検便前に食べてはいけないものとは 食中毒の種類も合わせて解説
目次
飲食店や施設で働く人にとって、検便検査は、「食中毒を予防して安全な営業をするため」の大切な検査です。
定期的に検便がある場合、「検便の前に食べてはいけないもの」について、気になることもあるでしょう。
記事を通して、検便前の食事で気を付けることを詳しく知ることができます。
検便前の食事について
「検便前に食べたもので、検査結果が左右されるのか」と疑問に思うことは誰にでもあるでしょう。
しかし、検便結果で確認するのは「バランス良く食事をしているか」ではなく「食中毒などの病気の原因になる、菌やウイルスが含まれていないか」です。
基本的には通常通りの食事が可能
鮮度が不安なものは避ける
検便前に食べてはいけないものは、特にないので、普段通りの食事で良いです。食べたもの自体が、検査結果に大きな影響を及ぼすことはありません。ただし、鮮度が不安なものを食べるのは、なるべく控えましょう。鮮度が低いものほど、食中毒の菌が付いているリスクが高まります。菌が付いた食品を食べると、検便結果で菌が見つかる可能性があります。
十分な加熱や衛生管理などによって菌の付着を予防することもできますが、最初から鮮度の低いものを避ける心掛けも大切です。飲食店従事者が、検便で細菌やウイルスの陽性結果が出た場合、既に店内でも食中毒の危険性があるということです。陽性者は速やかに医療機関の受診をすることや職場から離れることが求められ、お店の営業にも悪影響が出てしまいます。実際に、今までも飲食店などでの食中毒事件はたくさん起こっており、営業停止命令が下されてきました。食中毒には年中通して注意する必要があります。「自分の腸内に菌を入れない」といった一人ひとりの心掛けが、食中毒を予防することにも繋がるのです。細菌やウイルスは、決して私たちの肉眼で確認できるものではありません。気付かないうちに体内に取り込んでしまう可能性は大いにあります。食中毒の恐ろしい点は、症状が現れない「不顕性感染」と呼ばれるケースも存在することです。
特に自覚する症状がないまま、不顕性感染者が調理に携わっていると、手から食品に菌やウイルスを付着させてしまい、集団食中毒を招く可能性もあるのです。検便は、飲食店や施設の安全な営業を続けるうえで、非常に重要な役割を果たしています。
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心配な場合は検査項目の確認をする
一口に検便と言っても、検査項目は複数の種類があります。
以下が一般的な例になります。
【腸内細菌検査】
- 3項目検査(赤痢菌・サルモネラ属菌・O157)
- 5項目検査(赤痢菌・サルモネラ属菌・O157・O26・O111)
- 7項目検査(赤痢菌・サルモネラ・チフス菌・パラチフス菌・O157・O26・O111)
【ウイルス検査】
- ノロウイルス検査
どの検査も、「食中毒の原因となる可能性のある菌やウイルスが便中に存在していないか」を調べるのが目的です。腸内細菌は主に暑い時期に繁殖しやすいため、夏の食中毒は細菌性の食中毒が増加傾向となります。一方、ノロウイルスは低温で乾燥した環境を好むため、冬場にノロウイルスが原因の食中毒が増えることとなります。
検査の目的によりNGのものもある
ノロウイルス検査が検査目的になっている検便の前は、二枚貝を食べないようにしましょう。
ノロウイルスは、主に二枚貝(牡蠣、アサリ、シジミなど)に付着していることがあります。中でも、特に危険性が高いのは生牡蠣ですが、十分に加熱できていなかった二枚貝を食べた場合も、ノロウイルスが付いていることがあるので要注意です。ノロウイルスは、感染力が非常に強いウイルスです。少量のノロウイルスが腸内に入っただけでも、感染してしまいます。1~2日の潜伏期間を経た後は、嘔吐下痢・発熱・腹痛などの症状が現れるのが一般的です。しかし、不顕性感染者の場合は症状が出ないので、二次感染リスクをさらに高めます。ノロウイルスは循環しています。人の体内に入って増殖したノロウイルスは、便や嘔吐物などの排泄物に含まれて体中から排出されます。下水処理場を通ったノロウイルスは、下水道などを経て、最終的に海中に流れ込みます。
二枚貝は海中のプランクトンを餌としているため、大量の海水を体内に取り込みますが、ノロウイルスも同時に取り込むことがあるのです。ノロウイルスが蓄積した二枚貝を人間が食べると、感染してしまい、また、排泄物にノロウイルスが含まれることになります。
