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板前とは なるためのステップと板前から転職するには

シェアダイン編集部
作成日:2022/06/15
更新日:2022/11/10

目次

和食の食事処にいくと、「板前さん」という言葉を耳にします。和食料理人や寿司職人、といった言葉もよく聞きます。

今回の記事では、板前と他の職人との違い、板前になるにはどのような進路があり、将来的にはどのようなお店で働くのか、といった点について解説いたします。

板前とは

板前とは、簡単にいうと和食のプロです。元々は、まな板の前で仕事をする人たちという意味で、業界用語として用いられていましたが、それが一般にも広まりました。和食料理人、日本料理人といった言葉は同じ職業を表しています。

また、寿司職人、天ぷら職人のように、○○職人と具体的な料理名+職人とつく場合は、広い意味では和食料理人(=板前)ですが、その中でも具体的な料理に特化したプロ職人のことを指します。

板前は、料亭や割烹、和食料理のお店などで料理を作っています。おせちや懐石料理などの日本の伝統料理を作るプロフェッショナルです。季節に合わせた食材を使って見た目も美しい懐石料理を考え、作り、接客をすることもあります。ベテランになると、食材選びや食材探しも自ら行い、全国から美味しい食材を集めることもします。和食の食材は多岐にわたり、魚、肉、野菜、卵などそれぞれ食材に対して、こだわりの農家や酪農家と契約するために交渉することもあります。

板前になるには

日本の伝統料理は、美味しさはもちろん、見た目の美しさや色彩、盛り付けなど細部まで丁寧に作り込みます。そのため、一人前の板前として認められるには、10年はかかると言われています。

学歴、職歴は重視されませんので、門戸は開かれています。しかし、誰でも挑戦できる分、現場の修業は厳しく、本物のプロになるには相当の努力と時間が必要です。

誰でも挑戦できるとはいえ、料理についてある程度の基礎知識がないと、そもそも修業ができません。調理の専門学校へ通い、調理の基礎について学び、調理師免許を取得することは必要です。そして、調理師免許があっても修行をしなければ、板前とは認めてもらえません。年齢制限はないものの、調理師免許の取得や修業のことを考えると、板前になりたい夢が決まっている人は早めに動くのがよいでしょう。高校卒業後に専門学校に通う人、専門の大学で学ぶ人もいます。調理師専門学校の場合、和食や日本料理のコースで食品、栄養、衛生など食関連の基礎知識のほか、実践も取り入れた指導を受けられます。厚生労働省が指定した調理師養成の専門学校の場合、卒業すると試験なしで調理師免許を取得できるので、学校を選ぶ際の基準として考えてみるといいでしょう。

どんなに有名な専門学校を卒業していても、最終的には厳しい修業に何年も耐え、諦めなかった人が板前として活躍できるので、学校を卒業した後が本当の勝負になります。

板前は資格が必要?

板前になるための特別な資格は必要ありませんが、最低限、調理師免許は必要です。また、和食の中でもフグを扱うお店の場合、ふぐ調理師免許があると有利です。

ただ、板前は資格よりも現場修業が重視される世界です。あらゆる和食に対応できるよう、下積みから大きく分けて5段階の修業があります。

①追い回し、下積み(1〜3年)

新人として、お店で修業をする際に「追い回し」という役割が与えられます。掃除、洗い物、器の準備、野菜の下処理、先輩職人たちのまかない料理を作るなど、表で提供される料理には触れさせてもらえない時期です。お店によっても多少異なりますが、開店前の準備、注文を受けてからの流れ、季節に合わせた食材の調達、スムーズに料理を提供するための厨房での段取りなどを見て、覚えていきます。刺身に添えて出す大根の向き方(桂むき)などの包丁捌きも学びます。
また、先輩のまかない料理を作るのも板前修行の一つです。メニューを考えて、短時間で美味しいものを調理する力を身につける練習です。まかない料理だからといって手を抜いていては、いつまで経っても、次のステップに進めません。先輩職人へのアピールの場所として、自分の技術をお披露目し、認めてもらえるように努力が必要な修業の一つです。

