肉の仕入れ業者を探す方法について解説 業者別の特徴や注意点なども合わせて紹介
目次
飲食店を経営するうえで難しいのが食材の仕入れ先を確保すること。食品小売市場や卸業者、農家からの直接買い付けなど食材のカテゴリーによって仕入れ先はさまざまですが、新規開業をめざす方は食材の仕入れ先を探す方法から考えなくてはなりません。
そこで、この記事では食肉の仕入れに焦点を当てて、おもな仕入れ先の取引上のメリットとデメリット、食肉を仕入れる際に知っておくべきポイントなどを中心に解説いたします。
肉の仕入れ業者を探す方法について解説
飲食店が食材の精肉を調達する方法としては、食肉センターや食肉専門の卸業者から仕入れたり、畜産農家などの生産者から直接買い付けるなどの方法があります。
ここでは各仕入れ先の概要と取引方法、およびメリットとデメリットについて解説いたします。
方法1:食肉センターから仕入れる
食肉センターは畜産業が盛んな地域で豚や牛などの家畜を解体して食肉の生産加工を行う施設です。運営主体は地方自治体やJAなどの生産者団体、および食肉関係者団体などの共同出資で、平成26年度の資料によると全国192ヵ所に設置されています。
食肉センターでは、JA(農業協同組合)を通じて畜産農家から食肉加工を依頼された家畜や、家畜商が直接生産者から買取った家畜の食肉処理を請け負うのが一般的です。食肉センターは食肉加工が専門ですが、施設によっては卸売市場を併設している場合があります。
たとえば東京の「芝浦と場」は食肉センターに該当する施設で、全国の畜産農家から集荷した牛や豚を解体処理して枝肉や内臓、原皮などを生産していますが、都内で唯一の食肉市場を併設しており、仲卸業者や売買参加者に競売で枝肉を販売しています。
食肉市場における取引方法は他の食品市場と基本的に同じ。競売に参加するには「売買参加者」の資格が必要です。飲食店は後述する卸業者や仲卸業者から購入するのが基本です。
方法2:食肉専門の卸業者から仕入れる
卸業者は生産者から買い付けた商品を市場に出して仲卸業者や小売業者に競売で卸す業者のこと。近年ではECサイトで受注して全国配送にも対応できる食肉卸業者も多く、全国各地のブランド肉を簡単に仕入れることができます。
飲食店が卸業者や仲卸業者から食肉を仕入れるメリットとしては、小売店では手に入りにくい部位の肉やまとまった量の肉を入手しやすいこと、業者との信頼関係で良い食材を得られること、専門家の知識や情報が得られることなどがあります。
デメリットは信頼関係を構築するまでに時間を要すること。卸業者や仲卸業者は小売店ではないので取引実績や人脈がないと仕入れができない場合も。少量の注文も基本的にできません。卸業者や仲卸業者との取引で信頼関係が重視されるのは、代金を月締めで翌月に支払う「掛け売り取引」が基本だからです。
かけ売り取引には請求業務が効率化できるなどのメリットがあるため、企業間取引ではよく行われますが、取引前に相手の信用調査を行うのが基本です。新規の店舗は信用度が低いので与信として売掛金を保証する掛け払い決済サービスを利用する方法もあります。
方法3:生産者から直接仕入れる
猟師や畜産農家などの生産者から直接肉を仕入れる方法もあります。高品質な食肉を安定的に供給できる畜産農家を探すのは簡単ではありませんが、もし見つかれば、「シェフが選び抜いたこだわりの食材」をアピールすることでライバル店との差別化が可能です。
生産者からの直接仕入れるメリットは仲介業者を通さないためコスト的に有利なこと。デメリットは必要な部位や量の肉を安定的に確保できない可能性があることです。希少部位の肉は卸業者の方が安定的に確保しやすい場合もあります。
肉を仕入れる際に知っておくと良いことを紹介
