山形県の郷土料理について レシピや特産品も合わせて紹介
目次
山形県は東北地方に位置し、西側を日本海に面する県です。
奥羽山脈(おううさんみゃく)と朝日連峰(あさひれんぽう)がそびえ、県域の85%を山地が占めています。
また、江戸時代の幕藩体制の影響が現在まで残っており、方言や食文化なども地域によって少しずつ異なっています。
南方より置賜(おきたま)、村山(むらやま)、最上(もがみ)、庄内(しょうない)と4つの地域に区分されているという特徴をもつ県。
この記事では、そんな山形県の郷土料理について解説いたします。
山形県の生産高が高い農産物を紹介
山形と聞いて多くの人の頭に思い浮かぶのは、さくらんぼでしょう。その生産量は、全国の7割を占めています。
中でも佐藤錦は有名で、贈答品などに採用されることもある非常に人気の高い品種です。
さくらんぼの人気度・知名度では佐藤錦が飛びぬけてはいますが、山形ではその他にも実に多様な品種が栽培されています。
またお米の栽培も盛んで、2010年秋にデビューした「つや姫」は県産ブランドとして一気に人気を集めました。発売前にコシヒカリと比較する形で行われた食味官能試験でも上位に入るなど、デビュー前から評価が非常に高かったといいます。
また餅をよく食べる山形では、もち米の作付けが多いことでも有名。「こゆきもち」という品種は県が独自に開発したもので、奨励品種(各都道府県がその都道府県に普及すべき優良な品種として決定したもの)となっています。
水産においてはアユ・ニジマス・イワナなどの川魚が豊富に獲れます。特にイワナは、マス類の中でも冷たく綺麗な水を好んで生息する魚種です。山形の名峰、またそれにともなう豊かな川を象徴するかのような名産品です。
また畜産に関しては、牛肉の生産が活発に行われています。山形と牛肉には密接な関係があり、明治初期から米沢牛をはじめとする和牛の生産が行われていました。その後本格的な品種改良が始まり、戦後生産量を伸ばす中で飯豊牛・西川牛などの肉用牛が生まれます。
それらを総称して「山形牛」と名称づけ、高品質の肉用牛産地として今でも全国的に人気となっています。
山形県の郷土料理
だし
山形の郷土料理といえばまず思い浮かぶのが「だし」。生の野菜を細かく刻み、大葉やミョウガなどの香味野菜といただく夏の定番料理です。
前述したとおり山地に囲まれている山形の夏は、高温多湿で暑さが厳しいという特色のある県。夏にさっぱりと食べられるこの「だし」は、食欲のなくなりがちな暑い時期に家庭で好んで食べられます。
また、各家庭でそれぞれ味つけが異なるという特徴もあり、家庭料理としての定着度がわかります。
「だし」という名の由来ですが、「出汁のように他の食材を引き立てることから」「包丁で細かく切り"出す"ことから」「手早く食卓に"出す"ことから」
など諸説あるとのこと。いずれにしても、美味しさと手軽さを兼ね備えたスピード料理であることがうかがえます。
<作り方>
- オクラはネットごと洗い、刻んで水につけておく。茄子は粗みじんにし、水にさらす。
- きゅうり、大葉、ミョウガを粗みじんに切る。
- オクラのボウルに水気を切った茄子、②のきゅうり、大葉、ミョウガを加え、めかぶを加える。
- めんつゆで味をととのえ、よく混ぜる。
塩引きずし
一風変わった名前のこの「塩引きずし」は、ハレの日に食される米沢市発祥の郷土料理。塩漬けのサケを使った押しずしで、紅白の見た目が綺麗なことから特に正月に食べられています。
「塩引き」とは本来、一般的に魚の塩漬けをさす言葉。山形、特に米沢市では、塩引きというとサケの塩漬けのことをいいます。
ハレの日の郷土料理とはいえ、近年では飲食店でもメニューに並ぶなど、身近な料理として親しまれています。
<作り方>
