居酒屋を開業するには開業資金の内訳と必要な届けの解説
目次
居酒屋を開業するにあたっては事前に取得すべき資格があります。また、店舗を構える場合はそれなりの資金も必要です。この記事では、居酒屋開業前に準備しておきたい資格や開業資金、開店前にするべきことについて解説します。
居酒屋を開業するためには
居酒屋の開業には、食品衛生責任者などの配置や、保健所や税務署への申請など、様々な手続きが必要になります。
開業の手順
居酒屋の開業にあたっては、コンセプト設計→物件選び→資金調達→資格取得・届出申請が必要となりますが、ここでは各所へ必要な届け出について解説します。
- 開業届…店を開業するのに、税務署で国税庁へ届出る必要があります。開業後1ヶ月以内に届け出しましょう。
- 飲食店営業許可証…食品を調理提供する飲食店に必要な許可証です。保健所で申請を行います。申請には「食品衛生責任者」の資格も必要となります。
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届…午前0時から日の出まで酒類を提供する飲食店のうち、接待やダンスをしない店舗において必要な届出です。警察署へ届け出します。
上記3つの届け出の中でも、飲食店営業許可に関しては、書面の届け出だけではなく、衛生面や安全面で問題がないかという保健所の立ち入り審査も行われます。審査に不合格となった場合は、該当する部分の手直しが必要になります。
開業に必要な資格
開業するにあたって、店舗に「食品衛生責任者」と「防火管理者」の配置が必要です。
食品衛生責任者は、店舗に必ず1名配置するよう法律で定められています。この資格は短期間の講習を受講すれば取得可能です。全国各地で開かれている食品衛生責任者養成講習に早めに参加しておきましょう。しかし、栄養士・調理師・製菓衛生士などの資格を所持している方は、食品衛生責任者の講習を受けなくとも飲食店を開業できます。
防火管理者に関しては、店舗の収容人数が30人以上になる飲食店では、配置が定められています。防火管理者には、甲種防火管理者と乙種防火管理者の2種類があり、この講習は月に1回程度、各市町村の防火センター等で実施中です。詳しくは防災協会に問い合わせを行いましょう。
開業資金の相場と内訳
居酒屋を開業するためには、まとまった資金が必要になります。開業にかかる費用は、大きく分けると「店舗取得の前に必要な費用」と「店舗取得の後に必要な費用」の2種類があります。
居酒屋の開業に必要な資金の合計は、平均で600万円前後と言われています。この金額は、立地や店舗の広さによっては1,000万円ほど必要になる場合や、居抜き物件を利用して平均以下の資金になる場合もあります。
【店舗取得の前に必要な費用】
- 保証金・敷金…借り主の賃料滞納などが発生した際、滞納分を担保するために預けるお金です。退去時に補修費用等を差し引いて返還されます。賃料の10ヶ月ほどが一般的ですが、物件よって変動します。24ヶ月と高額な設定になっている物件も存在します。
- 礼金…物件を借りるときに、貸主へお礼として払う費用です。退去時には返還されません。家賃の1~2ヶ月分が相場になっていますが、地域によっては礼金がかからない物件がほとんどという所もあります。
- 仲介手数料…不動産業者に支払う手数料です。家賃の1~2ヶ月分が相場です。
- 造作譲渡料…居抜きの場合は必要となります。店舗に残っている設備の内容によって変動します。
【店舗取得の後に必要な費用】
- 内外装費用…内外装工事にかかる費用です。
- 厨房機器費用…厨房機器にかかる費用です。
- 家具・食器費用…食器棚・テーブル・椅子・レジ台・食器類などにかかる費用です。
- 求人募集費用…従業員の募集にかかる費用です。掲載媒体によって大きく変動します。
- レジ費用…POSレジ導入などにかかる費用です。
- その他費用…テイクアウト容器、パソコン、タブレットなどの購入にかかる費用です。
- 運転資金…経営が軌道に乗るまでの予備資金です。
店舗取得の後にかかる費用は、どのような物品を購入するかによって大きく変動します。開業資金を抑えるには、この費用をいかに抑えるかが重要です。
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開業資金を抑えるためには
高額な開業資金がかかる居酒屋ですが、開業資金を抑える方法はいくつかあります。
まず、飲食店をそのまま引き継いでいる居抜き物件を借りることです。以前のお店からそのまま残されている内装や、厨房の設備などをそのまま使用できるため、初期投資を抑えることが可能になります。ただし、居抜き物件の中には造作譲渡料の支払いを求められることがあるので、注意が必要です。
