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刻み食とは 調理法の解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/07/22
更新日:2022/10/31

目次

刻み食とは、普通の食事を細かく刻んだ食事のことで、噛む力が弱っている人に向けたお食事です。
食形態の種類として、一人一人の食べる機能に応じて、軟食からミキサー食、ゼリー食まで様々な食形態がありますが、刻み食は比較的食材の形状が残っており、普段の食事に近く、食材の香りなども楽しめます。しかしながら、歯に詰まりやすい、誤嚥の危険があるなどのデメリットもあります。
高齢化社会となり、口から食べることに問題がある高齢者が増加している中、噛む力や飲み込む力が低下した方には、食べる機能に応じた食事を提供することが重要視されています。今回は、様々な食形態の中でも比較的形状が残っており普段の食事に近い、刻み食の特徴やメリットデメリット、作る際のポイント・注意点などついて解説します。
 

刻み食とは

義歯が合わない人、かみ合わせが上手くできない人、口を開きにくい人など、飲み込む力はあるが噛む力が弱っている人が咀嚼しなくても食べられるように、細かく刻んだお食事です。刻むサイズは、食べる方が無理なく食べられる大きさにすることが重要で、1~2cm程度の大きさに刻むこともあれば、5mm以下に刻む場合もあります。刻み方としては、料理をまな板にのせて包丁で刻むか、はさみでカットするのが主流です。最近では、フードプロセッサーを使用する他、刻み食用のフードカッターなども販売されています。
人は食べ物を口にした際に、咀嚼してできた食塊を舌の上で飲み込みやすい形状に固める“食塊形成”を行いますが、刻み食では咀嚼がほぼ不要な為、食塊形成が行われず食べ物をバラバラの状態で飲み込むことになります。その結果、誤嚥などを起こしやすいため、必要に応じて刻み食にとろみをつけて飲み込みやすくすることも大切です。

刻み食のメリットとデメリット

メリット

すでに噛み砕いた状態で提供されるため、噛まなくても食べられるのがメリットです。又、ソフト食やミキサー食などに比べ、素材の形状が分かり、食材の見た目や食感、香りを感じやすく本来の食事に近いお食事を食べられるのが魅力です。ご家庭で作る際も、普通の食事を刻むだけなので、ほとんど家族と同じものを食べられます。

デメリット

食材を細かく刻むことで、口の中でバラけやすい為、気管に食べ物が入りやすく誤嚥のリスクがあります。特に高齢者は、唾液の分泌量が低下している為、食材が口の中でまとまりにくく、上手く飲み込めない、むせ込みやすいなど食事が上手くできない方が多くなります。また、粒が小さく歯の隙間に入りやすい為、歯と頬の間や歯茎と入れ歯の間にカスが残りやすく、口の中に菌が増えやすくなります。その為、しっかりと歯磨きや口腔のケアをしなければ、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。

刻み食を作る際のポイント

フライものや野菜によっては、細かく刻むことで料理のカサが増すことで、多く食べられない場合があります。あまり多くの量を食べられない方などは食材の内容を検討する必要があります。又、すべての食材を刻めば良いという訳でもなく、魚などは骨を丁寧に取り除いて“ほぐす”方が、見た目が綺麗になります。じゃがいもやかぼちゃなどは、茹でてペースト状にしたり、スープにする方が食べやすい場合もあります。全て刻むという事にとらわれず、食材に応じて形状を変えることも一つのポイントです。
下記に食材に応じた調理方法を示します。

  • 肉類:調理済みの料理を包丁で刻む。細かくなりすぎない
  • 魚:調理済みの料理を手でほぐす。包丁で刻む場合、皮の硬い魚や見た目が悪くなる場合は、皮を取り除く
  • 卵:卵豆腐や温泉卵は、刻まずそのまま。茶碗蒸しは刻んだ具材を入れる
  • 玉子焼きなど上記以外の卵料理は調理済みの料理を包丁で刻む
  • 豆腐:基本的には、刻まずそのまま(木綿豆腐は、場合に応じて形を崩すか刻む)
  • 果物:細かくなり過ぎないように刻む。繊維が多い果物は、うらごしの物を使用したり、ミキサーにかける
  • 野菜:柔らかく煮たものを、刻んだりペーストにして使用。トマトなどの皮が口に残りやすいものは皮を除く
  • 汁物:大きな具材は刻んで提供する

刻み食を作る際の注意点

調理済みの食材を細かく刻む際、まな板や包丁に多く触れることで、食中毒の原因菌が付着する確率があがります。その為、まな板や包丁などの調理器具はしっかりと消毒をし、清潔に保つことが大切です。また、誤嚥のリスクを減らしたり、歯に食材が詰まることを予防したりするために、水溶き片栗粉やとろみ剤を用いて、食べ物をまとまりやすくすると、より安全に食べることが出来ます。

その他の食形態

ここでは、刻み食以外の食形態にはどのようなものがあるか、刻み食と比較が出来るように簡単に説明します。
ソフト食:加齢によって食べる力や噛む力、飲み込む力が弱くなった方に向けたお食事です。やわらか食とも呼ばれています。形はありますが、歯を使わなくても歯茎や舌と上あごでつぶせる硬さです。口の中で食べ物がまとまりやすいため、誤嚥のリスクが少ないというメリットがある反面、食材を柔らかくするために、長時間に煮込むなど調理時間がかかるのがデメリットです。
ミキサー食:食欲や消化吸収などには問題がないが、噛む力が弱くなっていたり、嚥下機能が低下している方に向けたお食事です。食事に出汁などを加え、ミキサーにかけてペースト状にします。ただし、水分量が多いものや液状のものは、口のなかでまとまりにくく、むせたり誤嚥をする危険性があるので、とろみ剤等でとろみをつけて提供する必要があります。刻み食と比べると、食材の形状がないため、美味しそうに見えないものがあることがデメリットです。
ゼリー食:料理をペースト状にし、ゼラチンや寒天などを加えて柔らかく固めたものです。ゼリーのような食感で、のどの滑りも良く、つぶさなくても安全に飲み込めるのが特徴です。噛む力・飲み込む力ともにとても低下している方に向いています。ゼリー状の為口の中でバラけにくく、誤嚥のリスクが低いこと、ゼリー状で形を形成できる為、見た目も元の形に近づけることが出来るのがメリットです。ただし、ゼリーの硬さ調整やつぶして固めるなどの工程が必要な為、ご家庭で作ることが難しいのがデメリットです。

まとめ

刻み食とは、噛む力が弱っている人が咀嚼しなくても食べられるように、細かく刻んだお食事です。
ペースト状のものと比べて比較的素材の形状が分かり、食材の見た目や食感、香りを感じやすく本来の食事に近いお食事を食べられるというメリットがある反面、誤嚥のリスクがあることや作る際の衛生管理には特に注意が必要、というデメリットもあります。基本的には普通の食事を刻みますが、料理によっては内容を少し検討したり、食材によって刻んだりほぐしたりと臨機応変に対応することが大切です。
食べ物を口から食べることは、人間にとって大きな喜びでもあり、楽しみでもあります。食べる機能が低下した方に、少しでも食事を楽しく味わって頂くために、様々な食形態の中から一人一人に応じた食形態を考えて提供することが最も重要であるでしょう。

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