ノロウイルスの主な感染経路は、以下になります。
- ノロウイルスが付着した食物を食べた場合の「経口感染」
- ノロウイルスが付着した食品や嘔吐物に触れた手による「接触感染」
- ノロウイルスが含まれる嘔吐物からの飛沫を吸い込んだ場合の「空気感染」
まずは経口感染を防ぐことが、接触感染や空気感染を予防することにも繋がるでしょう。
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薬の服用は要確認
抗生物質の服用は、細菌の検便結果に影響を及ぼすことがあるので、最終服用時から48時間以上空けての採便が推奨されます。抗生物質を処方されているときに検便があるときは、注意しておきましょう。抗生物質とは、「細菌が原因である感染症」に効果のある薬です。しかし、殺菌力が強いため、時にはかえって人間にとって必要な菌まで排除してしまうこともあります。一方、抗生物質以外の薬やサプリなどは、検便結果に特に影響がありません。便秘が原因で、検便用の採便ができない場合は、便秘薬を使うことも可能です。
消化の良い食物例
検便前の食事制限はありませんが、消化の良いものについても紹介します。消化の良い食物は、胃に留まる時間が短くスムーズに消化が進むので、身体に優しいと言えるでしょう。
脂肪分の少ない肉類
低脂質高たんぱくな「鶏のささみ」や「鶏胸肉」など脂肪の少ない肉類は、肉のなかでも消化に良い部位です。豚肉の場合は「豚もも肉」や「豚ひれ肉」も比較的脂肪の少ない部位になります。しかし、大量の油を使って揚げ物などにした場合は、結局のところ、消化に悪くなってしまいます。脂肪分の少ない肉類を消化に良い状態で食べるには、蒸し料理や煮込み料理が最適です。
ヨーグルト など
ヨーグルトなどの発酵食品も、消化に良い優れた食物です。発酵食品の大きな特徴は、製造された段階で、既に微生物の働きによって消化が進んでいる状態になっていることです。
したがって、消化系に入ってからもエネルギーや酵素を多く使うことなく、スムーズに消化が進みます。発酵食品は、乳酸菌や麹菌、納豆菌、酵母菌、酢酸菌などの身体に良い菌が多量に含まれているので腸内環境改善にも役立ちます。また、消化に良いだけではなく、免疫力を上げる効果もあるので、積極的に摂るのが望ましい食品です。
消化の悪い食物例
消化の悪い食物は、食物繊維と脂肪を多く含むものです。
海藻類
海藻類は食物繊維のため、消化の悪い食べ物です。
消化されないまま、排泄されてしまう場合もあります。
便秘予防対策には役に立つ食物繊維ですが、胃に負担を掛けてしまうことは覚えておきましょう。
また、摂りすぎると下痢やお腹の張りを引き起こすので、量には十分な注意が必要です。
脂肪分の多い肉類 など
動物性の脂肪も、消化に時間を要します。あまりにも胃の中に留まっている時間が長い場合は、胃もたれを起こすこともあります。
多量摂取した場合は、消化が追い付かないまま腸まで移動してしまい、下痢になる場合も見られます。
脂肪分の摂取を減らすために、以下のような工夫をすることができます。
- 霜降り肉などは脂肪分が多いことを理解し、食べる量を少量にしておく
- 脂肪分が多い肉の場合、なるべく脂肪部分を除去してから食べる
- 予め脂肪分の少ない部位の肉を選ぶ
- ベーコンやソーセージなど脂肪分が多く含まれる加工肉を食べない
- 脂肪分の多い青魚(サンマ・サバ・イワシなど)や赤魚(マグロ・カツオなど)を食べない
- 淡白な白身魚(タラ・タイ・カレイなど)を食べる
消化の悪い食物を食べてしまうと、消化が順調に進まず、検便前に採便しづらくなる可能性もあります。
検便前に食べてはいけないものは基本的にありませんが、普段から消化の良いものを摂るのに越したことはありません。
まとめ
検便前は、気を遣ってしまうこともありますが、普段通り食事をして臨みましょう。
ただし、菌やウイルスを体内に入れない心掛けは、検便結果のためだけでなく、自身の健康のためにも重要です。
菌やウイルスが体内に入った場合、身体に症状が現れた場合は自覚できますが、症状が表に出ない不顕性の状態になっている場合は、最も恐ろしいです。誰も気付かないまま食中毒が広がっていくことは、あってはなりません。
検便は、私たちの目に見えない有害な菌やウイルスを見つけ出し、食中毒のリスクを早期発見する役割を果たしています。
飲食店・施設の従業員一人ひとりが「業務」の一環として検便に協力することで、飲食店施設の安全な営業を続けていくことができます。