SDGsと「食」の関わりを解説 日常生活の中でできるSDGs対策も合わせて紹介
目次
世界はこれまで、環境や経済、人種問題など様々な問題に直面してきました。
これらの問題は根深く、世界の人々の貧困問題へとつながり、彼らの「食」へと大きく影響し続けています。
問題が長引くほど世界の格差は広がっていき、「食」への問題もますます大きくなっていくことが予想されます。
そこで2015年に掲げられたのが「SDGs」です。
「SDGs」は「食」を含むあらゆる問題を解決し世界中の人々が豊かな生活を送れるようにすることを目的としています。
本記事では、「SDGs」と「食」にどのような関わりがあるのか解説いたします。
SDGsとは 概要をご紹介
SDGsとは日本語で「持続可能な開発目標」と訳されます。
「Sustainable Development Goals」の単語の頭文字をとった略称です。
2015年9月に開催された国連サミットにて、150か国以上を超える国により掲げられた国際的な目標です。
2030年までの15年間で達成することを目標としています。
SDGsは17のゴールと169のターゲットから構成され、「誰一人取り残さない」ことを誓っているものです。
17のゴールには貧困や飢餓、教育といった発展途上国の生活との関係が根深い問題から、産業や技術、生態系の維持といった先進国も深く関係する問題への目標が幅広く掲げられています。
日本でも個々人の生活に対して取り組むことはもちろんのこと、民間企業に対してもビジネスを通してSDGsに取り組むよう呼びかけています。
SDGsと食の関係について解説
SDGsと食には深い関わりがあります。
SDGsの17のゴールのうち、特に深い関わりのある項目として以下があげられます。
- 1. 貧困をなくそう
- 2. 飢餓をゼロに
- 3. すべてのひとに健康と福祉を
- 12. つくる責任 つかう責任
- 14. 海の豊かさを守ろう
- 15. 陸の豊かさも守ろう
次章からは、それぞれの項目について、食とどのような関わりがあるか考えていきます。
「1. 貧困をなくそう」と「食」
貧困は人々から食の豊かさを奪う原因の一つとなります。
食の豊かさは人々の健康につながるため、貧困を減らすことがより良い食生活へとつながります。
世界で極度の貧困に直面する人々のうち、8割が農村部で暮らしており、彼らの生計手段と食料の確保は農業に依存しているのが現状です。
自然に左右される農業の生産性を安定させること、農業以外の仕事(鉱業や木材加工、観光など)を提供することで雇用を生み出し生計を安定させることで食と生活の安定へと繋がります。
「2. 飢餓をゼロに」と「食」
「1.貧困をなくそう」と共通する部分が多い項目です。
貧困により食の豊かさを奪われた人々は栄養失調が続き、やがて飢餓に陥る可能性が高くなります。
飢餓をゼロにするために、栄養価が高くバランスの良い食事、すなわち食の豊かさは必要不可欠です。
「3. すべてのひとに健康と福祉を」と「食」
食生活は健康な生活を送るうえで必要不可欠な存在です。
「1.貧困をなくそう」「2.飢餓をゼロに」の項目と繋がりがあります。
すべての人が健康な生活を送るためには食の豊かさが必要であり、栄養価の高い食事をとらなければいけません。
食の豊かさは人々の病気の予防、十分な教育、安定した職業など生産的な生活への土台となります。
「12. つくる責任 つかう責任」と「食」
食品業界において「つくる責任」、食品を消費する側において「つかう責任」は重要項目です。
このゴールが掲げられた背景の一つに、生産された食料の3分の1が捨てられている現状があげられます。
企業は生産量や販売量を調整すること、消費者は食べられる分を計画的に購入することで「つくる責任 つかう責任」の達成に近づくことができます。
「14. 海の豊かさを守ろう」と「食」
「海の豊かさ」は貧困に苦しむ人々にとって食の安定へと繋がり、先進国などでは過剰な水産物の捕獲による食料廃棄を防ぐことができます。
過剰な水産物の捕獲を防ぐことは海の生態系を守ることにも繋がり、結果的に貧困に苦しむ人々への海産物の安定的な供給が実現します。
「15. 陸の豊かさも守ろう」と「食」
森林伐採や動物の乱獲などにより「陸の豊かさ」が失われることで生態系は脅かされ、生物多様性が失われていきます。
生物の多様性が失われると、食用の動物の供給が難しくなり食の豊かさが脅かされ貧困や飢餓につながる可能性があるのです。
また、森林は自然のダムと呼ばれています。
森林伐採により森林が減ることで、自然の貯水機能の低下や大雨による洪水による農作物や民家への被害が拡大し、その結果水不足や食の安定、生計の安定を脅かす可能性があるのです。
