野菜の値段が決まる仕組みを解説 野菜価格の高騰の原因も合わせて紹介
目次
ニュース番組で野菜の価格高騰に関するニュースを目にすることがあります。
2022年は、玉ねぎの大幅な値上げが話題となりました。
野菜の価格高騰の原因が、台風などの天候であることはよく知られています。
一方で、台風が野菜の生産に被害を与えてから、スーパーなどで売られる野菜の価格が上がるまでの実際の流れを、詳細に理解している方は多くないでしょう。
そこで、この記事では野菜の値段の決まり方や、野菜の値段を左右する要因について解説いたします。
野菜の値段はどうやって決まるのか解説
野菜の値段は、基本的に「中央卸売市場」で決められています。
小売店やスーパーの仲卸業者などは、中央卸売市場でせりなどにかけられた野菜を買います。
そして、中央卸売市場で買った野菜に販売費やお店の利益を加えた価格で、わたしたち消費者が野菜を購入するのです。
販売費とは、お店の光熱費や人件費、保管費など、その野菜を販売するために必要な費用のこと。
つまり、小売店やスーパーで売られている価格は、「中央卸売市場での価格」「小売店やスーパーの販売費」「小売店やスーパーの利益」の合計です。
この3種類のお金のうち、野菜の値段に最も影響を与えるのが「中央卸売市場での価格」です。
中央卸売市場とは 概要解説
中央卸売市場とは、卸売市場法(昭和46年法律第35号:改正平成18年3月31日法律第10号)に基づき地方公共団体が農林水産省の認可を受けて開設した卸売市場です。北海道から沖縄まで、日本全国40都市の64か所で開設されています。
中央卸売市場は、国内外の広い地域からの生鮮食品等の円滑な流通や公正な取引の確保を担う働きがあります。
生鮮食品等は水産物、青果物、食肉などわたしたちの生活に欠かせないものです。
しかし、生鮮食品等は鮮度が落ちやすいことから長期保存が困難であり、その時々の供給量(生産量)で商品の価格が変動するという性質があります。さらに、生鮮食品等の供給量(生産量)は、天候や世界情勢などにも大きく影響します。
供給量が減った(増えた)からといって、生鮮食品等の需要量も減る(増える)ということはあまりありません。
よって、供給量が大幅に減った(増えた)場合、需要と供給のバランスが大幅に崩れ、流通が滞ったり(過剰になったり)公正な取引が成り立たなくなる可能性があります。
これを防ぐのが中央卸売市場であり、以下の様々な役割を果たしています。
・集荷、分荷
全国各地から様々な食材を集め、販売先の需要に合わせて食材の分配迅速に行います。
・適正な価格形成
日々の取引結果を公表することにより適正な価格が決められ、公正な売買取引(せり、入札、相対)が行われています。
・速やかな代金決済
生産者等の収入安定のため、売買取引後の代金決済を速やかに行っています。
・正確な情報の受信・発信
販売に関する情報や生産に関する情報など、生産者と販売先に必要な、正確な情報を受発信しています。
・衛生管理
施設の衛生面での管理や食品衛生法に基づいた検査をしています。
また、中央卸売市場と似たものに「地方卸売市場」というものがあります。
地方卸売市場とは都道府県から開設の許可を受けた卸売市場で、地域の特産品を豊富に取り扱っていたり、朝と夕方にせりを行っていたりと地域の強みを活かした売買取引を行っています。地方卸売市場は全国に1,000か所以上あります。
中央卸売市場での取引方法を解説
中央卸売市場では、せり、入札、相対(あいたい)3つの方法により公正な取引を行っています。
それぞれについて以下に詳しく解説いたします。
「せり」の仕組み・流れを解説
せりとは、卸売業者(売り手)が仲介業者や売買参加者(買い手)に値段を競争させ、最も高い値段をつけた買い手に品物を売る方法です。簡単に言えばオークションのような形式の販売方法です。卸売市場でスタンダードな方法となります。
せりは日々の取引される品物の需要と供給の関係がはっきりしやすく、その場でせり落とした(購入者に決定した)買い手の氏名や商号、取引価格がわかることから、公平性の高い取引方法です。
せりは以下の流れで行われます。