居抜き物件にはデメリットもあり、前の店舗が閉店した何かしらの理由があることや、経年劣化などで既存の設備が使えないことがあり、かえってお金がかかる可能性もあるということもあります。立地・集客・賃料など、極端に借りる側に不利だったり、必要のない設備の撤去費用が発生したりという危険性も考慮が必要です。
もう一つ開業資金を抑える方法として、DIYがあります。自力で内装や外装工事をして、工事費用を大幅に節約できる点が、最大のメリットと言えます。お店への愛着が深まることもメリットです。店舗内装を自分で行うと、自分なりのこだわりを追求することができ、細かい部分についても、工事をしながら考えることも可能になります。
こちらもデメリットがあり、余程の専門知識・技術がなければ、自分ひとりで工事を行うことは不可能です。全てをDIYしようとするのは得策ではなく、自分でできない部分は業者に依頼する必要があります。特にインフラ周りの施工に関しては資格が必要な工事もあり、難易度が非常に高いものもあることから、コストはかかりますが業者への依頼も必要です。
資金調達の方法
居酒屋の開業にあたって、資金調達の方法はいくつかあります。
日本政策金融公庫や、地方銀行・信用金庫の制度融資、クラウドファンディング、血縁・親族関係からの資金調達などが挙げられます。なかでも、日本政策金融公庫の飲食店開業資金融資は、メリットが多いとされています。利率が低く、無担保無保証で融資が受けられます。
近年では、クラウドファンディングも資金調達をする手段として注目されています。いままでの銀行や金融機関から融資を受ける場合などは、煩雑な手続きが必要で、実績のない人は審査に通ることが難しいという問題がありました。その点、クラウドファンディングの場合では、支援者の数を確保して、目標金額を達成することが出来れば、開業することができます。支援者を集めることは簡単ではありませんが、SNSなどを通じて全国から支援者を集めることができることから、従来の融資や親族からの資金調達に比べて容易に開始でき、並行して開店前から店舗の宣伝をできるというメリットがあります。
ほかにも助成金制度がありますが、助成金はおおよその目安として受け取るまでに申請から1年はかかります。開業後の運用資金としては活用できますが、開業前の資金として使うことは出来ません。
居酒屋経営を成功させるために
コンセプト
居酒屋の開業においては、コンセプトがあることで、さまざまな要素をコンセプトと関連づけて考えることができるので統一感が保たれますが、コンセプトを決めないままでは、メニューなど、具体的な要素を決める際に店名と内装の印象がバラバラになってしまいます。コンセプトがしっかりしていることは、お客様にもメリットがあります。コンセプトが定まっていることで、その店舗の価値をダイレクトに知ることができるため、店舗とお客様の価値観が合致すれば、リピーターへとつながる可能性が高くなると言えるでしょう。
出店地選び
出店地は、ターゲットにする客層などで変わってきます。たとえば、会社帰りの人を集客したいならオフィス街近くの駅前に出店したり、いつも常連客で賑わっているアットホームな居酒屋を目指すのであれば、土地勘のある地元の地域を選んだりと、ターゲットによってポイントが異なります。
また、営業時間が遅くなる居酒屋の場合、夜に賑わう地域の方が集客しやすい立地といえます。周囲の飲食店の閉店時間を確かめておくと良いでしょう。
さらに、居酒屋でアルコールを提供する上で、お客様の帰りの交通手段も重要になります。お酒を飲むと車の運転は出来ませんので、なるべく駅に近い立地や、タクシーや代行など帰りの交通手段を確保しやすい場所が良いといえます。
メニュー構成
メニューは、すでに設定しているコンセプトから離れないようにすることが大前提です。お客様は自分に合う・好きだと思う店のリピーターになりますので、魅力的なコンセプトがブレることがないように、一貫したメニュー作成をしましょう。
メニューを作る際には、絶対に注文してほしい「看板メニュー」、追加注文しやすい「定番メニュー」、セット販売やシメで「稼げるメニュー」の3つを上手に構成すると、バランスが良くなるとされています。
ここで注意したいのが、あれもこれもとたくさんメニューを増やしすぎて「何でも屋」になることは避けましょう。メニュー数を増やしすぎるとコンセプトがブレてしまったり、オペレーションや食材の管理が大変になったりとデメリットが多いです。メニュー数をあらかじめ絞ることで、仕込みの手間・廃棄ロス量も抑えやすくなります。
まとめ
居酒屋の開業にあたっての流れや資金調達の方法について解説してきました。開業資金に関してはあくまで目安になりますので、どのようなお店を作っていくかによって大幅に変わってきます。飲食店の開業に関しては、一人で全てを行うのは難しく、内装業者や保健所など、様々な人とのかかわりは必須です。その中で相談できる人や機関を見つけて、開業準備を進めていきましょう。
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