- 米を洗い、ざるに上げる。30分ほどおき、だし昆布を入れて炊く。
- 炊きあがった米に合わせ酢をふりかけ、全体にいきわたるように混ぜる。
- 塩ザケを2mm程度に切る。
- 押し型にすし飯を入れて押し、③の塩ザケをのせてもう一度押す。食べやすい大きさに切る。
玉こんにゃく
玉こんにゃくは山形県ならではの食材。板こんにゃくは全国でも食べられていますが、直径3cmほどのお団子状にし食べやすいよう串に刺した玉こんにゃくは、山形県民のソウルフードともいえる食べものです。
山形には「千歳山こんにゃく」というこんにゃく専門店があり、この店が玉こんにゃくの発祥だといわれています。
スルメ入りの醤油で煮込み、からしをつけて熱々をいただくこの料理は、庶民の手軽なファストフードのような位置づけです。
<作り方>
- 玉こんにゃくは鍋でさっとから炒りする。
- スルメと醤油、水を加え中火で煮る。沸騰したら落し蓋をする。
- 煮汁が3分の1くらになったら火から下ろす。
くじら餅
インパクトのある名称ですが、材料にくじらの肉を使っているわけではなく、くるみの入った甘い餅をさす郷土料理です。
その由来は諸説ありますが、「(保存がきくことから)久しく持つ良い餅→久持餅(くじらもち)」「見た目が塩くじらに似ていたことから」「昔は今よりも大きく作られており、その大きさを例えて」などといわれています。
旧暦の桃の節句にお供えし、春の訪れを祝う料理として山形に継承されてきたこの料理。だしと同じく各家庭の味があることから、近所の人と食べ比べをするのも楽しみのひとつだったようです。
<作り方>
- 黒糖と水、塩を鍋に入れて火にかけ、完全に溶かして粗熱をとる。
- もち米粉と上新粉を混ぜ、①を少しずつ加えながらよく混ぜ合わせる。
- ②を容器に入れたらむきぐるみをパラパラとまき、冷蔵庫に入れて一時間ほど休ませる。
- ③の休ませた餅を蒸し器に入れ、蒸す。
冷や汁
冷や汁と聞くと宮崎の冷や汁を思い浮かべる人も多いと思いますが、山形の「冷や汁(ひやしる)」はおひたしのことをさします。
旬の野菜とだし汁を合わせたこの料理は、年間を通し四季折々の野菜を楽しむことができる郷土料理。
だし汁には干し椎茸、干し貝柱のなどの乾物を使用します。これらの食材はうまみや栄養価が高く、備蓄できるため古くから重宝されていたようです。
<作り方>
- 干し貝柱を水に浸し、ほぐしておく。干し椎茸も同様に水に浸し、薄切りにしておく。
- 染みこんにゃくを水で戻し、水洗いする。短冊切りにしておく。
- 鍋に貝柱の戻し汁、醤油、みりんを合わせる。ほぐした貝柱と染みこんにゃくも入れ、火にかける。少し煮たら火から下ろし、冷ましておく。
- 雪菜は3cmほどに切り、熱湯に通して水にとり、塩を振っておく。
- ③のだしと④の雪菜を和え、冷蔵庫で一時間ほど冷やして味をなじませる。
まとめ
本州北東部に位置し、西側を日本海に面する山形県。山形県はその県域の85%が山地であるという特徴があります。朝日、蔵王、月山、飯豊などの日本百名山に数えられる山脈に囲まれており、さくらんぼの生産は全国生産量の7割にも及びます。
山形牛をはじめとする畜産、つや姫が代表的な米の生産、またイワナやアユなどの水産と、豊かな自然を象徴するかのような農畜水産が活発に行われています。
郷土料理にもその豊かさはあらわれており、山地が多く暑さの厳しい夏に様々な野菜・香味野菜を刻んでいただく「だし」、山のものと海のものをかけ合わせる「冷や汁」など、随所に人々の生活への工夫や地形・気候との共生が見られます。
この記事では、山形県の郷土料理について解説いたしました。
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