- 卸売業者がせりにかける品物の産地、品種、生産者、数量などの情報を読み上げる
- 情報を聞いた買い手は手先表示(指や手の表裏で値段を示す方法)で値段を示す
- 最も高い金額を示した買い手がせり落とす。ただし最も高い金額を示した人が2名以上の場合は、抽選など公正な方法でせり落とし人を決定する
- せり落とし人が決定すると、せり落とされた価格と氏名または商号が読み上げられる
「入札」の流れ・仕組みを解説
入札とは仲介業者や売買参加者が紙に記入した品物の単価の中から、仲介業者が最も高い値段をつけた人に売る方法です。
せりと同様にオークションのような形式の販売方法です。また、その場で購入者と取引価格がわかることから、せりと同様に公平性の高い取引です。
入札は以下の流れで行われます。
- 卸売業者が品物についての情報を公開する
- 情報を入手した買い手は紙に品物の単価、数量、氏名または商号などの記入事項を書き卸売業者に渡す
- 卸売業者は紙を集め、最も高い値段を示した買い手を選び購入者が決定する
せりと異なる点は、買い手が価格を示すときに他の買い手が示す額がわからないこと、最初に示した額で競争にかけるため1発勝負になることです。
「相対」の流れ・仕組みを解説
卸売業者(売り手)と仲介業者や売買参加者(買い手)が、品物の単価と数量なのど購入条件について交渉したのち販売する方法です。せりや入札とは異なり、買い手が価格の競争をすることはありません。また、売り手も販売価格を決めずに買い手と交渉をします。
せりや入札は、日々の取引される品物の需要と供給の関係がはっきりしやすく公平性の高い取引方法ですが、価格が変動しやすく供給が安定しないことが欠点となります。
一方で、相対は、交渉で販売価格を決めることから、需給の影響を受けづらく価格変動を抑えることが可能です。
近年ではせりよりも相対取引の方がメジャーな取引になっています。
野菜の値段に影響する要因を解説
野菜の値段に影響する因子としてはおもに天候、需要、燃料費の3つがあります。
これらの因子がどのように野菜の価格に影響するのか、以下に解説いたします。
もっとも影響を与えやすい「天候」
野菜の価格にもっとも影響するのが天候です。
野菜の育成や収穫状況は天候によって左右されるためです。
野菜にとって条件の悪い天候が続くと、野菜の成長に遅れが出たり枯れたりします。
その結果、出荷できる野菜の収穫量が減り、野菜の価格は高騰します。
逆に、野菜にとって好条件の天候が続くと、予定よりも早く成長したり生育数が多くなります。
その結果、野菜の収穫量が増えますが、保存に向かない野菜は出荷するほかないため、野菜の価格は平年並みまたは下落するのです。
悪天候の場合、影響は数か月単位で続くこともしばしばあります。
そのため、消費者にとっても生産者にとっても苦しい状況が長く続くことも少なくありません。
「需要と供給のバランス」
需要と供給のバランスが崩れることが原因で、野菜の価格は大きく変動します。
供給量が天候と関係が深いことは前述したとおりです。野菜の生育に厳しい天候や雹害(ひょうがい)など、出荷できる形状の野菜が育たないと野菜の供給量は少なくなります。その結果、需要量の方が上回り、需要と供給のバランスが崩れ価格の高騰を引き起こすことが多いです。
逆に、天候が良く野菜が予定よりも多く育ち出荷量が増えると、野菜の供給量は増えます。その結果、供給量の方が上回り野菜価格の下落を引き起こすのです。
また、流行りの食材やテレビで紹介されて人気になった野菜なども一時的に需要量が増え、価格が高騰することがあります。
まとめ
野菜の価格を決めるのは基本的に中央卸売市場です。
中央卸売市場は円滑な流通を保ち、かつ公正な取引が行われるよう様々な役割を担っています。
せりなどで示される値段は野菜の需要・供給量に大きく左右されます。
特に供給量は天候に左右されるため、日々天気のチェックをして、野菜の価格変動をいち早く予期できれば、打てる対策も増えることでしょう。
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