働きながら管理栄養士になるには 資格取得への年月を解説
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少子高齢化がすすむ現代社会で需要が高まる管理栄養士。学校や病院、介護施設はもとより食品メーカーやアスリートの専属管理栄養士など多くの活躍の場があります。現在栄養士として働いていてキャリアアップや収入面で管理栄養士を目指している方や、別業種から管理栄養士に興味を持ったり、転職を考えている方もいらっしゃいます。この記事では、働きながら管理栄養士の資格を取得するまでの流れを解説いたします。
働きながら管理栄養士になるには
管理栄養士になるには、栄養士養成施設または管理栄養士養成施設と呼ばれる学校を卒業する必要があります。栄養士養成施設、管理栄養士養成施設はどちらも全日制です。履修科目が多いことから、夜間課程や通信過程は設けられていません。したがって、学校時間外の早朝や夜間、学校が休みの日の勤務なら、働きながら管理栄養士を目指せるでしょう。
以下のうち、どちらかに該当すれば管理栄養士国家試験の受験資格を満たせます。
- 栄養士養成施設を卒業して栄養士の免許を有し、必要な年数の実務経験を積んでいる。
- 管理栄養士養成施設を卒業して、栄養士の免許を有している。(卒業見込み者も含む)
栄養士養成施設は卒業と同時に栄養士の資格を取得でき、その後栄養士として実務経験を積むことで、管理栄養士国家試験の受験資格を満たせます。
管理栄養士養成施設の場合は、4年間学び卒業後、管理栄養士国家試験を受験。
すでに栄養士の資格と、栄養士としての実務経験を有している方は、働きながら勉強して管理栄養士国家試験に臨みます。
独学や通信講座で管理栄養士の資格はとれるか
前述したように管理栄養士になるには、栄養士養成施設または管理栄養士養成施設を卒業する必要があります。独学や通信講座で学習するだけでは、管理栄養士の資格は取得できません。管理栄養士を謳っている通信講座は受験対策としてのものです。
栄養士養成施設の既卒者が、実務経験を積む期間に独学や通信講座で学習をし、管理栄養士国家試験に合格すれば、管理栄養士の資格が取得できます。
実務経験を積む期間は、栄養士養成施設の修業年限によって異なりますが最短で1年、最長で3年です。卒業してから管理栄養士国家試験まで時間があくことで、学校で学んだ知識や内容を忘れたり、管理栄養士国家試験の出題傾向が変わったりします。
令和4年に実施された管理栄養士国家試験の合格率は65.1%でした。
- 管理栄養士養成課程 新卒 92.9%
- 管理栄養士養成課程 既卒 20.5%
- 栄養士養成課程 既卒 28.8%
引用:第36回管理栄養士国家試験の結果について | 厚生労働省
上記のように、管理栄養士養成課程の新卒者以外の合格率が低くなることから、仕事と勉強の両立が難しいことがわかります。既卒者の合格率は低いとはいえ、しっかりと勉強すれば合格することは可能です。管理栄養士国家試験の合格基準は200点満点中120点とされており、6割の正答率で合格できます。勉強方法や個別に質問ができるなどの手厚いサポートがある通信講座を利用することで、効率よく実力をつけることができるでしょう。独学でも教材や過去問題集などを活用することで、必要な知識を身につけることができます。
引用:合格基準と合格率 | 公益社団法人日本栄養士会
働きながら資格を取得する方法
栄養士養成施設には短大と専門学校があり、修業年限が2年、3年、4年の学校があります。
管理栄養士国家試験を受験するには、卒業後に厚生労働省の定める施設での実務経験が必要です。修業年限によって、実務経験を積む期間が異なります。
- 修業年限が2年の場合、実務経験3年以上
- 修業年限が3年の場合、実務経験2年以上
- 修業年限が4年の場合、実務経験1年以上
修業年限と実務経験を合わせて5年です。
管理栄養士養成施設は4年制で大学と専門学校があります。栄養士養成施設のように卒業後の実務経験は必要ありません。
栄養士としてすぐに働きたい場合、修業年限が2年の栄養士養成施設が最短で卒業できます。
栄養士養成施設は修業年限と実務経験を合わせて5年必要になるため、最短で管理栄養士になるには管理栄養士養成施設を選択するのがおすすめです。ライフスタイルに合わせて進路を決めましょう。経済面での不安がある場合は、学費分割制度や奨学金制度など支援制度がある学校もあります。事前に確認しましょう。
実務経験とは、厚生労働省の定める以下の施設で栄養の指導に従事することです。
- 学校や病院などの給食施設
- 食品の加工や製造、調理や販売をしている営業施設
- 学校や幼保連携型認定こども園
- 栄養に関する研究施設
- 保健所や栄養に関する行政機関
- 栄養に関する知識の普及向上その他の栄養指導の業務が行われる施設
引用:管理栄養士国家試験 | 厚生労働省
参考:実務証明書 | 厚生労働省
職場が実務経験として認められるか心配な場合は、上司や人事担当者に管理栄養士国家試験を受験する旨を伝え、実務証明書の発行が可能か確認しましょう。
働きながら管理栄養士になるためのプランをたてる
働きながら管理栄養士になるには、2つのパターンがあります。
- 栄養士養成施設または管理栄養士養成施設の既卒者で、栄養士として働きながら管理栄養士を目指す
- 以下の学校に日中通いながら授業に支障をきたさない時間に働く(栄養士養成施設卒業後は1と同じ)
栄養士養成施設(栄養士の資格取得→実務経験を積む→管理栄養士国家試験)
- 修業年限2年の短大
- 修業年限3年の短大
- 修業年限2年の専門学校
- 修業年限3年の専門学校
- 修業年限4年の専門学校
管理栄養士養成施設(栄養士の資格取得→管理栄養士国家試験)
- 修業年限4年の専門学校
- 修業年限4年の大学
管理栄養士国家試験の試験科目は、以下の通り。
- 社会・環境と健康
- 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
- 食べ物と健康
- 基礎栄養学
- 応用栄養学
- 栄養教育論
- 臨床栄養学
- 公衆栄養学
- 給食経営管理論
引用:管理栄養士国家試験 | 厚生労働省
管理栄養士国家試験は試験科目が多く出題範囲が広いので、働きながら管理栄養士になるには限られた時間内で、勉強することが重要となります。1日にとれる勉強時間をあらいだし、年に1度の試験日に向けて学習計画を立てましょう。
【学習計画例】
- 3-11月→試験科目は9科目あるので1ヶ月に1科目ずつ学習
(社会・環境と健康、公衆栄養学のように関連性のある科目から始めると身につきやすい)
- 12月→過去問題を解く
- 1月→模擬試験を受ける
- 2月→苦手な科目を復習、昨年の国試問題を解く
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスの忘却曲線によると、個人差はありますが1度だけの学習では1時間後に56%、1日後に74%、1週間後に77%を忘れるとされています。人の脳は復習して記憶を強めることができます。音読も有効的です。
また、苦手な科目や通信講座や予備校などを活用すると効率よく学習できます。
通信講座の相場は5万円〜23万円です。資料請求や問い合わせをするとよいでしょう。
まとめ
働きながら管理栄養士になるには、仕事と勉強の両立でハードルが高く感じますが、努力次第で管理栄養士の資格を取得することは可能です。限られた時間の中で1日のスケジュールを組み、効率的な学習計画をたて、万全の状態で年に1度の管理栄養士国家試験に臨みましょう。少子高齢化の現代社会では管理栄養士の需要は高まる一方です。資格があれば職の幅も広がり、スキルアップや昇給も期待できるでしょう。
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