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日本料理における修行ではどのようなことをするのか 修行の目的と段階の解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/10/06
更新日:2022/12/20

目次

日本料理店に訪れるとカウンターでお客様を迎え、料理やサービスの提供を行ってくれる「板前」。板前として店に立つまでには「板前修業」を行い、鍛えられた技術や専門知識を生かしてお客様をもてなしています。 

板前修業は厳しそう、難しそうといったイメージを持ちやすいですが、現場ではどのように修業が行われているのでしょうか。この記事では、日本料理店で板前になるまでの修業について解説いたします。 

 

日本料理における「修業」とは

板前修業とは、見習いの新人が一人前の板前になるため、日本料理店の現場で、プロの料理人のもと、日本料理の知識や調理技術を習得していくことです。修業は掃除や洗い物といった雑用から始まり、盛り付け、火を扱う調理、味付け、と段階的にお客様に提供する料理に携わることができるようになり、最終的には包丁を扱う調理をする板前を目指します。 

 

修行の目的

板前修業の目的は、見習いから一人前の板前になることです。日本料理店に就職してすぐの新人に調理を任されることはなく、修業を積み、知識や技術を身につけていくことで、少しずつ仕事を任されるようになっていき、最終的には板前として料理店に立つことができます。 

 

板前とはどんな人か 

日本料理を専門とし、日本料理の知識や高い調理技術を持ち合わせた実力のある料理人を「板前」と呼びます。店の味や印象を左右する料理店の重要なポジションです。包丁を扱い、刺身を切るなどの調理においてメインとなる仕事を行っています。「板前」と呼ばれる由来は、「まな板の前に立つ」、「板場の前に立つ」という意味からきているといわれ、関西では「板前」のことを「板場」と呼ぶことが多いようです。 

カウンターのある料理店では、お客様の前に立ち、料理の提供や接客を行う場合もあります。 

 

調理場を仕切り、板前を束ねる長である料理長のことを「板長(いたちょう)」または「立板(たていた)」「花板(はないた)」と呼び、副料理長のことを「次板(つぎいた)」または「脇板(わきいた)」と呼びます。 

板前になるための修業途中の料理人のことは「裏方」と呼び、裏方にも地位別に呼び名がつけられていることが一般的です。 

板前と似た職業として、「職人」があげられますが、寿司職人や天ぷら職人などの仕事は、寿司や天ぷらなど特定の料理に特化した料理人のことをさし、日本料理全般を専門とする板前とは異なります。 

 

板前に求められるスキル

板前には幅広く、深いスキルが求められます。専門性の高い日本料理の知識や調理技術はもちろん、料理を美味しい状態かつお客様にとって最適なタイミングで提供するための、効率的に動く力や段取りを組む力、調理場全体を見て連携を図る力、お客様とのコミュニケーションをとるための接客力、など求められる力はとても多いです。板前に必要とされる幅広いスキルを獲得することが修業の大きな目的となります。 

 

板前になるまでのステップ

一人前の板前になるには、10年かかるといわれていますが、基本的に以下の5つの段階を経験することが必要です。各段階で知識や技術を身につけ、日本料理の調理の五法(生、煮る、焼く、揚げる、蒸す)を習得していきます。順を追って一つずつステップアップしていき、確実に力をつけていくことが大切です。 

 

追い回しとは 

板前修業は「追い回し」と呼ばれるポジションから始まります。追い回しとは、掃除や洗い物、買い出しなどを中心に、頼まれた雑務をこなす仕事です。他にも、野菜の下処理や器の用意などを任されることもあります。調理に直接携わることはほとんどありませんが、包丁の使い方の指導を受けることや、まかない作りを担当することで調理技術や感覚を鍛えていきます。 

追い回しの期間に、仕事の内容を把握して現場の流れをつかみ、段取り良く料理提供を行う力を養っていくことが大切です。 

 

八寸場 

追い回しで仕事ぶりを認められると、次に任されるポジションは「八寸場(はっすんば)」です。八寸場では、他のポジションで調理された料理を先付けや八寸として器に盛り付けます。先付けとは、会席料理などの始めに提供される前菜のような料理で、八寸とは、海や山の幸を複数盛り合わせた料理です。八寸場で自分が触れた料理を実際にお客様に提供させてもらえるようになります。八寸場で大切なことは盛り付けの技術やセンスを身につけることです。料理の見た目は美味しさを左右する重要な役割を持っています。また、お客様の食事ペースに合わせ、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちに提供できるよう、タイミング良く、スピード感をもって提供する力を身につけることが大切です。 

 

揚場 

次に任されるポジションは「揚場(あげば)」や「焼場(やきば)」と呼ばれる仕事です。天ぷらなどの揚げ物や、魚などの焼き物をはじめとする加熱調理を行います。最適な火加減で調理する必要があり、技術やスピード感、段取り力が求められます。 

 

蒸し場 

次に担当する「蒸し場(むしば)」は、「煮方(にかた)」ともいわれ、料理の味付けを担う重要なポジションです。出汁をとる、煮物や椀物の味を決める、蒸し物を調理する、などの仕事を行います。店の味を決める特に責任のある仕事です。店の味を一定に保ちつつも、食材や調理法にあった味付けをすることや、他の料理とのバランスをとることなどに配慮して調理を行います。研ぎ澄まされた味覚が必須であるため、日頃から味覚を整えておく配慮が必要です。

 

刺し場 

「刺し場(さしば)」は「板場」ともいわれ、まな板の前に立ち刺身を切ることを担当します。刺し場を担当しているのが板前であり、調理場で最重要のポジションです。刺身を切るというシンプルな仕事ですが、刺身は切り方一つで食味を変えるため、高い技術が必要とされます。刺し場がカウンターの前にあり、お客様の前で調理を行う料理店では、お客様との会話や食事の進み具合に合わせた料理の提供などの接客技術も求められ、調理場や客席など全体を見渡す力が必要です。 

 

修行中のポイント・注意点 

板前修業は10年かかるといわれているように、板前になるには相応の年月を要します。技術が身につけばすぐに一人前になれるということはなく、年月をかけて四季による料理の変化や調理の流れを掴み、全体を俯瞰してみる力をつけることが必要です。 

お客様の口に入る料理を調理すること、伝統的な日本料理を受け継ぐことは責任が伴うことから、修業は厳しく、多くの努力や忍耐力が必要不可欠になります。下積みの役割や意味を理解して、一つ一つ丁寧に修業に取り組む姿勢を持ち続けることが大切です。 

 

まとめ 

日本料理における板前修業とは、見習いが一人前の板前になることを目的として、日本料理の知識や調理技術を始めとする、幅広く深いスキルを習得していくことです。修業は段階的に行われることが一般的で、段階を経ていくにつれ、より多くのスキルが身に付いていき、最終的に板前として活躍することができます。 


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