SDGsと食生活の現状について考える
飢餓に苦しむ人が世界で8億1,100万人以上(2020年度調査)いる一方で、生産された食料の3分の1が捨てられているのが世界におけるSDGsと食生活の現状です。
また、国連の発表によると、2022年11月には世界の人口は80億人に到達し、2037年には90億人に到達すると予想されています。
しかし、地球の資源や土地は限られています。
人口が増加することにより、今以上に限られた水や土地でより多くの人をまかなっていくこととなり、これまで以上に貧困や飢餓で苦しむ人が増える可能性があるのです。
少ない資源で人々が安定した生活を送るためには、食料廃棄などを減らし資源を大切にする必要があります。
一方、日本におけるSDGsと食生活の現状として、食料自給率の低さと食料廃棄量の多さがあげられます。
農林水産省の報告によると、2019年度の日本の食料自給率は38%でした。(カロリーベース)
食料自給率が低い食品として、牛肉(35%)、小麦(16%)、大豆(6%)、油脂類(13%)があげられます。※参考1
日本の食料の6割以上を輸入に頼っているため「フードマイレージ」がとても高い国です。
フードマイレージとは食料の量×輸送距離で求められる指標のことで、主に食料の輸送による環境負荷の指標とされています。
つまりフードマイレージが高いということは食料を調達するまでの環境負荷が大きいということです。
これらの背景も踏まえ、日本は2030年度までに食料自給率を45%まで引き上げることを目指しています。※参考2
また、消費者庁の報告によると年間約522万トン(令和2年度)もの食料が日本で廃棄されており、これも日本におけるSDGsと食生活の現状です。※参考3
そして、これは世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。
また、日本人一人当たり、お茶碗1杯分のご飯を毎日捨てていることと同じ量です。
食料廃棄には食料が無駄になることはもちろんのこと、廃棄物の運搬や償却にかかる燃料も必要となるため、あらゆる面で資源の無駄遣いとなります。
※参考1:その1:食料自給率って何?日本はどのくらい?:農林水産省 (maff.go.jp)
※参考2:サステナブルで健康な食生活の提案:環境省
※参考3:「食品ロス量(令和2年度推計値)の公表」について | 消費者庁 (caa.go.jp)
SDGsのためにできることは何がある?
わたしたちが日常生活でSDGsのためにできることはたくさんあります。
日常の場面別で、SDGsのために私たちができることを以下にご紹介いたします。
買い物の際にできるSDGs対策
食料の買い物をするときにできることには以下があります。
・「地産地消」を意識して食材を買う
地産地消により食料自給率が上がることでフードマイレージを低くすることができます。
フードマイレージが下がるということは、食料の輸送にかかる環境負荷が下がるため地球にやさしい食生活を実現することが可能です。
・食料は必要な分だけ購入することを意識する
スーパーで安売りしている商品を見ると、つい余計に買ってしまうときがあります。
そして、買ったことを忘れ、賞味期限が切れたころに思い出して捨ててしまう経験をされた方も多いでしょう。
また、ストックがあることを忘れ同じものを買い、余って捨てるということもあります。
これらを防ぐために買い物前に冷蔵庫などに残っている食材を把握しておきましょう。
食料廃棄を減らすことは環境負荷を軽減することに繋がります。
調理の際にできるSDGs対策
食料を調理するときにできることには以下があります。
・野菜の可食部を捨てない
食感や味への影響から野菜の皮や芯は捨てられることが多いです。
しかし、調理方法を工夫することにより廃棄する部分を減らすことが可能になります。
それだけでなく、野菜の皮などは可食部とされる部分よりも栄養価が高いことが多いため、環境負荷の面だけでなく健康面でも調理方法を工夫することが大切です。
まとめ
SDGsと食生活との間には深い関わりがあります。
世界では貧困や飢餓などの問題、日本では食料自給率や食料廃棄の問題があげられているのが現状です。
SDGsを達成するためにわたしたちができることとして、地産地消や食料の買いすぎを防ぐこと、料理の仕方を工夫することなどがあげられます。
ひとりひとりができることから少しずつ取り組んでいくことで、SDGsの達成に貢献できるでしょう。
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