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管理 栄養士転職事情 退職理由と理想的な職場を探すには

シェアダイン編集部
作成日:2022/07/05
更新日:2022/10/25
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目次

国家資格を必要とし、食の栄養指導のスペシャリストである管理栄養士という職業。食を通し人の健康に関わることのできるやりがいのある仕事ですが、一方で退職や転職も多く見られます。この記事では、そんな管理栄養士の転職事情について解説致します。

管理栄養士の主な転職・退職理由

管理栄養士の主な転職や退職の理由には、大きく分けて次のものが考えられます。

仕事量

第一に、仕事量の多さです。
管理栄養士の仕事は職場によっても変わりますが、その内容は献立作成、発注業務、調理、栄養指導など多岐にわたります。
それらを環境によっては一人でまかなわなければいけないこともあり、仕事量が膨らむことも考えられるでしょう。
また、管理栄養士と近しい職業に栄養士があります。栄養士は主に「健康な人」を対象とした栄養指導をし、「特別な配慮が必要な人」を対象とした管理栄養士とは扱いが異なる職業です。
しかし近年の栄養士不足により、管理栄養士が栄養士の仕事までカバーしなければいけないような職場もあります。
そうなってくると、管理栄養士の負担はますます大きくなってくると考えられます。

低賃金

次に、低賃金についてです。
管理栄養士の年収は350万前後が平均となっています。もちろん就職先によって待遇は大きく異なりますが、他業種に比べて低い傾向にあります。
管理栄養士の中でも年収が高い例として公務員を目指す、というものがあります。
公務員として就職した場合、平均年収は600万円台を狙うことも可能です。しかし実際には狭き門のため、管理栄養士全体で見ても6%ほど。
就職先のほとんどが病院や介護施設などを占めます。
「仕事量の多さに見合わない」というところも含めて、低賃金は働く管理栄養士にとって無視できないポイントになっているのです。

人間関係

管理栄養士は様々な人と広く関わる必要があり、コミュニケーション能力が求められる職業です。
対象の患者さんや介護施設の入居者はもちろん、それにあたって病院や施設のスタッフと関わり、協力関係を築きながら仕事を進めていく必要があります。
その中で、栄養学的な視点から知識に沿ってアドバイスをしても、相手の協力を思うように得られないこともあります。
指導の対象となる人は幅広く、老若男女を相手にしなければなりません。また食に関する好き嫌いやこだわりなどは幼少期から習慣として根付いている部分も大きいでしょう。それらの食生活が体にどういった影響を与えているかを理解してもらった上で、管理栄養士の提案を受け入れてもらう必要があります。
またサポートをするにあたって、いろいろな立場の人たちと協力体制を組んで指導にあたることもあります。
患者さんによってはNST(Nutrition Support Team)と言うチームを組むこともあります。NSTとは多職種の専門家、例えば医師や看護師、薬剤師などがチームを組み、患者さん一人ひとりに寄り添ったサポートができるような仕組みです。
保有資格の違う様々な立場の人とは意見がぶつかることも多く、すり合わせや歩み寄りに神経を使うパターンも多くあるように見受けられます。
このように、患者さんの症状を改善したいという目的は同じでも、そこに至るまでの人間関係でストレスを感じざるを得ない場面は少なくないと言えるでしょう。

責任の重さ

管理栄養士の仕事は、その責任の重さも無視できないポイントです。
管理栄養士が受け持つ指導対象者は、先に述べた通り「特別な配慮を必要とする人」です。
傷病者や特定のアレルギーを持つ人、身体能力の衰えた高齢者など、健康な人を相手にするよりもはるかに慎重さが求められます。
管理栄養士の判断一つで症状の改善を図ることもできれば、その逆も考えられます。
人の一生に関わる健康というテーマ。管理栄養士は長期にわたり対象者と関わりながら健康を預かる仕事のため、責任の重さは常につきまとう問題です。

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転職活動で押さえること

確固たる退職理由

まず、転職活動で絶対に押さえておきたいのが「退職理由」です。
終身雇用制度が一般的であった一昔前の世代と違い、昨今は転職をしながらのキャリアアップがめずらしくなくなりました。ですが、それでも転職に至った理由については最も見られる部分だと思っていてよいでしょう。
なぜなら、雇用側にとって転職活動による中途の入社・入職の採用をすることは、同じように自らが転職されるリスクを含んでいるからです。
人件費はどんな企業・病院にとっても、経営コストの中でも大きなウエイトを占めています。また人材育成にかける期間や労力を考えると、できるだけ長く勤続してくれる管理栄養士を採用したいと考えるのはどこも同じでしょう。
そのため、前の職場では働く上で何が問題だったのか? それは転職しなければ解決できないようなことだったのか? また今回採用したところでお互いのニーズがマッチするのか? の具体的な説明となり得るような確固たる理由が必要になってきます。
管理栄養士の転職理由として、ここまで説明したような「仕事量」「低賃金」「人間関係」「責任の重さ」などを総合的に見て「それぞれのバランスが仕事を続けるに見合わない」との判断に至ることがあげられるでしょう。
管理栄養士になるには、国家資格を取得する必要があります。
厚生労働省が発表した令和4年2月の受験者数は16,426名、うち合格者数は10,692名であり、合格率は65.1%となっています。
また受験資格も定められており、受験資格を得るだけで修業年数と実務経験を合わせても最低4年は年月を要します。
決して簡単になれる職業ではないこと、しかも本人が望んで選んだ道であることを考えても、よほどの理由がなければ退職には至らないと考えられます。
たとえば仕事量が多くても、うまく分担できるような協力体制を築ける職場であれば、人間関係によるストレスを抱え込むこともないでしょう。また責任の重さがプレッシャーとなっても、それに見合う給与の待遇があれば逆にモチベーションにして頑張ることもできます。
しかし、現実に管理栄養士の平均勤続年数は3~5年ほどと言われています。これから考えると、やはり就業条件や環境のバランスがとれていないと感じている人が多くいると考えることができると思います。
そこで転職活動の際は、自分がどういった働き方を求めているかを明確にアピールすることが大きなポイントだと言えるでしょう。

