シェアキッチンとは 営業許可の取り方の解説
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独立や開業に興味がある人が選ぶ業種の常に上位にいる飲食業界ですが、約70パーセントの飲食店は1年以内に閉店すると言われています。飲食店は開業に多額の初期費用がかかり、営業許可の取得などにもとても手間がかかります。苦労をしてようやく開業したにもかかわらず、1年も持たずに閉業してしまうという店舗も多い中、初期費用を抑えて開業できる「シェアキッチン」の需要が高まってきています。この記事では、シェアキッチンとは何か、シェアキッチンのメリットやデメリットを解説します。
シェアキッチンの営業許可取得方法
シェアキッチンの営業許可を所得するには、通常の飲食店の営業許可を取得する以上に、しなければならないことが多くなります。通常は店舗を営業する本人が営業許可に関する手続きと実際の営業を行いますが、シェアキッチンの場合はテナントを又貸しして、他の人が営業する形になります。後々のトラブルを避けるためにも、転貸の条件や、備品の修繕や光熱費など、契約について細かく取り交わす契約書の用意なども必要になってきます。
シェアキッチンとは
「飲食店営業」と「菓子製造業」の営業許可を取得できるキッチンスペースのであることが前提のテナント事を指します。菓子製造許諾と、飲食店営業許諾を持った施設で、食品衛生管理者の資格を持った方が利用すれば、厨房で作った食品を販売できる施設になっています。
「レンタルキッチン」、「コラボカフェ」、「クラウドキッチン」などとも呼ばれており、様々な飲食店の業態で使用されています。基本的に料理に必要な設備が完備されているため、自分で準備する必要がないのもシェアキッチンの特徴になります。
最近の飲食業界でも注目されており、すでに飲食店として営業している店舗のクローズ時間や、週末のみ、特定の曜日のみ「間借り」する形で営業しているというケースもあります。
シェアキッチンの営業許可取得に必要なこと
物件オーナーの許可
使用予定のテナントが賃貸物件の場合は、間借りは又貸しという扱いになりますので、物件のオーナーに無断で営業を行うことはできません。事前に物件のオーナーの承諾を得る必要があります。
さらに、後々のトラブルにならないように、転貸の条件、備品の修繕や光熱費など、契約については最初に物件のオーナーへ確認する際に細かく取り交わしておきましょう。
食品衛生責任者
シェアキッチンで営業許可を取る場合であっても、通常の飲食店の開業と同様に「食品衛生責任者」を置く必要があります。食品衛生責任者とは、食品の提供が衛生的に行われるように、調理や管理が行える人材のことを指します。
食品衛生責任者を設置していれば、調理師資格の有無は問わずに調理したものの販売を行うこともできるので、営業許可申請の際に必要になります。
食品衛生責任者の資格を得るためには、自治体の講習を受講する必要があります。自治体によって異なりますが、調理師や製菓衛生師、栄養士などの有資格者は、食品衛生責任者の講習を受けることなく申請できる場合もあるので、確認しましょう。
食品衛生責任者資格は、以下の手順を経て設置の手続きを行います。
- 営業施設のある市区町村の保健センターに「食品衛生責任者設置状況届」を提出する。もしくは、これから講習を受ける場合は「食品衛生責任者講習会受講申込書」を提出する。
- 受講日時や場所などの通知が受講日の約1週間前に届く。
- 講習会に参加する。
- 講習会終了後に受け取る食品衛生責任者プレートに、氏名や講習会終了年度を記載・添付して店内に掲示する。
キッチンの条件を満たす
飲食店として営業をするには、店舗内の設備を保健所の基準に合わせる必要があります。
まず、客席がある場合は、厨房と客席スペースは物理的に区切らなくてはいけません。 区切りとして使用するのは、スイングドアやウェスタンドアのような簡易的なもので構いませんが、ドアを開放した状態で固定すると許可が下りないので注意が必要です。
トイレなどに設置される手洗器にも、厳しい基準が定められています。従業員用とは別に、お客様用のトイレを設置すること、規定のサイズであること等があります。手洗い器は衛生上とても重要な設備の1つですので、施設検査では厳しくチェックされます。
キッチンの流しは原則として2槽必要となります。食料品を洗う流しと、食器を洗う流しを別に用意することで、食べ物に洗い物の汚れた水がかかってしまったり、洗剤が付着してしまったりするのを防ぐことができます。そして、1槽の大きさにまで細かい規定があり、施設検査では寸法を測ってチェックされることもあります。
このほかにも、床面やゴミ箱などたくさんの基準があります。どのような基準が求められているのか、自分の店舗が基準を満たしているかわからない場合は、申請前に保健所へ確認が必要になります。
