飲食店のマニュアル作成方法とポイントの解説
目次
飲食店の経営において、多くの場合は接客や調理を行う人員を雇うことは必須になります。そして雇った人員を教育していく必要がありますが、その際に、マニュアルは従業員を含めた店全員で共通の接客認識を持つために重要なツールとなります。この記事では、マニュアル作りのポイントや、必要なマニュアルの種類を解説します。
飲食店 マニュアル作りのポイント
飲食店において、マニュアルは従業員へ共通認識を持ってもらうために必須です。トラブルがあった場合でも落ち着いて対応でき、スタッフ全員が同じ対応をすることで、接客や料理の質のばらつきをなくすことができます。
マニュアル作成で得られるメリット
しっかりとしたマニュアルを作成しておくことで、従業員への指導もしやすくなり、様々なメリットを得ることが出来ます。
接客の質やマナーの統一、維持
共通のマニュアルで接客やマナーを学ぶことで、従業員同士の認識を統一し、質を落とさないように維持することが出来ます。マニュアルがない状態で接客をすると、従業員それぞれが独自に考えた接客をしてしまうことになり、「あの店員はしてくれたのに、あなたはできないのか」「昨日はこう言っていたのに、今日はどうして言っていることが違うのか」といったお客様からの苦情などにもつながりかねません。従業員の個々の判断での対応は、お店のサービスの品質に偏りが出てしまい、お店の信用やブランディングにも影響を与えてしまいます。マニュアルに沿った接客を行う事が、偏りを防ぐことにつながります。
人材育成の労力の短縮が可能
人材育成に関しては、個別・集団のどちらで行う場合でも、口頭での指導が中心になる場合は、人によって説明の仕方が異なったり、説明されたことを忘れてしまったりすることがあります。こういった場合に、明文化されたマニュアルにもとづいて説明することで、誰が教えても共通の内容になります。時間が足りずに教えられなかった内容についても、「マニュアルを読んでおくように」という指示を出すことが可能です。マニュアルを使って教育すれば、特に新人スタッフに対しての教育がしやすいというメリットがあります。
事前にマニュアルを配布しておき、熟読してもらった後に実際の研修を行う事で、人材育成の時間短縮も可能です。
従業員が自ら学べる
マニュアルを用意しておくことで、忙しい営業中などで上司や先輩に確認したくても確認する時間が取れないという場合に、自分で確認できたり、マニュアルを持ち帰って業務の復習をしたりということも可能になります。
また、マニュアルがあることで、振り返りをしやすくなります。教えてもらっていたものの忘れてしまった内容をマ復習したり、これから教わることを予習したりすることもできます。
店舗のコンセプトや方針を共通認識できる
店舗ごとに存在するコンセプトや方針は、従業員が共通認識を持てていなければ実現が難しくなります。
接客の質やマナーの統一をしていくのと同様に、コンセプトと方針の周知を徹底して教育するとともに、いつでも復習できるようにマニュアルに組み込みましょう。
トラブル発生時に素早い対応ができる
飲食店では、様々なトラブルが発生することも多く、突発的な事態に対応できるようにトラブル対応のマニュアルも準備しておく必要があります。トラブル対処のルール、誰に指示を仰げば良いのか、過去に発生したトラブルの例や、想定できるトラブルと具体的な対処方法について明記しておくことで、対応までのスピードを速められます。
飲食店のマニュアルの種類
オペレーションマニュアル
調理のスピードや、料理のクオリティを安定させて提供できるように、オペレーションのマニュアルには、調理工程のフロー、食材の管理方法、仕込みや効率的な調理順序について記載する必要があります。料理を作る工程については、特に詳しく記載しておきます。材料や調味料の分量だけでなく、食材の取り扱いで気をつけるべきことや、調理済みのソースなどの使用期限の目安、盛り付けの図なども用意しておくと効率的です。厨房の全員が素早く料理を仕上げられるようにするには、料理の工程を簡素化しておく必要もあります。
調理のオペレーション以外にも、厨房機器や調理道具の取り扱い方法、清掃方法、ゴミ出しのルールなども周知しておく必要性があるので、マニュアルに組み込みましょう。
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接客マニュアル
接客マニュアルは、接客業務のフローについて重点的に記載します。接客の質を統一して、一定のクオリティを維持するためのもので、効率よくスタッフを教育する上でも重要になります。接客の基本となる身だしなみや、お客様のお出迎えとご案内方法、メニューの出し方、オーダーの受け方、料理の提供方法などを細かく記載しましょう。
また、接客の担当は、お客様との会話も必然的に多くなることから、お客様からのよくある質問とそれに対する答えを記載しておくと、スムーズな受け答えがしやすくなります。
