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熟成肉とは 熟成のしくみや熟成方法をおすすめの食べ方と合わせて解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/09/04
更新日:2022/12/13

目次

数年前から大きなブームとなった「熟成肉」。

熟成肉と聞くと普通の肉よりも美味しそうと感じますが、熟成肉が美味しいといわれるのはなぜでしょうか。


この記事では、熟成肉と普通の肉との違いや、熟成肉の旨味の理由を解説し、熟成の方法、熟成肉の美味しい食べ方を紹介いたします。 

熟成肉と普通の肉との違いについて解説

熟成肉とは、一定期間低温で貯蔵して熟成させることで、旨味が強く、肉質は柔らかい、美味しい状態となった肉のことです。

 

熟成の方法は複数ありますが、いずれも温度や湿度、衛生状態などが適切に管理された環境のもと、数週間保存して熟成させます。熟成させることで、普通の肉よりも柔らかくなり、うま味のもとであるアミノ酸含有量が増え、美味しいと感じるようになります。

 

現在は、熟成肉に明確な基準はなく、数日冷蔵庫で寝かせた肉から、数か月整った環境で管理した肉まで、同じ「熟成肉」と称され提供されています。 

熟成肉の旨味の理由を解説

食肉はと畜後、死後硬直が始まりますが、適切な衛生状態や環境の中で一定期間肉を保存すると、時間の経過とともに死後硬直が解除され、肉自身のタンパク質分解酵素の働きにより、タンパク質がアミノ酸に分解されます。この過程により、筋肉のタンパク質が分解されて肉質が柔らかくなり、分解されたアミノ酸が増加することで旨味が強くなります。また、熟成により乾燥して水分が抜けることで、旨味がさらに凝縮されるのです。  


旨味の呈味成分はグルタミン酸、アスパラギン酸、イノシン酸、グアニル酸など数種類あります。グルタミン酸やアスパラギン酸はアミノ酸の一種で、イノシン酸、グアニル酸は核酸の一種です。熟成の場合、旨味のもととなっている成分はグルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸になります。 

 

「肉は腐りかけが旨い」などといわれることもありますが、熟成と腐敗は別物です。

一方で、熟成と腐敗は隣り合わせで、熟成の過程において適切な管理がされていないとあっという間に腐敗が進んでしまいます。熟成した食品は美味しく食べることができますが、腐敗した食品は食べることができず、食べてしまうと人体に悪影響を及ぼします。


熟成と腐敗の分かれ道は、微生物や菌の影響を受けて、有害な変化をもたらすかどうかです。熟成は「自らの酵素の働きでタンパク質を変化させること」であるのに対し、腐敗は「微生物や菌の働きでタンパク質を人体に有害な影響を与える状態に変化すること」という科学的な違いがあります。


しかし、熟成に微生物がまったく関与していないというわけではなく、事実、害のない微生物や菌が付着し、熟成を促しているのです。そのため、熟成肉を作るには設備や技術が必要になります。一般家庭の冷蔵庫で作ることは難しいため、専門の飲食店で食べるか購入することが勧められています。 

熟成の方法をタイプ別に解説

旨味を最大限強める「ドライエイジング法」

室温0~3℃、湿度70%ほどの専用の貯蔵庫内で、空気を循環させて肉に風を当て、数週間から数か月程度の時間をかけて乾燥させ、熟成させる方法です。アメリカで確立された技法で、脂身の少ない歯ごたえのある赤身肉を塊や骨付きのまま使用します。


空気に触れているため、肉の周りには自然と微生物が付着し、表面は乾燥してカビが生えます。食べられない表面部分はそぎ落として中の部分が提供されますが、そぎ落とすことで可食部は50~70%ほどとなってしまうことが難点です。歩留まりは悪くなってしまいますが、熟成香と呼ばれる熟成肉特有のナッツのような香ばしい香りや凝縮された旨味を味わうことができます。 


整った設備と技術が求められるため、熟成肉を専門とする飲食店で取り扱われることが多いです。 

歩留まり良く容易な「ウエットエイジング法」 

肉を真空状態にパックして、0℃前後の貯蔵庫で寝かせて熟成させる方法です。肉の周りに吸水紙をあて、出てくる水分を取り除きながら行います。もともとは肉を輸送する際、保存性を高めるために真空パックにしていたことから生まれた技法です。

 

外気に触れないため、肉の乾燥を防ぎ、細菌の繁殖を抑えることができます。表面をそぎ落とす必要があまりないため、歩留まりが良く、比較的管理がしやすい方法です。肉を柔らかくする効果はありますが、熟成特有の香りはなく、旨味はそれほど強くならないことが特徴です。 


身近なチェーン店でもウェットエイジングの方法を取り入れていることがしばしばあります。  

日本の伝統的な熟成法「枯らし熟成」 

日本で古くから行われてきた伝統的な和牛の熟成方法です。貯蔵庫に肉を枝肉のまま吊るして、乾燥させて熟成させます。


ドライエイジングと同様に表面はそぎ落とす必要があり、歩留まりは悪くなりますが、風を使わずゆっくりと乾燥させるため、程よく水分が抜け、旨味が強く、和牛香と呼ばれる香りもしっかりと残ります。


熟成技術や流通が発達したこと、和牛はもともと脂肪が多く柔らかいため熟成しなくても美味しく食べられることなどの理由から、現在はあまり用いられなくなった貴重な技法です。 

・乳酸菌熟成 

ヨーグルトやチーズを製造するときに用いられる乳酸菌を肉に付着させて熟成させる方法です。


乳酸菌の作用により、肉が腐敗しにくいことが特徴ですが、乳酸特有の香りがしてしまうため、肉の熟成方法としてはそれほど一般的ではありません。 

熟成肉の美味しい食べ方をご紹介

熟成によって多少の水分が抜けた熟成肉は、焼くとさらに水分が抜け肉汁が減ってパサパサしてしまうため、肉汁が流れ出しにくい焼き方をすることが美味しく食べるコツです。


「塊焼き」といわれる、塊のまま表面を焼く方法で調理すると、火の当たる面積が少なくなり、肉汁を中に閉じ込めることができます。じっくりと火を通したら、スライスして食べる方法がおすすめです。 


旨味の詰まった熟成肉は、塩とコショウでシンプルにいただくと本来の味わいを楽しむことができます。 

まとめ 

肉を熟成させると、酵素の働きによって肉のタンパク質がアミノ酸に分解され、普通の肉よりも肉質が柔らかくなり、旨味が強くなります。 

熟成肉を作るには徹底的に管理された環境と熟練の技術を必要とするため、家庭で作ることは難しく、飲食店などで美味しく食べるのが良いでしょう。


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