果物のブランドについて ブランド化の方法やメリットについて解説
目次
こだわりの果物を高く売る、果物生産で利益を上げるといった目的のために行われるのが、ブランド化。
果物のブランド化というと高級フルーツというイメージがあります。
しかし、一般的なスーパーに並ぶ果物でもブランド化して高価格で販売することが可能です。
果物のブランド化の種類やその方法、代表的な果物ブランドについてご紹介します。
果物のブランドについて 概要解説
果物のブランド化とは、味や香り、甘さなど、他と比べて秀でた特性を差別化し付加価値を加えることをいいます。
例えば「夕張メロン」は、ひとつ1万円以上という高額ですが、それでも食べたいという顧客をターゲットにした「売れる果物ブランド」として有名です。「夕張メロン」は普通のスーパーで売られているメロンとは味も香りも各段に違います。また、メロンに「夕張」と付けることで、他のメロンとの差別化を図っています。しかし、おいしいメロンができたからといって、勝手に「夕張メロン」と名乗ることはできません。
日本には「地理的表示(GI)保護制度」があります。地理的表示(GI)保護制度は、ブランド産品の価値を守り、証明するものです。国がブランド価値を認め、地域の財産として保護するために作られました。この制度に認証されると、GIマークを使うことが許可されます。GIマークがついた果物は、国がその味や品質、付加価値を保証してくれるというわけです。
GIマークが許可された産品は、「夕張メロン」の他に「越前がに」「神戸ビーフ」「いぶりがっこ」などがあります。地域的表示(GI)保護制度は、海外でも導入されており、フランスのシャンパーニュ地方で生産される「シャンパン」が有名。発泡性ワインは、シャンパーニュ地方で生産されたものでなければ「シャンパン」を名乗ることはできません。
このように、地域的表示(GI)保護制度には、古くから地域に根ざした生産物に付加価値をつけて、簡単に模倣品が出回るのを防ぐ役割があります。地域的保護制度がなければ、どんなものでも「シャンパン」として販売されてしまう事態が起きることもあるのです。
地域的表示(GI)保護制度があることで、生産者の努力や地域性に対する価値として、報酬に直結し本物の味を守り世に広める目的を果たしています。
日本のGIマーク登録は、農林水産大臣に申請することから始まります。農産物や食品の生産者団体が、生産地や品質の基準を満たした産品を農林水産省に申請。厳正な審査に合格した産品だけが認証されます。
そして、認証された産品のみがGIマークを付けることができ、不正が発覚した場合は罰則が科される場合もがあります。このように、認証を厳格化することで、価格競争に巻き込まれるリスクを回避できるという利点もあるでしょう。
果物をブランド化する方法を紹介
果物をブランド化するためには、他の商品との差別化から始めます。同じ果物でも地域や製法を生かし、突出して秀でた品質を提供できることが重要。一つの品種の中で格別においしいという条件を目指すだけでなく、いつでもおいしく食べられるという点も無視できません。
必ずしも高級品である必要はなく、「糖度が高い」といった基準を常にクリアするという方法もブランド化につながります。例えば、みかんのようなスーパーで気軽に買える果物でも、店頭に並んだ他のみかんよりも、甘くておいしいという信頼を生み出すことができれば、ブランド化は可能です。
次に、どんな客層を想定するのかを考えます。高級フルーツなら高所得者や贈答品としての販売方法を目指しましょう。一般消費者向けに販売する場合は、多くの人の手が届く価格帯でありながら、付加価値を上乗せできる価格を検討します。販売する対象のターゲットはできるだけ明確に絞るといいでしょう。高所得者、中間層、または低所得者層にターゲットを絞ることで、目標が明確になりブランド化達成に近づけます。
果物のブランド化は、より広く認知してもらうために、生産者の団体や地域の自治体などと協力して強力に推し進めるという努力も必要になってくるでしょう。例えば、宮崎県のマンゴーである「太陽のたまご」は、生産者団体と前宮崎県知事である東国原英夫さんが大々的にキャンペーンを行うことで全国的に認知されました。価値を共有し、地域と一体となることで果物のブランド化は成長していきます。
果物のブランド化で大切なのは、消費者との信頼関係です。「夕張メロン」のように有名でなくても、「〇〇農園のみかん」でもブランド化は可能。消費者は購入した果物が、いつ買ってもおいしいとわかれば、次も買いたくなり、人に勧めたりするでしょう。口コミで人気に火がついてブランド化した果物もあり、信頼を勝ち取った果物はブランド化に成功します。