飲食店営業許可
飲食店営業許可を取得しておかなければ、飲食店の営業を開始することができません。使用するキッチンの「飲食店営業許可」の有無は確認し、営業開始前までに取得する必要があります。申請は各自治体の保健所にします。
この許可を得るためには「人」と「店舗」の2つの要件があります。
人に関する要件として、申請者が資格取得に影響する要件に該当していないことが挙げられます。
「営業許可の申請をした人が過去に食品衛生法違反で処分を受けてから2年経過していない」、「店舗の営業許可を取り消されてから2年経過していない」という場合は保健所から営業許可をとれません。
店舗に関する要件として、すでに紹介した食品衛生責任者と、キッチンの条件を満たしていることが必要になります。
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シェアキッチンのメリット
シェアキッチンには、開業をしやすいことや、開業をしてからも様々なメリットがあります。
開業、閉業にかかる費用が抑えられる
シェアキッチンは、初期費用が抑えられるという点が最大のメリットであると言えます。
一般的な飲食店の開業にかかる費用は、数百万円から1000万円程度必要だと言われていますが、シェアキッチンであれば数十万円から300万円程度で開業できたり、月額制でレンタル費用の支払いができたりする店舗もあります。自分で物件や設備を購入することがないため、初期コストを大幅に抑えることが可能です。
また、万が一、経営が上手くいかず閉業するという場合にも、通常は原状回復や退去の費用、様々な手続きなどが発生します。この場合も、シェアレストランでは原状回復工事を行う必要がなく、持ち出す備品も最小限に済むため、最低限のリスクで撤退することができます。
短期間の出店をシェアキッチンで行って、複数の業態を試したり、テストマーケティングを行ったりという試験的な利用をするということも可能になります。
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情報、スキルの共有
シェアキッチンを共有している同業者と協力することで、スキルの共有ができるというメリットもあります。
調理の技術的な面だけでなく、自分が提供しているメニューとは異なる、多種多様な料理を提供している事業者と関わることで、今まで使わなかった食材の可能性を知ることが出来たり、異なるコミュニティとの接点が出来たりすることもあるようです。
また、メニューだけではなく、効率の良いオペレーションなどのアイデアも共有できるので、自分一人で営業していた時には知ることができなかった情報を得られるのもメリットになります。
相乗効果で集客アップ
間借り営業の場合、既存の店舗と、間借り店舗とで、双方の店舗の宣伝ができ、認知度が高まり集客・ターゲット層の拡大にも繋がります。既存の店舗側からすると、間借り店舗に来たお客様が、自分の営業時間にも足を運んでくれる、という相乗効果も期待できます。
シェアキッチンのデメリット
たくさんのメリットがあるシェアキッチンですが、もちろんデメリットもあります。
時間のやり繰り
間借り営業を行う場合、既存の店舗の準備から開店に間に合うように撤収する必要があります。お客様が途切れないからもう少し営業時間を延ばしたいときや、閉店業務に時間がかかってしまったときでも、既存の店舗の営業時間に割り込むことはできません。
また、時間制でスペースを貸し出しているレンタルキッチンは、キッチンのオーナーがあらかじめ利用終了時刻に合わせて清掃業者の手配を行っている場合があります。レンタルの時間を超過してしまうと、清掃員の再手配が必要になったり、次に予約をしている人がいたりという場合、少しでも延長が出来ないということもあります。時間の制約は、かなり窮屈なものであることは、残念ながら否めません。
スペースの制限
冷蔵庫などの食材を保管するスペースは、基本的に既存の店舗で使用する食材が保管されているため、間借りする側が食材保管に使えるスペースは限られます。提供する料理やドリンクを共用することができない分、スペースの問題は事前に相談する必要があります。
また、食器類は共用できるのか、出来ない場合は持参したものをどこに置けるのかも相談しておかなければ後々のトラブルにもつながりかねません。
まとめ
シェアキッチンは初期費用が抑えられ、最低限のリスクで飲食店の営業がスタートすることができます。しかし、金銭面でのメリットが多い分、営業時間やスペースの制約などのデメリットもあります。
様々な条件を考慮して、シェアキッチンの利用を始めてみるとよいでしょう。もしも撤退をしたい、思っていたように経営が出来ないと思っても、比較的簡単に撤退できるというメリットがありますよ。
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