②先付け、八寸場(はっすんば)

出来上がった料理の盛り付けや切り分けを行う役割をになっています。1〜3年の修行後、ようやくお客さまに提供する料理に触れられるようになります。ただし、調理はできず、できた料理の盛り付け方法を学びます。和食は特に見た目の美しさが重要なので、板長や先輩の盛り付けを見ながら、真似をして習得していきます。

盛り付け以外にもスピードやタイミングを身につけなければなりません。盛り付けが丁寧で綺麗でも、お客様をお待たせできないので、食べるスピードを見ながら、ベストタイミングで料理が出せるように盛り付け時間を考えて行います。

③焼き場、揚げ場

ここへきて、ようやく調理に携われます。魚の焼き物や天ぷらなど、焼き物、揚げ物を担当します。日本料理の中でも比較的シンプルな技法ですが、焼く時間、揚げる時間などによって美味しさに大きく差が出るため、火加減や加熱時間などを工夫しなければなりません。手際よく、美味しい焼き加減、揚げ加減を身につける工程です。

④蒸し場、煮方

料理の味付けをチェックする役割を担います。食材の種類や数の入荷状況、献立内でのバランスによって、料理の内容が頻繁に変わります。急な変更にも対応できるような柔軟性や料理の種類、アイデアの豊富さが求められるポジションです。和食の味付けの基本である出汁作りも蒸し場、煮方ですべて行うため、非常に重要な役割となります。ここまでくると後輩もできており、若手の指導や育成にも携わることがあります。

⑤板場

最重要、花形と言われる持ち場です。魚をさばき、刺身にする調理場のトップです。魚だけでなく、お肉や魚、野菜も扱います。シンプルな料理ほど、切り方、焼き方、味付けの仕方など一つ一つの工程が味に大きく影響するため、技量が試される重要なポジションです。

小料理店や個人経営の割烹などの場合、板場がカウンター席の目の前になっていることもあります。調理の際の手元を見られたり、お客様から和食について質問がきたり、と裏方の厨房での作業とは大きく異なり、”人前での調理”を求められるので、料理の腕以外にも接客技術も身に付けなくてはなりません。

板前の就業先・勤務先

一人前になるまでは、料亭や日本料理店、ホテルに入っている日本料理店、旅館の調理場などに就職し、修業するのが一般的です。一流のホテルや旅館、有名な日本料理店では就職(修業)したい人も多いため、全国から板前志望者が集まってきます。一流の技術を学ぶには一流の人から学ぶのが一番近道、というわけです。大きくて有名なお店の場合、競争相手も多く、下積みが長くなる可能性も大いにあります。また、日々の調理で忙しくしている先輩たちの中で、技術を
丁寧に一から教えてもらうのは難しいかもしれません。「習うより慣れろ」で、自ら積極的に先輩の動きを学び、研鑽を積むような修業スタイルになるでしょう。

一方、小さい個人経営の割烹や日本料理のお店では、従業員が少ないため、下準備だけを担当する期間は短く、様々な工程の調理を指導してくれる可能性が高いです。人件費のこともあり、早く一人前に育てて、お店で調理をさせたいと考えるお店も少なくないからです。丁寧に一から指導を受けられる点では、大型店舗経営のお店より早く技術を習得できるかもしれません。

修業期間が終わると、板前として同じお店で働く人も多いです。数年〜数十年同じお店で働いて板長を目指す人もいれば、他のお店に移って、さらに技術を身に付け、最終的には独立して開業する人もいます。

まとめ

板前は日本の重要な伝統的な職業の一つです。また学歴も年齢も関係なく、誰でも目指せる点で夢のある仕事です。料理への愛情、根性、アイデアなどが必要で、決して簡単になれるわけではありませんが、最近では女性が板前として活躍している姿も目にします。料理やお客様への細やかな気配りができるという点で、小料理屋などを開業する場合は女性の板前の方がお店に入りやすいという評判もあるほどです。

板前は大変な点も多いですが、日本の伝統を継承し、数少ないプロとして活躍できる素晴らしい仕事の一つと言えるでしょう。

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