飲食店における助成金の種類と補助金との違いの解説
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飲食店の経営にあたり、資金繰りに頭を悩ます方は多いのではないでしょうか。店舗運営には経費や広告代、人件費など何かとお金がかかります。また改装が必要になった場合には、大きな資金が必要となります。自己資金や融資以外にも、助成金や補助金を活用すればやりくりが楽になるでしょう。この記事では助成金と補助金の概要と、飲食店が活用できる助成金と補助金の種類、ならびにコロナ禍における支援策について解説いたします。
飲食店における助成金、補助金とは
助成金と補助金は、国や地方公共団体などが実施する原則返済不要の支援制度です。補助金には審査があり、必ず受給できるとは限りませんが、助成金は条件を満たすと受給できます。また、どちらも後払い制となるため開業前に受け取ることはできません。したがって開業前には自己資金や融資などで資金調達しておく必要があります。
助成金
助成金は主に、安定した雇用の実現や、多様な働き方のニーズに対応した就業環境づくり、労働環境の整備などを目的とした制度です。国の政策の一環として、中小企業や個人事業主が申請できるさまざまな制度が用意されています。厚生労働省の定める要件を満たせば、ほとんどの場合給付されます。給付額は補助金よりも少ないですが、該当する制度があれば申請して助成金を有効活用しましょう。
補助金
補助金は国や地方公共団体などの政策促進に向けて、あらゆる分野で募集されており、企業や個人事業主をサポートする制度です。申請したら受給できるわけではなく、事前の審査と事後の検査によって補助の有無や補助額が決まります。また、コンペ形式のため予算の関係上競争率が高くなる傾向にあります。申請にあたって、事業計画書や経費明細書などの書類を提出する必要があるので、事前準備を入念に行いましょう。
補助金受給までの大まかな流れは申請→採択→事業の実施→補助金の交付となり、申請してから受給できるまでに時間がかかります。
飲食店のための助成金や補助金の種類について
特定求職者雇用開発助成金
就職が困難な60歳以上〜65歳未満のシニア層の方や、障害のある方、シングルマザーなどの求職者を雇用した場合に助成されます。厚生労働省の定める支給要件を満たす必要があります。
給付対象者
雇用保険の適用事業主
助成額
30万円〜240万円
対象労働者と所定労働時間によって異なります。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用労働者等と呼ばれる契約社員やパート、アルバイトの方のキャリアアップ促進のため、正社員として雇用した場合に助成される制度です。キャリアアップ助成金の申請には実施の前日までに「キャリアアップ計画」の提出が必要となります。
給付対象者
雇用保険の適用事業主
助成額
1人あたり57万円、生産性の向上が見られた場合は72万円
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者が作成した経営計画に基づき行う、販路開拓などの取り組みを支援する制度です。
対象者
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) の場合、常勤の従業員が5人以下の小規模事業者。
対象となる経費
店舗改装費や広告費、ウェブサイト関連費など。
補助上限額と補助率
- 上限額50万円
- 補助率2/3
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは、経営革新のためのサービス開発や試作品開発などの取り組みを支援する制度です。
対象者
基本要件を満たす中小企業・小規模事業者
対象となる経費
機械装置・システム構築費、運搬費、外注費など
補助上限額と補助率
- 一般型の通常枠の場合750万円~1,250万円(上限額は従業員数により異なります。)
- 補助率は1/2、小規模事業者は2/3です。
IT導入補助金
IT導入補助金とは中小企業、個人事業主がITツールの導入にかかる経費を支援する制度です。飲食店ではセルフオーダーシステムやウェブ予約システム、POSレジなどの導入によって業務の効率化が図れるでしょう。
対象者
- 資本金額5,000万円以下で従業員数または100人以下の中小企業者
- 常勤の従業員が5人以下の小規模事業者
対象となる経費
ソフトウェア費、1年分のクラウド利用料、導入関連費
補助額と補助率
- A類型:30万円~150万円未満
- B類型:150万円~450万円以下
- 補助率は1/2
その他の飲食店に対する支援策について
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、コロナ禍により休業や時短営業した場合に、従業員の雇用を維持するために支払う休業手当の一部を給付する制度です。
対象者
厚生労働省の定める条件を満たす全ての業種の事業主
助成上限額
1人1日あたり9,000円、業況特例と地域特例に該当する場合は15,000円
助成率
大企業:解雇などした場合2/3、雇用維持の場合3/4
中小企業:解雇などした4/5、場合雇用維持の場合9/10
業況特例と地域特例に該当する企業:解雇などした4/5、場合雇用維持の場合10/10
事業復活支援金
事業復活支援金とは、コロナ禍により売上が減少している中小法人等や個人事業者などを対象とした事業の継続や立て直しのための取組を支援する制度です。
対象者
条件を満たす中堅・中小法人、個人事業主など
給付額
個人事業主:事業収入減少率が50%以上の場合50万円、事業収入減少率30%以上50%未満の場合30万円
法人(年間事業収入1億円以下)
事業収入減少率が50%以上の場合60万円、事業収入減少率30%以上50%未満の場合100万円
法人(年間事業収入1億円超5億円以下)
事業収入減少率が50%以上の場合90万円、事業収入減少率30%以上50%未満の場合150万円
法人(5億円超)
事業収入減少率が50%以上の場合150万円、事業収入減少率30%以上50%未満の場合250万円
【東京】飲食事業者向け経営基盤強化支援事業
東京都内の飲食店の事業主を対象に専門家派遣支援をおこなう事業。専門家による現地調査や助言をもとに利益の確保に取り組む経費の一部を助成する制度です。厨房の機材購入費や厨房や店舗の工事費、広告費などが助成対象の経費となります。
対象者
東京都内の店舗で飲食業を営む中小企業者で、専門家派遣を受けた事業者
助成限度額
200万円
助成率
2/3以内
【熊本】新型コロナウイルス感染症緊急空き店舗対策事業費補助金
熊本市が実施する支援制度。コロナ禍により増加した商店街の空き店舗で出店をする小売業、飲食業、サービス業のいずれかを営む場合、出店にかかる経費の一部を補助するものです。
対象者
熊本市の定める条件を満たす中小企業者
補助限度額
路面店:40坪未満150万円、40〜60坪未満200万円、60坪以上300万円
路面店以外の地下1階から地上2階の店舗:100万円
補助率
1/2
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まとめ
何かとお金のかかる飲食店の経営は、自己資金や融資だけではなく、助成金と補助金を有効活用しましょう。資金調達の解決策のひとつとして、助成金と補助金は大きな助けとなります。どのような支援制度があるのかを調べて、該当するものは申請しましょう。助成金と補助金の性質の違いを把握して、事前準備をしっかりすることをおすすめします。助成金と補助金の申請には多くの書類が必要となります。不明な点が多い場合は行政書士や社労士に相談するとよいでしょう
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