肉を仕入れる際に知っておくべきことは肉の部位の名称と特徴、相場価格といった専門的な知識と、良い肉を見分ける選択眼です。たとえば牛肉の場合、肉牛の品種や部位だけでなく、生産地や生産者、季節によっても味や見た目が変わってきます。
仕入れ先との交渉において知識や選択眼の欠如を見抜かれてしまうと、粗悪な肉をつかまされたり、安価な肉を高く売りつけられることにもなりかねません。仕入れ業者の善し悪しを見分ける選択眼もまた重要です。とはいえ食肉の知識で専門業者には勝てません。
肉のプロを相手に知ったかぶったりせず、わからないことは積極的に質問しましょう。仕事にまじめに取り組む誠実さと謙虚に学ぶ気持ちが業者に伝われば信頼関係を構築できるでしょう。良い業者なら希少部位の入荷情報や相場の動向などを教えてくれるでしょう。
肉はブロック(塊肉)単位で仕入れるのが基本。牛肉の場合、飲食店向けには10~13キロの精肉を1ブロックとして卸されるのが一般的です。豚肉は部位にもよりますが、肩ロースでは1本2kg程度のブロックで販売されます。
食肉の取引に関与していると「家畜商」という食肉業者の免許について耳にする機会があるかもしれません。家畜商とは都道府県知事の免許を得て牛馬や豚、羊および山羊(ヤギ)の売買や交換を斡旋する者のこと。肉卸業者の多くは家畜商の免許を取得しています。
肉の知識をつけるためには?
肉の仕入れに必要な知識や技術を身につけるには精肉店で働くのがベストですが、飲食店の経営に必要な知識を身につけるには以下の方法もおすすめです。
方法1:食肉センターに見学に行く
食肉センターは前述したように牛や豚などの家畜を食肉に加工する施設。近年では加工工程の多くがロボット化されています。
一般者が見学できる施設は限られますが、東京の食肉市場と芝浦と場には「お肉の情報館」という展示施設があり、施設内見学も可能です。
方法2:焼肉店で働く
焼肉店で働くと肉の知識とともに調理技術を習得できます。
また鉄板焼き店のように客の前で肉を切って焼いてくれる店に客として通いながら、コックに肉の善し悪しや調理のコツをたずねる方法もありますが、鉄板焼き店に通い詰めると食費がかさむのが難点です。
方法3:書籍やインターネット
食肉に関する知識は書籍などの出版物やインターネットで得るのが簡単です。
出版物では「肉の本」「肉事典」「肉の教科書」「焼き肉大全」など食肉に関連するさまざまな本や業界誌が出版されています。
またインターネットでは無数の情報サイトにヒットします。
先述した東京都中央卸売市場の食肉市場・芝浦と場部門のWebサイトにも「お肉の基礎知識」というページがあります。興味のある方はぜひご参照ください。
お肉の基礎知識|東京都中央卸売市場 (tokyo.lg.jp)
まとめ
飲食店を経営する上で食材の仕入れ先を確保することは難しい課題のひとつ。食肉の場合、調達方法としては食肉市場で卸業者や仲卸業者から仕入れたり、畜産農家などの生産者から直接買い付けるなどの方法があります。
ECサイトで全国配送にも対応できる食肉卸業者を利用すると、全国のブランド肉を仕入れることができます。
食肉の仕入れには専門知識も欠かせません。家畜の品種や肉の部位だけでなく生産地や生産者の知識も必要です。食肉に関する知識を得るには焼き肉店に勤めたり、書籍やインターネットで学んだりする方法があります。
可能であれば地元の食肉センターに見学を申し込むか、東京都中央卸売市場の食肉市場・芝浦と場の施設見学を利用するのもおすすめです。
関連記事:
飲食店の食材の仕入れ先について 選び方や仕入れ業者別のメリット・デメリットも合わせて解説
飲食店における業務用食材の仕入れについて 仕入れ先の選び方や流れも合わせて解説
インジェクション加工とは メリットや調理する際の注意点も合わせて解説