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イスラム教徒の食事とは ハラルフードについての解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/07/28
更新日:2022/11/28
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目次

イスラム教徒はアラビア語で「神に帰依する者」という意味で「ムスリム」とも呼ばれます。ムスリムには六信五行という信仰箇条と義務があり、「シャリア」と呼ばれるイスラム法と、聖典「クルアーン(コーラン)」の教えを厳守しなければなりません。
食品に関する「ハラル」と「ハラム」も遵守すべき規律のひとつです。日本におけるムスリムの人口は推計約23万人。ムスリム圏の観光客も増加傾向にあり、日本国内の飲食店もムスリムの人々が安心して食べられる「ハラル」の認証が求められています。
そこでこの記事ではイスラム教徒の食事について「ハラル」を中心にくわしく解説いたします。

イスラム教徒の食事とは

イスラム教徒の食に関わる規律は「ハラル」「ハラム」「シュブハ」という3つの区分であらわされます。「ハラル」はアラビア語で「イスラム法において許されたもの」を意味する言葉で、食だけでなくムスリムの日々の生活すべてに当てはまる規律があります。
一方、「ハラム」は「イスラム法で禁止されたもの」のこと。食に関しては「食べてはいけない食品」を意味します。「シュブハ」は判定できない食品のこと。「ハラム」には製造工程の規定もあるため、最終製品が「ハラム」かどうかは容易に判断できません。
そこでシャリア(イスラム法)に従った処理が行われたかどうかわからない食肉や加工食品を「シュブハ(疑わしいもの)」と呼び、飲食をできるだけ避けるように推奨しています。

ハラルフードとは

ハラルフードとはイスラム教の聖典クルアーンの中でムスリムが食べてよいと認められた食品のこと。ハラルに関する規定は非常に細かく、牛やヒツジ、鶏 などの家畜は神の名のもとに祈りを捧げて屠殺して血抜きをしなければなりません。
さらに屠殺後の食肉加工から保管、流通、調理にいたる全ての工程でイスラム法が定める細かい規定をクリアしなければハラルとは認められません。しかし一般の信者が最終製品を見てハラルフードかどうかを判別するのは困難です。
そこでイスラム教の公認団体や各国の認証機関が食品の製造工程を検査してハラル認証を発行しています。その意味でハラルフードとは「ムスリムが飲食可能なことを示すハラル認証を受けた食品のこと」ともいえるでしょう。
ハラルの規定や認定基準は国や宗派で異なるため、日本でハラル認証を取得する場合はターゲットとする国や宗派の基準をクリアすることが重要です。

禁じられているもの(ハラム)

ハラルとは逆にムスリムが口にすることを禁じられている食品がハラムです。「ハラム」もともとはイスラム法(シャリア)で禁じられた行為のこと。不信仰をはじめ殺人、窃盗などともに飲酒や豚肉を食べることなど食に関わる禁止事項も定められています。
ここではムスリムが食べることを禁じられている5品目のハラムについて解説していきます。

豚肉

豚肉は非ムスリムの人々にもよく知られたハラルです。豚は不潔な環境で生育するため、ムスリムは不浄なものとして忌避します。一説には豚肉には寄生虫が多いため食べることを禁じたという説も。ただしシャリアには豚肉を忌避する理由は明記されていません。
ハラムの規定は非常に厳格で、豚の肉だけでなくエキスや脂(ラード)なども使用禁止です。たとえ食材がハラルでも調理や味付けに豚骨スープやラードを使うとハラルではなくなります。豚肉に触れた調理器具もハラルの調理に使うことはできません。

アルコール

アルコールも代表的なハラルのひとつ。イスラムの聖典「クルアーン(コーラン)」には葡萄酒を飲むことを「シャイタン(悪魔)の業」として避けるように記されています。アルコールが禁止されたのは泥酔による不始末や健康被害を避けるためだとされています。
ただしムスリムが多数を占める国でもアルコールの摂取や使用、製造などを認めていることも少なくありません。たとえばトルコは国民の大多数がムスリムですが、酒類の製造や消費は盛んに行われています。ただし豚はトルコを含めて口にしない国がほとんどです。

イスラム法に則って処理されていない食肉

イスラム法では豚以外に犬を食べることも禁じています。ほかの家畜でも法に従って処理しなければなりません。具体的には屠殺する際にアラーの名を唱えること。血抜きをすること。加工時にハラルではない成分を加えないこと、などの規定があります。

一部の魚介類、生魚

魚や貝など水中に生息する生物は基本的にすべてハラルとされています。ただし有毒なものや、中毒を起こす作用があるもの。健康に悪影響を及ぼすものをのぞきます。また蛙などの両生類や亀、ワニのように水と陸の両方で生息できる動物はハラムとなります。

血液

屠殺する際に流れ出る血液は口にしてはいけないハラムです。動物の血液は病原菌や寄生虫を含む場合が多いため、食肉として加工する際に血抜きをすることで菌の繁殖を防ぎ鮮度を保つ効果もあります。

ハラルフードは身体に優しい健康料理

近年、ハラルフードが身体に優しい健康料理としてSNSなどで注目の的となっています。「ハラルは公的な認証機関が素材や製法、成分まできびしくチェックしているから安心」という意見もあれば「法に従って製造されているから安全」ともいわれています。
しかしながらハラル認証やイスラム法は「身体に優しい健康料理」を保証するものではありません。ハラルの認証機関がチェックするのは素材や原料にアルコールや豚などのハラムが含まれていないかどうか。健康志向とは関係ないことを理解する必要があります。
一方で、ヴィーガンやマクロビオティックなどの自然食はハラルフードの条件に合致します。また日本人の食生活に欠かせない水産物や海産物もハラルフードです。つまりハラルだから「健康的」なのではなく健康料理はハラルとの共通点が多いといえるでしょう。

イスラム教徒の食事を提供する店(ハラル認証)

観光施策におけるインバウンド対応として、日本でもイスラム教徒向けの食事を提供するためにハラルの認証を取得する飲食店が増加しています。イスラム系の料理店のみならず寿司屋やラーメン店、焼き肉店などがハラル認証を取得することも少なくありません。
日本の飲食店がハラル認証を受けるには、麺やしょう油、だしなどの素材や調味料をすべてハラルに統一しなければなりません。従業員も一定数のムスリムを雇用しなけばなりません。酒も基本的に出せませんので、日本人向けの宴会やパーティーもできなくなります。
そこで認証機関によっては「ムスリムフレンドリー」や「ローカルハラル」といった部分認証制度を設けて、既存のメニューにハラル料理を加えることを可能にしています。
「ムスリムフレンドリー」や「ローカルハラル」では、製造や調理の過程でハラルとハラムが混合しない仕組みを確立することで、ムスリムの旅行者も安心して食事を楽しめるハラルメニューの認証を与えています。

まとめ

イスラム教徒は戒律によって飲食可能な「ハラル」と飲食できない「ハラム」が決められています。「ハラル」と「ハラム」の規定は非常に細かく厳格で、たとえば豚は「ハラム」として肉を食べることはもちろん、ラードすらも禁止です。
「ハラル」は生産加工の全工程で法に従った処理が求められており、基準を満たせば専門の認定機関によってハラル認証が発行されます。日本でも近年、ハラル認証を取得する飲食店が増加しており、「ムスリムフレンドリー」のような部分認証制度も導入されています。

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