食中毒発生の際の損害賠償について 飲食店向け補償や食中毒対策についても解説
目次
飲食店を経営するうえで、食中毒の予防は非常に重要です。
食中毒は、徹底した衛生管理などによりリスクを下げることは可能ですが、どの飲食店においても「発生リスクがゼロである」といいきることは難しいでしょう。そのため、万が一自店において食中毒が発生した場合に備えておくことが必要です。
この記事では食中毒の基本情報、飲食店で食中毒が発生したときの対応の流れについて解説いたします。
本記事を通して、食中毒の損害賠償などについて詳しく知ることができます。
食中毒が発生した場合の損害賠償はどうなる?
飲食店で提供されたメニューが原因で食中毒になった場合、損害を受けたお客様は、飲食店に損害賠償を請求することができます。
損害賠償に含まれる対象として、医療費や通院費、慰謝料、休業補償(食中毒が原因で仕事を休んだ場合)、逸失利益(食中毒にならなければ本来得られていた収入)などが該当します。
そもそも「食中毒」とは?
食中毒は、飲食物を摂ったことによって起こる健康被害の総称です。
食中毒のおもな原因は、細菌とウイルスです。
夏の時期は、細菌が増殖しやすい暑い環境であるため、細菌性の食中毒の発生率が高くなります。
冬の時期は、低温・乾燥の環境下を好むウイルスによる食中毒が多くなります。
細菌・ウイルス以外による食中毒の例は、キノコなどに含まれている毒を摂取したことによって起こる自然毒食中毒や、アニサキスという寄生虫による寄生虫食中毒などです。
食中毒の症状としては、腹痛・下痢・吐き気・嘔吐が見られ発熱を伴うこともあり、大きな苦痛を味わうこととなります。
症状の重さは一概ではありませんが、最悪の場合は死に至る危険な病気です。
食中毒が発生した際の店舗への影響を解説
食中毒が発生した場合、損害を受けたお客様には損害賠償金を支払わなければいけません。
損害賠償は、お客様へ及ぼした影響の大きさによって金額が決まります。
食中毒発生が認められた飲食店には、保健所による介入が始まり、その際は保健所の指示に従うことが必要です。
保健所は、地域の住民の健康・衛生を守るための公的な機関です。
飲食店の過失の度合いによって、行政指導(口頭指導・書面指導)・行政処分のうち、いずれかを受けることとなります。
口頭指導の場合は、食中毒の原因となった可能性のある設備や調理法について調査が入り、飲食店に対して自主的な改善や営業の自粛が求められます。
口頭指導による改善が見られない場合は、書面指導となります。したがって、書面指導を受けないように口頭指導の段階での改善が重要です。
書面指導を受けた場合のデメリットは大きく、食中毒を起こした飲食店として店名や食中毒発生に至った状況、指導内容が自治体のHPにて公開されることとなります。
さらに食中毒発生における過失の度合いが重い場合は、行政処分を受けることになります。
具体的な処分の種類は、営業停止・営業禁止・営業許可取り消しなどです。
営業停止は、定められた期間のみ営業ができない処分ですが、営業禁止の場合は無期限で営業を禁止されます。
改善の見込みがないと判断された場合は、営業許可取り消しとなり営業自体ができなくなってしまうこともあります。
インターネット上で、食中毒を発生させた店として名が広まってしまうと、大きな評判低下になってしまうことは間違いありません。食中毒被害の規模が大きい場合はニュースにも取り上げられることもあります。
「生産物賠償責任の補償」について解説
他者に対して何らかの損害を与えてしまった場合に補償をしてもらうための保険として、「生産物賠償責任の補償」があります。
例えば、飲食店側が提供した料理をお客様が食べたことで食中毒になってしまった場合や料理への異物混入によりお客様が被害を受けた場合にも生産物賠償責任の補償が適用されます。
生産物賠償責任の保険への加入は、先々の経営のためにも重要です。
補償内容は、以下のようなものです。
- 損害を被ったお客様への迷惑料、通院費などの損害賠償金
- 損害の再発防止対策に掛かった費用
- 裁判に発展した場合の裁判に掛かる費用
「生産物賠償責任の保険」注意するポイント
生産物賠償責任の保険は、いざトラブルが起きた時に補償をしてもらえる保険であることを上述しましたが、補償の対象にならないケースがあることにも注意しておきましょう。
補償のケースにならないのは、故意による過失・重大な過失です。
例としては、食材が傷んでいることを把握していながらも料理に使い提供し、食中毒が発生したケースなどが該当します。
さらに注意しておきたい点は、補償の対象となるケースでも全ての金額を補償してもらえるとは限らないことです。そのため、自己負担で賄う金額が発生する場合もあります。
そのほかの補償を紹介
食中毒の発生により、営業が不可能になった期間の補償として、「食中毒見舞金」という保険もあります。
営業不可能な期間の収入の埋め合わせや、営業再開に向けての準備金に充てる用途で使われるのが一般的です。
生産物賠償責任・食中毒見舞金は、飲食店経営者にとって加入が必須である保険といえるでしょう。
食中毒を未然に防ぐための対策を紹介
食中毒が発生した場合の実際の流れについて解説してきましたが、食中毒の発生リスクを抑えるために日常的にできることもあります。
食中毒予防において、重要な3原則は「菌を付けない」「菌を増やさない」「菌を殺す」です。
以下に、それぞれの対策について詳しく解説いたします。
「菌を付けない」予防策
- 調理をする前には手をよく洗い、なるべく食材には直接触れず使い捨て手袋や箸を使う
- 調理中も、魚や肉・卵などに触れた後は、手をよく洗ってから次の調理に移る
- 魚や肉を切るのに使った包丁やまな板には菌が付いている可能性があるので、使うたびに洗剤でよく洗う
「菌を増やさない」予防策
- 食品は調理する直前まで冷蔵庫で低温保管し、冷蔵庫から出した後はすぐに調理する
- 冷蔵庫の温度を下げないように、食品は詰め込みすぎない程度に入れる
- 冷蔵庫のドアを開ける時間を短時間にする
- できあがった料理を放置する時間をつくらず、速やかに提供する
「菌を殺す」対策
- 生焼けや半熟状態での提供にならないように、十分加熱して菌を殺す
- 調理が終わった後は、調理器具を塩素剤や熱湯を使って確実に消毒する
以上の対策を徹底し、食中毒の発生を予防することは、飲食店の円滑な経営にとって大変重要なことです。
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まとめ
食中毒の発生により、飲食店・お客様はともに甚大な影響を被ることになります。
つい他人事のように考えてしまいがちですが、食中毒発生時の損害賠償や保健所による指導などについて一通り把握しておくことは大切です。
保険については、安心のための必要経費として、確実に加入しておくことが望ましいです。
食中毒を発生させないための予防策と万が一の場合に備えての対策を両輪とし、飲食店の経営を守ることが重要でしょう。
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