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急なシフト変更は違法?勤務時に気をつけるべきことの解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/09/07
更新日:2022/11/01
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目次

コロナ禍で時短営業や休業要請があり、飲食店などを中心に急にスタッフのシフト変更が起こっています。会社側もやむを得ずシフトを変更せざるを得ない状況ですが、スタッフにとっては調整が大変ですし、生活がかかっている場合は死活問題になることもあります。
この記事では、急なシフト変更は違法になるのか、急にシフトがなくなり休みになった場合は手当が出るのか、など従業員側として知っておきたいシフトに関する法律を解説いたします。

店側都合の急なシフト変更は違法か

原則として、お店や会社側の急なシフト変更は違法です。労働の契約で定められた労働条件を会社都合で変更することは法律で禁止されています。
違法となるケース

  • シフト決定後に従業員の同意がなく、休みにする。
  • 従業員の同意を得ずに、従業員に不利となる労働条件に変更する。

(勤務時間のカット、勤務日数分働かせないなど)
コロナ禍で休業要請が出たり、客足が遠のいたりして、会社側としては従業員の人数を減らしたい場合もあるかもしれません。会社にとっては、正当な理由のように思えますが、これらの理由でシフトや労働日数、労働時間を変更することはできません。やむなく変更する場合は従業員に理解してもらえるよう丁寧に説明をし、「従業員の同意」を得なければなりません。
シフト制の中でも変形労働時間制の場合は、元々、繁忙期と閑散期で業務量に差があるため、シフトの組み方自体も変則的になりがちです。しかし、変形労働時間制であっても初めから決められたシフトのまま遂行される場合は問題ないのですが、急な変更は原則として認められていません。
もちろん、天災やお店の設備の故障など避けられない理由で業務の遂行が難しい場合については、正当な理由となります。適切な手続きを踏んだ上で、急なシフト変更(休業)などは違法にはなりません。

急なシフトカットは休業手当の対象になる

会社都合でシフトを変更する場合は、従業員の同意が必要です。従業員の同意が得られた上で、休業手当を支払う必要があります。
労働基準法第26条によると、「休業手当とは、会社側の都合(使用者の責に帰すべき事由)により、 労働者を休ませた場合に支払わなければならない、 平均賃金の6割以上の額の手当」と書かれています。
休業手当の支払いが必要な場合

  • 営難による休業(親会社の経営が悪い場合も含む)
  • 業務量の減少に伴う休業

休業手当の支払いが不要な場合

  • 天災事変のような不可抗力によるやむを得ない休業

(地震、洪水、落雷などの自然災害や、計画停電、緊急事態宣言による休業、コロナに感染した従業員の休業など)
※コロナに感染した従業員の休業については、休業支援金・給付金の対象となるケースがあります。
では、休業手当はいくら支払えばよいのでしょうか。休業手当は以下の式で計算します。
休業手当 = 平均賃金 ×0.6以上(※) × 休業日数
※労働基準法においては、休業手当について、平均賃金の6割までを支払うことが義務付けられています。6割というのは最低限のラインであるため、従業員が安心して休めるように6割以上(10割)支払うのが望ましいとされています。なお、休業手当を支払った場合、支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。(厚生労働省資料より)
また、平均賃金は労働基準法第12条によると、「算定すべき事由の発生した日以前の3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と定められています。
平均賃金=算定期間中の賃金総額÷3か月間の総日数(※)
※算定すべき事由の発生した日(=休業日)の前日から3か月間。ただし、賃金締切日がある場合には、直前の賃金締切日から3か月間

なお、次の期間の日数及び賃金は控除して計算します。

  • 業務上の負傷・疾病の療養のための休業期間
  • 産前産後の休業期間
  • 使用者の責に帰すべき事由による休業期間
  • 育児・介護休業期間
  • 試みの使用期間

日給制・時給制・請負給制の場合は以下のように計算します。

①平均賃金=算定期間中の賃金総額÷3か月間の総日数
②算定期間中の賃金総額÷算定期間中に労働した日数 × 0.6
①の式と②の式で算出した額を比較し、より高かった額が平均賃金になります。
引用資料:厚生労働省 休業手当について

休業手当と休業補償の違い

休業手当は労働基準法第26条に「会社側の都合により労働者を休業させた場合、休業させた所定労働日について、平均賃金の6割以上の手当(休業手当)を支払わなければなりません。」と記載されています。
一方、休業補償は労働基準法第76条に「労働者が第75条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行なわなければならない。」と記載されています。なお、第75条は療養補償(労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。)についてです。
つまり、休業手当は会社側の都合や責任で従業員を休ませた場合に支払う手当です。急なシフト変更や休業に伴い、従業員の最低限の生活を保障するために支払うのが目的です。会社側の都合以外にも、業務上の負傷や疾病による休業、産前・産後・育児・介護による休業においても休業手当は支払われる可能性があります。また、自然災害などによって事業所や作業場所が被災して稼働できず、休業せざるを得ない場合は休業手当の対象になります。
一方、休業補償は、業務上の負傷や疾病に対する治療費だけではなく、休業せざるを得なくなった分の予定賃金も併せて給付されます。休業補償は、労災保険から支払われる補償です。休業補償は所得扱いにならないため、給付を受けた補償金額には所得税は課されません。

急なシフト変更をする際の注意するポイント

急なシフト変更を会社側の都合で行うことは原則として認められていません。しかし、どうしてもやむを得ない事情がある場合は、スタッフの個々の事情を考慮しながら、シフト変更の理由を説明をします。スタッフが納得して変更に応じてくれた場合はシフト希望を聞き、できるだけ希望に沿った変更を行います。
会社側の都合でシフト変更を行う場合はスタッフの同意が必要なので、必ず事情を説明しなければなりません。シフト変更の同意が得られない場合は休業にして、十分な手当を支払うことで納得してもらえることもあるので、お互いが納得する形でシフト変更を行いましょう。また、休業にした場合は手当についても事前にきちんと知らせて納得してもらう必要があります。

トラブル回避のためにやるべきこと (労働条件通知書の確認、コミュニケーションなど)

急なシフト変更や休業で困るのは従業員です。適切な手続きで、かつ納得してもらえない場合、不満が募り、トラブルにもつながりかねません。
やむを得ない場合は、労働条件通知書を再度確認し、従業員とも密にコミュニケーションをとって、従業員が納得する形でシフト変更や休業を行います。会社都合で休業したのに十分な報酬が得られず、生活ができないとなると大問題です。労働基準法に則り、裁判沙汰になることもあります。
会社側はトラブルを回避するために、十分すぎるくらいの説明と誠意をもって対応することが重要です。

まとめ

会社都合で、急なシフト変更や休業要請は法律違反となってしまいます。コロナ禍で休業を余儀なくされたという飲食店等も多いですが、休業する場合は従業員への休業手当を支払う義務が生じます。シフト変更の場合も、できるだけ従業員への負担が少なくなるように考慮しましょう。従業員に説明して納得、同意してもらうことが一番大切です。

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