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病院食がまずいといわれる理由を解説 実際にとられている様々な工夫も紹介

シェアダイン編集部
作成日:2022/09/04
更新日:2022/12/13
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目次

「病院食はまずい」とよくいわれます。
憂鬱な入院中、わずかな楽しみのひとつでもある食事がまずいと残念な気持ちになります。

病院食は故意にまずくしようとしているわけではないのに、どうしてまずいのか。
病院食がまずくなる原因や改善策、おいしくするためのアイデアなどについて詳しくご紹介いたします。

「病院食はまずい」といわれる理由を解説

病院食がまずいのは、味が薄いのと、おかずの少なさなどが原因としてあげられます。
濃い目の味に慣れ親しんだ人にとって、薄味に慣れるには時間がかかるでしょう。
また、日頃おかずをたくさん食べている人にとって、病院食のおかずは少ないとがっかりしてしまうことも想像に難くありません。

そのほかにも、いつも家族や複数人数で食事をしている人の場合、慣れないひとりの食事では、おいしさを感じられないということもあるでしょう。

病院に入院する目的は、病気やけがを治すことです。そのため、病院食には、治療を目的とした栄養バランスや消化の良さ、食べやすさなどが優先されます。病院は、旅館やレストランと違い、味に対して多くを期待できない食事ともいえます。

病院食に施される様々な工夫を紹介

病院食で取り入れられる様々な工夫についてご紹介いたします。

病院食は、患者一人ひとりの病状に合わせて、「食事箋」という医師の指示の下、管理栄養士が献立を考えます。
食事箋は薬の処方箋の食事版と考えていいでしょう。

管理栄養士、栄養士は、塩分やカロリーなど、摂取すべき、または控えるべき栄養成分を調整して献立を作成します。例えば、成人と高齢者では、必要な摂取カロリーや栄養素が異なります。また、患者の病状によっては避けるべき栄養素もあるでしょう。食べるのが難しい患者のための食事にも、十分な栄養が摂れるように様々な工夫が施されています。

しかし、栄養バランスが整った献立でも、食べてもらえなければ意味がありません。味を損なわず、患者の好みや背景も考慮します。また、高齢者や嚥下に問題がある患者の場合は、飲み込みやすいような形状にして、飲み込みやすい食事を提案します。例えば、魚をムース状にするといった工夫です。

食事は、人生の楽しみのひとつです。そのため、たとえ栄養バランスに優れ、必要なカロリーが摂取できる食事でも1日3食同じような食事では飽きてしまいます。入院中の食生活に飽きが来ないような工夫もされています。例えば、季節に合わせたイベントや食材で特別なメニューを用意することです。お正月にはおせち料理、夏は屋台の焼きそば、冬にはクリスマス料理といったメニューを考えて提供されます。

病院食がまずい原因 まとめ

病院食がまずいと感じる原因を、以下に列挙いたします。

・味が薄い
病院食は、栄養が第一優先で味が二の次になるのがまずくなる原因のひとつです。塩分控えめで、野菜や魚が中心の淡白なおかずが多く、揚げ物やラーメンなど油脂が多いメニューが少ないのも特徴です。味覚の嗜好は人それぞれですが、病院食は万人に受け入れられる味付けとなるのも、まずいと感じる原因となるでしょう。

経済的制約
多くの病院では、食事に十分な経費をかけられないため、食材の原価を抑える必要があります。また、腕のいい調理師を雇用するのが難しいという現状も。食事に経費をかければ、より質のよい食材を仕入れることが可能になります。一方で、食材を高品質なものにすると、患者が支払う食事代が高額になってしまうため、経費を抑えた食材で賄う傾向にあります。

・冷めている
病院食がまずいと感じる原因として、食事が冷めているということがあります。病院では、同じ時間に多くの患者が一斉に食事をするため、提供される時には温かい食事が冷めてしまい味に影響が出ることも。また、一度に大量の食事を用意するためには、手間暇を最小限にする必要があります。そのため、おかずが少なく、おいしそうに見える盛り付けを省くことが多くなります。見た目の工夫が少なく冷めた食事は、おいしくなさそうに見えてしまうためまずいと感じられる原因となるでしょう。

・選択肢が少ない
ご飯やパンなどの主食に選択肢が少ないのも、病院食がまずく感じられる原因のひとつです。また、おかずが少なくご飯が多いことも物足りないと感じるでしょう。食べ盛りの年代と高齢者では、食べる量や嗜好が違います。おかずがすべての患者共通であることも、まずいと感じてしまう原因となります。
また、病気を治すことが優先されるため、疾患によっては消化の良いものが中心となります。摂ってはいけない栄養素が除外されていることも、病院食がまずいと感じる原因です。また、ケガで入院している場合、内臓に問題がないのに好きなものを食べられないということもあります。

病院食を美味しくいただくアイディアを紹介

限られた条件の中、少しでも病院食をおいしくするために行っているアイディアについてご紹介いたします。

病院食がまずい理由のひとつが、薄い味付けです。塩分を規定量しか使えなくても、昆布やカツオの出汁をきかせればおいしい味付けになります。また、酢やレモンをきかせたり、ごまや青じそなどの薬味を使ったりすると、塩を強くしなくてもしっかりとした味付けに。香り高いスパイスは味わいを高めるのに効果的です。カレーやハヤシライスなどをメニューに取り入れる病院も増えています。

病院食は和食に偏りがちですが、洋食や中華、イタリアンなどバラエティに富んだメニュー開発も進んでいます。医師の許可が必要ですが、ふりかけやご飯のお供を持ち込むことが許可される病院も。また、果物やデザートで食事の満足度を高める方法も取り入れられています。

最近では、おいしい食事の大切さが認識されるようになり、まるでカフェのメニューのような、色とりどりでおいしい料理を提供する病院が増えています。その他に、うなぎや懐石料理のような見た目も味もレベルの高い食事を提供する病院も。

女性が多く入院する産婦人科では、旬の食材を使用したコース仕立てのフランス料理を病院食として提供する病院も。出産や誕生日などのお祝い膳として特別な料理を出したり、患者のニーズを聞いて食事に関する要望に応えたりしている病院もあります。

このような病院食のイメージをガラリと変える病院は、全国的にはまだ少ないです。しかし、食事の大切さが見直される昨今、おいしい病院食を提供する病院は今後ますます増えていくでしょう。

まとめ

病院食がまずい理由についてご紹介しました。病院の経営や設備、調理師の雇用などの都合により、食材の費用を抑えるため味は二の次になる傾向にあります。それが病院食がまずいと感じる原因のひとつになっています。病院は病気やけがを治す場所であり、料亭やレストランではないため、まずくても仕方がないと考える人が多い傾向にあります。

しかし、どれだけ栄養バランスが良くても、完食されなければ意味がありません。
病院では、栄養士、管理栄養士が、栄養バランスと調理法、患者の嗜好を考慮しておいしく完食できるように工夫を凝らしています。今後は病院食に関わる人たちの努力により、栄養も味も満足度が高い病院食が開発されていくことでしょう。

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