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緊急時対応マニュアル
飲食店は、飲食物の提供と接客と伴うことから、トラブルも多い傾向があります。トラブルに対して事前に予想しておけば、問題なく乗り越えることもできますので、考えうるトラブルに関してはマニュアルに記載しておきましょう。緊急時の対応マニュアルが必要なものとして「クレーム対応」「災害時対応」は最低限必要です。飲食店のクレームとしては、従業員の接客に対してや、提供した飲食物への不満などがあり、中には店の責任ではないようなクレームを言ってくるお客様もいます。そうした場合でも、感情的にならずに、落ち着いて言葉を選びながら対処する必要があります。場合によっては謝罪や、料金を頂かない、食事券を渡すなどの対応を記載しておきます。災害時対応のマニュアルは、地震や台風といった「自然災害」と、火災のように人為的なミスが原因の「人災」を考慮して作成します。地震や台風、火災のときに、どう行動すればいいのかをまとめたマニュアルをつくりましょう。この時、防災責任者も決めます。災害時に指示をする人がいないと、店内はパニックに陥ります。防災責任者を決めておき、万が一のときはその人の判断に従うようにしましょう。防災責任者が休みの場合の、代行者も決めておくと安心です。また、災害時は交通機関が麻痺したり、崩れた建物で道がふさがったりして帰れなくなることがあります。場合によっては、お店でそのまま過ごさなければならなくなる可能性もあります。そのような場合に必要な毛布、食料や水、救急用品などを用意しておく必要もあります。
そして、飲食店では店長など責任者が出勤していなかったり、出張でいなかったりという場合もあります。そうした場合に誰が責任者になるのか、責任者の不在時に問題が起こったらどうすればよいか、緊急連絡先も含めてマニュアルに書いておきましょう。
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マニュアル作成の流れとポイント
目的とルールを明確にする
マニュアル作成のポイントとしては、まずすべてのポジションの一日の業務フローをすべて書き出します。その後業務を整理し、それぞれの業務のルールを決めましょう。この時、一般的なルールだけでなく、すでに暗黙の了解となっている細かいルールについても明確に記載しておきます。
1日の業務のすべてと合格ラインを決める
1日の業務を整理し、それぞれの業務の合格ラインを決めておくと、一定のクオリティを維持しながらサービスの提供を行えるようになります。業務ごとに評価の基準を明確にしておき、チェック項目を決めておくと合格ラインをクリアしているのかわかりやすくなります。
目次と本文を作成する
マニュアルの中で探したい項目にすぐたどり着けるように、目次を作成しましょう。目次を整理しておかなければ、必要な情報を得られるまで余計な時間がかかってしまいます。
完成後、改善を繰り返す
マニュアルの作成は、完成して終了ではなく、随時ブラッシュアップを行いながら、より効率の良い業務の進め方に変更していく必要があります。完成したマニュアルはスタッフに見せて確認してもらい、全員が理解しやすい内容になっているかチェックします。この時に、人によって正確に理解できていないことが判明した場合には、記載内容を見直すことも大切です。飲食店のマニュアルは、状況に合わせて定期的に見直すために、月に1回、年に3回、と期間を区切って見直して改善していく設定にしておくと良いでしょう。
マニュアル作成の際の注意点
定期的な見直し
マニュアルは一旦完成したとしても、従業員の意見や世間の状況を取り入れて、定期的に見直しをしましょう。「もっとこうしていったら良くなる」「こうしたほうがわかりやすい」という改善点を更新していき、よりよいマニュアルにしていくことで、一層の業務の効率化を図ることができます。
縛られ過ぎず臨機応変に
飲食店ではイレギュラーなトラブルが起きることも多く、作成したマニュアルでは対応しきれなかったり、場合によってはマニュアル通りの行動をとらないほうが良かったりするという場合も出てきます。柔軟な対応をとり、特例として対応したパターンもマニュアルに追記していくと良いでしょう。
いつでも誰でも確認できるよう配置
マニュアルが必要になるのは、多くの場合、対応がわからなくなったり、緊急事態になったりした時です。従業員全員がどこにマニュアルがあるか把握し、急いでいても手に取りやすい場所に配置しましょう。
まとめ
飲食店経営において、マニュアルの準備が重要になってくることを解説しました。マニュアル作成は時間のかかる作業ですが、スタッフ教育にかける時間を大幅に削減でき、接客の質を統一することもできるといったメリットも多くあります。定期的にマニュアルを見直し、経営者と従業員で作り上げていくことで、よりよい店舗運営ができるようになるでしょう。
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