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病院勤務の管理栄養士についての解説 配置人数と仕事内容とは

シェアダイン編集部
作成日:2022/06/23
更新日:2022/10/25

目次

国家資格である管理栄養士という職業。
食事の栄養バランスを管理するスペシャリストとして耳にすることが多い職業だと思いますが、その中でも病院勤務の管理栄養士は役割も大きく異なってきます。
ここでは、そんな「病院勤務の管理栄養士」の仕事に特化してくわしく解説いたします。

管理栄養士とは

言葉の意味からなんとなくイメージはつきますが、具体的にはどんな職業なのか、「管理栄養士」と「栄養士」の違いについても触れながら解説いたします。


管理栄養士と栄養士との違い

管理栄養士とよく並べられる職業に「栄養士」があります。どちらも食に関する栄養指導をするという点では同じなのですが、明確に役割の違いが定められています。
管理栄養士とは、病気や怪我など特別な配慮が必要となる人へ療養を目的とした栄養指導をする人を言います。
一方栄養士とは、主に健康な人を対象とした栄養指導をする人のこと。例えば学校給食や、特に療養を必要としない介護施設の入居者へのケアなどがわかりやすい例です。
栄養士の資格は都道府県が定めた認定基準を満たせば取ることができますが、より高度な知識が求められる管理栄養士は国家資格を取得する必要があります。また、働くことができる場所もより専門色が強い機関、代表的なところでは病院などに限られます。

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なぜ病院に管理栄養士が必要なのか

では、なぜ病院には管理栄養士が必要なのかというと、先ほどの説明でも触れましたが、管理栄養士とは病気や怪我をしている人など、「特別な配慮が必要となる人」を対象にした栄養指導のプロをさします。
傷病者は健康的な人への栄養指導に比べ、一人ひとりの病状に合わせて適切な治療を行う必要があるため、より専門的な知識が求められます。そのため、病院では栄養士ではなく「管理栄養士」の資格を持ち指導できる人が必要不可欠になってくるのです。

管理栄養士の配置は法律により定められている

医療法

医療法とは病院・診療所・助産所などの開設や管理、整備や運用などに関する法律のことを指し、1948年に制定されました。
これは医療を受ける人が適切に、また安全な医療の選択ができるよう定められたもの。治療を行う中で健康にも大きく関わってくる食・栄養指導の基準もこれに基づいて制定されています。
具体的な医療法においての人員配置基準は、

  • 一般病棟…病床数100人以上の施設に栄養士1人以上
  • 特定機能病院…管理栄養士1人以上


となっています。
参考:医療法に基づく人員配置標準について

・健康増進法

さらに、その上で2000年に公布されたのが健康増進法です。これは厚生省が同年に制定した「21世紀における国民健康づくり運動」(健康日本21)の実現を目的としてつくられました。
第二次世界大戦後日本では大きく食生活が変わり豊かになった一方で、がんや心疾患、糖尿病などの生活習慣病が深刻化しています。この現状を改善するために掲げられたのが健康日本21です。
従来の食物確保自体が難しく栄養欠乏が常だった状況から一転し、過剰栄養となった現代。そんな時代の変化とともに、人々の豊かな食生活を確保しながら同時に健康寿命を延ばしていこうという取り組みです。
この実現のため健康増進法という法律を併せて制定し、医療現場などの体制を整える動きにつながっています。
食に直接携わる管理栄養士という職業は、こういった流れにおいて大変重要な役割を担っています。そのため、健康増進法でも医療機関などの規模や条件によって管理栄養士を配置する必要がある細かい規定があるのです。

【例:東京都の場合】

  • 病院または介護老人保健施設の特定求職施設(一回300食以上または1日750食以上提供)
  • 病院(病床数300以上)に設置される特定求職施設
  • 介護老人保護施設(入所定員300人以上)に設置される特定給食施設


参考:管理栄養士の必置指定について 東京都福祉保健局

管理栄養士の主な仕事内容

ここからは実際の管理栄養士の仕事内容についてです。
管理栄養士の仕事は給食部門と臨床部門に分けられます。それぞれくわしく見ていきたいと思います。

給食部門

給食部門では主に一般食・治療食に分けて提供が行われています。
一般食とは、比較的症状の軽い患者さんへ提供される食事のこと。そして治療食とは、患者さん個人の症状に合わせて栄養や食事量・食事回数を計画し供給を行うもの。
一般食に関しては調理師が担当する病院もありますが、治療食は専門的な知識が必要なため管理栄養士の担当となります。
どちらも献立作成・発注・調理など、患者さんへの食事提供の過程で必要になる作業が主な仕事内容です。
もう少し細かく言うと、給食部門は直接運営する直営給食、委託給食会社が代わりに運営している委託給食に分かれます。
さらに、委託会社にも献立から調理までの過程すべてを委託する全面委託、献立作成や調理作業の一部のみを委託する部分委託があります。
運営の仕方は病院によっても異なるため、就業する病院がどういった方針で運営をしているかによっても仕事内容が大きく変わってくるでしょう。