個人の農家が果物のブランド化にチャレンジする場合は、地域性や産品が生まれるストーリー、農家のこだわりなどの情報を積極的に発信することで認知が拡大します。志を同じくする仲間の生産者と一緒にクラウドファンディングを立ち上げるといった方法も有効。「差別化」「信頼」「情報発信」の3つが、果物のブランド化のカギとなります。
農作物をブランド化するメリット・デメリットを解説
農産物のブランド化のメリット・デメリットについて解説いたします。
農作物をブランド化するメリットを紹介
農産物のブランド化には、以下のようなメリットがあります。
・付加価値が上がる
同じ果物でも、ブランド化した果物はその価値が評価されます。消費者が産品を選ぶときの判断基準として、「このブランドなら大丈夫」と安心し、信頼できると思ってもらえることは、ブランド化のメリットです。
・価格競争に巻き込まれない
同じ産品なら安い方が売れるといった価格競争に巻き込まれると利益が下がってしまいます。また、価格競争に一度巻き込まれると値上げが難しくなります。悪天候が続いたり、肥料が値上がりしても安さを求める消費者のニーズに合わせようと安売りを繰り返すことに。ブランド化が成功していれば、高価格でも買ってもらいやすくなります。生産のストーリーに共感を得られれば、値上げの理解も進むでしょう。
・努力に見合った報酬が受け取れる
価格競争に巻き込まれなければ、利益を確保しやすくなるでしょう。そのため、生産にかかるコストに見合った報酬を受け取れます。生産に対する費用削減の必要がなくなれば、新たな果物のブランド化を推進するといった好循環が生まれます。
農作物をブランド化するデメリットを紹介
農産物のブランド化には、以下のようなデメリットがあるのも事実です。
・品質担保が難しい
常に高水準の規格を求められるため、品質維持に苦労するかもしれません。基準に満たなければブランドのレッテルを貼って販売できないことも。品質を維持するために高額な設備が必要になるといったことも考えられます。
・悪い情報が拡散する
果物のをブランド化しても、おいしさに対して満足度が低い場合、悪い評判が広まってしまうでしょう。手間暇かけて生産しても「これはおいしくない」といった情報が拡散されてしまうリスクがあります。
人気のブランド果物を紹介
人気のブランド果物について3つご紹介します。
・あまおう
あまおうは、「赤い」「丸い」「大きい」「うまい」の頭文字からできたいちご。あまおうを販売できるのは福岡県の生産者だけです。12月から5月まで出回り、3月から4月が出荷のピーク。あまおうの名前には、「いちごの王様になれますように」との願いも込められています。
他のいちごと比べて赤い色味が強く、丸みを帯びた形をしています。味も濃いのでそのまま食べるのがおすすめ。色味を生かしたジャムにも向いています。また、ケーキなどのお菓子のトッピングにするととても豪華になります。8月に旬を迎え、10月ごろまで食べられますが、出荷のピークは9月です。
・二十世紀梨
鳥取県の特産である、二十世紀梨。千葉県松戸市で栽培されたのが始まりですが、同時期に栽培が開始した鳥取県から全国に広まり、人気品種に。品質の高さから1904年(明治37年)「二十世紀を代表する品種になりますように」との願いを込めて名づけられました。
ひとつ300gほどの重量感で、まるくふっくらとした果実です。初めは緑色で熟すと黄色に。酸味が少ない状態で食べる場合は、黄色くなってからがおすすめです。
・シャインマスカット
シャインマスカットは、「スチューベン」、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」、「カッタ・クルガン」、「甲斐路」の4品種のおいしいぶどうを祖先に持つ高級ぶどうです。広島県の農研機構で生まれました。生産地は、山梨県、長野県、山形県など。
名前の由来は諸説ありますが、輝く(Shine)ような光沢とムスク(musk)のように香り高いことを合わせて「シャインマスカット」と名付けたといわれています。ムスクとは、香水に使われる麝香(じゃこう)。「マスクメロン」のマスクと同義語で、マスカットという言葉もムスクに由来します。7月から出回り、12月までがシーズンです。
まとめ
本記事では、果物のブランド化について解説いたしました。
果物のブランド化は、品質や味を担保するために重要な役割があり、日本では地理的表示(GI)保護制度により、産品をブランド化しています。この制度は、生産者を守り、品質を保証することに寄与しています。
果物のブランド化は、模倣品のまん延を防ぎ、付加価値を上げられるメリットがあります。高級フルーツだけでなく、糖度を保証するといった販売方法でもブランド化は可能です。高齢化により生産者が減少する中、これからの果物生産の未来のためにも付加価値の高い産品の必要性が高まっていくでしょう。
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