問題内容の傾向や言い回しなどが地域によって様々なため、東京都の免許なら公式の教本を買うのが間違いないでしょう。
マークシート形式のテストにはなりますが、全く対策せずに合格するのはほぼ不可能に近いような内容ですので、繰り返し勉強しておくことが必要です。
もうひとつの試験である実技の対策は、ひたすら練習あるのみです。
市場では、試験の時期になるとふぐ除毒所にて試験用のレッスンが行われていますので、足を運んで習いに行くことが出来ます。
また、職場の有資格者の方に時間を割いていただき、直接教えて頂く方法もあります。
除毒所のレッスンでは入会金のほか、必要な道具一式を購入する必要がありますが、職場で習うのであればそれらは必要ありませんので、費用を抑えることが可能です。
どちらにしても練習用の冷凍ふぐを購入し、何度も練習することになりますが、1本あたりの費用も除毒所の方が高い場合もあります。
費用を抑えるならば職場での練習が理想ですが、環境や時間を割いていただけない場合は足を運んで有料のレッスンを受けに行くことが必要となるでしょう。
免許にかかる費用
免許にかかる費用も東京都を例にさせていただきます。
まず、受験の手数料として、19700円
合格した場合、免許の発行手数料として、4800円
学科試験の対策として、
- ふぐ調理師教本 3600円
- 過去問題集 1600円
また、実技試験対策で有料のレッスンに通う場合、
- 入会金 6000円
- 臓器鑑別札 1500円
- 練習用冷凍ふぐ 1本3000円(指導込み)
職場で習う場合、魚屋が冷凍ふぐを取り扱っている場合もあります。
- 1本あたり約1500円前後
本番が近くなると、実際の会場で実技模擬試験というものもあります。
- 1回15900円
他にも、実技試験内では時間内にふぐを解体、除毒、皮を引かなくてはならないことから、出刃包丁を複数本に分け、常に包丁が最善の状態で行うのが良いとされるため、手持ちに無い方は新しい包丁代金なども必要になるかもしれません。
練習できる環境や、練習する冷凍ふぐの本数には個人差があるため、確実な額というものはありませんが、ただ試験を受けられれば良いというわけではないことが分かります。
ふぐ調理師免許の合格率
合格者の割合は、例年およそ5割前後となっています。
まず、試験を受けるために有資格者の元で2年以上の従事が必要なことや、その方のサインが必要なこと、受けるだけでも安くはない費用がかかる、などという点などから、合格する可能性が乏しいと判断されると試験自体を受けることが出来ません。
そもそも調理師免許を持つプロが受ける試験ですので、試験自体の合格率のみでいえば、そこまで低くはないものといえます。
無免許でさばいた場合どうなるの
ふぐをさばくには免許が必要ですが、無免許でさばくことだけが違法というわけではありません。
有資格者の確実な指導の元でなら、本人は無免許でもふぐの調理は問題ないため、お店で食べるふぐの全てがふぐ調理師免許を持つ方の仕事とは言い切れない部分もあります。
ふぐ調理師免許は国家資格ではないこともあり、都道府県ごとに試験や合格のラインも変わることから、一概にすべてが法律によって裁かれるとは言い切れません。
しかし、毒があると知りながら、不確かな知識と技術でふぐをさばき、それをお客さんに提供し、お金をもらうことが常識的に考えて正しいこととは言えないことは分かると思います。
これが仮に家族や友人相手だったとしても、ふぐのもつ毒であるテトロドトキシンが命に関わる猛毒である以上、まさかそんな毒があるとは知らなかった、ではとても済まされません。
ふぐの内臓は特に猛毒であり、普通のゴミとして捨ててはゴミの回収業者の方や野良猫、カラスなどが触ってしまう危険性もあることから、必ず鍵付きの容器に入れて保管し、専門の業者でないと処分してはならないという決まりもあります。
ふぐを食べたいのであれば信頼できるお店に行くか、プロによって有毒部位が取り除かれたふぐ(身欠き)を買いましょう。
免許を持つことで働ける就業先
ふぐ調理師免許を持つことは、飲食店で働くにあたって大きなメリットです。
知識と技術が無いと習得が困難な免許であり、除毒の試験は清潔な仕事でないと合格も出来ない事から、一定のライン以上の実力がある、という証明でもあるため、仮にふぐを扱わない店舗だとしても、現場での即戦力として活躍しやすくなります。
高級魚であるふぐは取り扱う店舗のランクもおのずと高くなることから、働ける飲食店の幅も広がりますし、店舗によっては危険手当もつくこともあると収入が期待できる点もメリットといえるでしょう。
専門的な資格ではありますが、そもそもの受験資格が厳しいことから、ふぐ調理師免許は、
- 安全で衛生的な仕事
- 一定以上の知識と実力
- 仕事に対する向上意欲
など、転職の際にはそれらを証明出来るような側面がある資格ともいえます。
関連記事:
飲食店の開業に必要な届けと資格の解説
まとめ
冬が旬であるふぐは「テトロドトキシン」という猛毒を持つ魚で、さばくには「ふぐ調理師免許」という特殊な免許が必要となります。
この免許は、都道府県ごとに独自の試験内容が定められており、名前も「ふぐ調理師」「ふぐ処理師」「ふぐ取扱者」など様々ですが、基本的には習得した都道府県でのみ有効な資格です。
東京都を例に出すと、ふぐの持つテトロドトキシンは命に関わるような猛毒で、扱いには危険を伴うため、
- 調理師免許を取得していること
- ふぐ調理師の有資格者の元で2年以上従事していること
- 上記を証明する有資格者のサイン付きの願書を提出すること
となり、受験資格の時点で難易度が高く設定されています。
その試験内容は都道府県ごとに様々ですが、基本的には
- テトロドトキシンが含まれる有毒部位の除去方法
- ふぐに対する基礎知識
の2点となり、学科試験と実技試験が必要になる場所が多くなります。
専門的な資格ではありますが、そもそもの受験資格が厳しいことから、ふぐ調理師免許は、
- 安全で衛生的な仕事
- 一定以上の知識と実力
- 仕事に対する向上意欲
などを証明できる資格でもあるため、料理を仕事とする方にとって習得しておいて損はない資格といえるでしょう。
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