臨床部門

臨床部門では患者さんへの栄養指導・栄養管理などが主な業務となります。またNST(Nutrition Support Team)と呼ばれるチームに属し、患者さんへのサポートを行う場合もあります。
NSTとは、多職種の専門家たちによる患者さんへの適切な栄養管理を行うチームのことを指します。より個人へ寄り添った治療ができるよう、医師・看護師・薬剤師などとともに患者さんの栄養状態を診察し、多方面からサポートできるような仕組みになっています。

管理栄養士に求められる能力

では、管理栄養士には一体どういった能力が求められるのかを挙げていきたいと思います。

栄養、臨床栄養の知識関心

まず第一に、栄養、さらに臨床栄養への知識や関心が必要不可欠です。
さらに栄養や食品の知識だけでなく、それぞれが健康にどういった影響を及ぼすのかという相関関係をしっかりと理解すること。また、食事を楽しみながら健康な体になっていくプロセスの提案力が求められます。
薬での治療とは違い、あくまで「食事」という行為を通して健康状態の改善を目指しましょう、という提案ができる必要があります。
そのため、普段から食への好奇心や探求心を持つことが非常に大切と言えるでしょう。

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コミュニケーション能力

同じく、管理栄養士に求められるものにコミュニケーション能力があります。
栄養・医療の知識があればつとまるのでは? と意外に感じるかもしれませんが、とても大切で管理栄養士には大きく求められる能力です。
当然ながら患者さん一人ひとりの健康状態や食の嗜好、健康に対する考え方は違います。今患者さんの身体はどういった状態なのか、食事を楽しみながら治療をしていくには、ということを頭に置きながらヒアリングし、一人ひとりに合ったプランを提案できることが大切になってきます。
また、医療現場は様々な立場の人が関わる場所です。
医師や看護師、薬剤師などと連携しなければ円滑に進まない業務も多く、対患者さんだけではなく同僚間でもコミュニケーション能力が高く求められる職業です。

セルフコントロール

また、管理栄養士になるにはセルフコントロールができることも重要です。
ここまでお話したとおり、管理栄養士は様々な人たちと関わる職業です。
患者さんは幼児から高齢者までと層が幅広く、また健康状態もそれぞれ違うため、栄養指導を行う上で細かい配慮が必要です。管理栄養士も患者さんへ寄り添った指導を出来るようこころがけますが、相手の考えと必ずしも合うとは限りません。
食の栄養指導は相手の協力あって出来るものですが、意思疎通がスムーズにいかないと思ったような協力を得られないこともあり、ストレスを感じることもあるでしょう。
また医師や看護師などとチームを組んで治療を行う場合、保有資格の違うそれぞれの立場からの意見は衝突することもあります。患者さんへ適切な治療をしたいという思いはひとつでも、その過程ですり合わせに神経を使うケースも見られます。
さらに、管理栄養士は大量調理・立ち仕事で体力を要する仕事でもあります。
大規模な病院などでは提供する食事の数や回数も多く、体力的にもハードな仕事だと言えるでしょう。
こういった環境の中でも自分のペースを崩さず意見を通し、体調やメンタルの管理ができるようにしておくことは頭に入れておきたいポイントです。

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管理栄養士とは 仕事内容と勤務先の解説

病院の管理栄養士の待遇

病院勤務の管理栄養士の待遇は、比較的良い傾向があります。
管理栄養士全体の平均年収は約350万円前後で推移しています。介護施設勤務の管理栄養士の平均年収は約260万円~310万円程度。病院勤務の場合は400万円以上を提示しているところもあり、働く場所によっては好待遇を狙うことができます。専門的な知識が必要であればあるほど需要も高く、病院側も良い人材を確保するべく待遇を引き上げていることが多い印象です。
次に休日や勤務時間についてですが、病院によっても大きく変わってきます。
8:00~17:30勤務、土日休みというところもあれば二交代の勤務でシフト休など、働く場所によって様々です。
ですが医師や看護師と違い夜勤があることはほぼなく、早朝勤務があっても4:00~、5:00~というところがほとんど。夜間の時間にかかることはまれでしょう。
土日休み、もしくは平日休みがいい、働く時間帯は固定がいいなど、自分の希望を明確にし職場を選ぶことで理想の働き方を叶えられるでしょう。

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まとめ

食の栄養指導をするスペシャリストである管理栄養士の仕事。中でも病院勤務の場合は患者さんへ対しより専門的な知識を必要とするため、好待遇が期待できるでしょう。
管理栄養士の機関への配置に関しては医療法・健康増進法で細かい規定があり、その分需要があるため、同業種の中では就職口が選びやすいと考えられます。
病院によって提示される給与体系や勤務時間なども違うため、経験を積んで転職することなどでも働き方を理想に近づけていくことができるでしょう。

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