働く中で得た知識や経験、スキルを伝える

次に押さえておきたいポイントですが、今までの職場で働く中で得た知識や経験、スキルを十分に伝えるということ。「採用後にどういった働きをしてくれるか?」を具体的にイメージしてもらうことで採用につながりやすくなります。そのためには、今までの職場ではどういったことを経験してきたのか? どういった知識を得て、どういったスキルを得てきたのか? を明言できるようにしておきましょう。
中途採用の場合、たとえば業務の拡大や前任者の退職などにによって、人員不足を補うための採用が多いことが一般的であると思います。
新卒採用はある程度教育にかける期間を見込んでの採用のため、即戦力になることを早期から求められることはあまりないでしょう。
しかし中途採用となると、採用側もやはり経験者や現場の即戦力となる人材を求めています。
自分の経歴や得てきたスキルが、採用された場合どれだけメリットになるか? をわかりやすく伝えられると良いでしょう。
たとえば同じ「病院の管理栄養士」という中での転職でも、病院や所属の科が違えば仕事の進め方が違う点も多くあります。
こういった違いも"新しいやり方を取り入れ業務改善に貢献できる"など、採用側へのアピールポイントとして積極的に伝えていくと転職活動がスムーズにいくと考えられます。

理想的な職場をさがすには

ここまで、管理栄養士の仕事の現状や転職に至るまでを見てきました。
では実際に、理想的な職場を探すために頭に入れておきたいことを挙げていきたいと思います。

クリアしたい条件を明確にする(業務内容や給料、休日など)

第一に、業務内容や給与、休日など、理想の条件を明確にする必要があります。
業務内容は職場によって大きく異なります。
自分は病院で対患者さんの仕事をしたいのか、もしくは介護施設で高齢者を相手に活躍したいのかなど、前の職場の経験も元に具体的に思い描くことが大切です。
たとえば病院勤務の管理栄養士。給食部門の仕事を例に見ても、「直営給食」「委託給食」で担当業務が異なってきます。
給食部門は患者さんへ食事を提供する部門のこと。直営給食とはその名の通り病院が直接運営することで、委託給食はその業務内容の一部を委託会社に発注します。
対患者さんのお仕事をしたいけれど、なかでも直接患者さんの治療に携われる仕事がしたい。そのために病状のヒアリングや献立作成に注力したいから、雑務など委託できるところは他社に発注できる委託給食の病院で働きたい。
このように、職場選びが働き方に大きく関わってきます。
また、給与や休日などの条件も職場によってさまざまです。
理想的な転職を目指すには、それらの条件を数字や言葉で明確にし、整理することが第一歩です。その上で、実際の募集条件とすり合わせをしながら選んでいくことがなにより大切だと言えるでしょう。

幅広い業界を見る(給食業界以外にも美容・スポーツ業界等)

管理栄養士の仕事と聞いて、一般的には給食業界がイメージされやすいと思います。病院や介護施設、学校給食などの給食業務に関わる管理栄養士の姿は例としてよく挙げられる職種です。
ですが、意外にも美容業界やスポーツ業界でも活躍の場があることはあまり知られていません。
美容業界の一例として、健康食品や化粧品メーカーの研究職や企画開発職などが挙げられます。
栄養学は、健康と同時に美容にも関係が深い分野です。
健康食品会社のサプリや美容のサポート飲料などの研究・開発において、管理栄養士として学んできた知識が生かせる場面は多くあるでしょう。
また、スポーツ業界では「スポーツ栄養士」と呼ばれる管理栄養士が存在します。
スポーツ栄養士とは、プロのアスリートや一般のスポーツ愛好家まで、スポーツをする人へ栄養指導や健康管理を行う仕事です。
スポーツ選手と健康は切っても切り離すことが出来ない関係にあります。また健康状態でパフォーマンスが発揮できるかどうかも大きく変わってくるため、栄養指導のプロである管理栄養士が重宝される業界なのです。

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まとめ

志した道ではあっても理想と現実にギャップを感じることも多く、転職する人も多い管理栄養士。そんな中でも、自分の求める働き方や条件を明確にし、培った経験やスキルを生かせばキャリアアップも可能です。
管理栄養士は専門的な知識がなければなることが出来ない職業である分、その活躍の場はスポーツ・美容業界など幅広く用意されています。
転職の際は可能性と視野を広げることで、理想の働き方を手に入れることができるでしょう。

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