栄養士の離職率は高い? おもな退職理由やおすすめの転職先も合わせて解説
目次
栄養士として働くには、「栄養士養成施設」を卒業し、国家資格を取得する必要があります。
国家資格を要する職業というと、手堅く安定しているイメージがありますが、同時に栄養士は離職率が高いというイメージもあるようです。
この記事では、栄養士の離職率や退職理由、転職先について解説します。
栄養士の離職率について
「栄養士は離職率が高い」というのは事実なのでしょうか。
実際に身近にいる栄養士の方の離職が早かったり、すぐ人が変わったりというのを目にすることがあるのであれば、体感として離職率が高いのではと感じるでしょう。
しかし実際には、現在のところ、栄養士の離職率について、明確なデータが存在しているわけではありません。
この記事では、栄養士が就職することが多い業種と、それ以外の業種との比較をすることで、栄養士の離職率が高いのかどうかに迫っていきます。
栄養士の離職率は高いは本当か
栄養士が就職することが多い、飲食サービス業、医療・福祉、教育・学習支援業の3業種の離職率を見てみます。
飲食サービス業の離職率は約27%、医療・福祉が約14%、教育・学習支援業が約16%です。
上記した離職率は、金融業・保険業や建設業などの離職率に比べると、高いといえるでしょう。
一方で、入職率が離職率を上回っている業種は他にもあり、栄養士の関わる業種だけが特別、離職率が高いというわけではありません。
参考:厚生労働省発表 (mhlw.go.jp)
栄養士のおもな退職理由について解説
栄養士は勤務できる業種が多く、退職理由も様々ですが、どのような職種でも上位に入ってくる「仕事量」「低賃金」「人間関係」の3つがおもな退職理由となっています。
それぞれの退職理由について、以下に詳しく解説いたします。
・仕事量の多さ
栄養士は、一般企業、病院、保育園、幼稚園、学校などで献立の作成や、調理、栄養管理を行うのがおもな仕事です。業種や職場によっては仕事内容に若干の違いはありますが、献立作成や栄養管理だけでなく、盛り付けや食事指導、調理業務にも加わることもあります。人員不足な職場が多いことで、本来の栄養士の業務以外の業務も担当しなければならない場合もあるようです。
・低賃金
仕事量が多く長時間労働になりがちな上に、賃金も平均値から比べると高いとはいえません。栄養士の給与に関する厚生労働省のデータはありませんが、一般的な栄養士の初任給は16~20万円くらいといわれています。民間の職場では昇給額も多くはありませんが、公務員栄養士の場合は定額昇給が定められているため、勤続年数が上がっていくことで昇給が見込めます。
低賃金に加えて休日や福利厚生に関しても企業によって大きく異なり、あまり条件の良くない求人も存在しているのが現状です。
・人間関係
栄養士は調理現場の監督のような立ち位置になることが多く、場合によってはかなり年齢の離れた部下に注意をしたり、嫌がられるような業務の割り振りをしたりする必要があります。日々追われる業務に手一杯となり、職員同士のトラブルの解決が難しく、ストレスになってしまう事もあるようです。
また、多くの職場では、栄養士を職場に配置する人数が全体的に少なくなっており、一人あたりにかかる負荷が大きくなっています。その結果、仕事量が多く激務になっているケースも見られ、人員配置が少ないことから、相談相手なども少なくなりがちで悩みを抱えてしまうこともあるようです。
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退職を考えるときの対処法を紹介
栄養士を続けていくか、退職をするのか悩んでしまった際の対処法をご紹介いたします。
・上司に相談する
まずは、なぜ退職をしたいと考えているのかを整理して、直属の上司に相談します。職場内で問題点を改善することが可能であれば問題解決を試み、それが叶わないのであれば退職や転職を考えるのがよいでしょう。仮に、相談しても解決できないような問題を抱えているとしても、一度の相談もなしに退職をすると伝えるのは避けるべきです。退職の意思が固くとも、退職時期や有給休暇の消化などについて話し合いをする必要があります。
・同じ会社内の他職種へ異動
専門職で採用した社員が、他職種への異動をするというのは珍しいことですが不可能ではありません。本人の意向をくんで、検討してもらえる場合があります。
・栄養士以外の職種を選ぶ
栄養士という職業そのものから離れたくなった場合は、全く異なる分野での転職活動を行うことになります。栄養士という国家資格をいかすことはできなくなりますが、他業種で一から挑戦するというのも選択肢のひとつです。スマートフォンひとつあれば、転職サイトやエージェントを使って、たくさんの求人に出会えるので、数年前に比べると自分のペースでの転職活動がしやすくなっているといえます。
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栄養士の活躍できる転職先
栄養士は一般企業、病院、社会福祉施設、自衛隊、保育園、幼稚園、学校など、幅広い業界の中から職場を選択することが可能です。選ぶ業界によって、業務内容も大きく変わります。「自分が栄養士としてどのような分野で活躍したいのか」、「待遇面はどこまでこだわるのか」など、明確に決めておくことが大切です。栄養士の求人は、業界の選択肢は幅広いですが、一企業当たりの採用人数は、栄養士の配置の都合上、少ない傾向にあります。採用をつかみ取るには、相応の努力が必要になる企業も多いです。
以下におすすめの転職先と理由を紹介します。
・自衛隊
自衛隊で働く栄養士・管理栄養士には「特別職国家公務員」の肩書きが与えられ、「防衛技官」とも呼ばれるようになり、野外炊事の献立作成支援などが業務になります。国家公務員であることから、定額昇給が定められているため、勤続年数が上がっていくことで昇給が見込めることがメリットです。ただし、定年退職の年齢は一般企業よりも低くなります。
・保育園、幼稚園
児童の昼食とおやつの献立を、年齢に合わせて作成します。その中で、季節の行事イベントに合わせたメニューの考案をしたり、食育活動をすることも可能です。子どもが好きな人であれば、たくさんの子どもと関わることができる点がメリットです。
・病院
病院勤務の栄養士の業務は、給食部門と臨床部門に分かれています。
給食部門は、院内約束食事箋に基づいて献立作成や調理がおもな業務です。一般的な食事の他に、患者さんの状態に合わせて流動食や、タンパク質・エネルギーなどを調整したコントロール食、アレルギー対応の除去食など、柔軟な対応をしていく必要があります。
臨床部門は、患者さんに合わせた栄養管理計画書の作成や栄養指導を行います。病院の規模が大きければ給与も高くなる傾向があり、手当も充実している病院も存在することから、一般的な栄養士の給与よりも高くなる病院もあります。
医療行為を行う場所で働くことから、食事も治療の一環としてとらえられます。患者さんの検査値に応じた食事内容を考えたり、栄養状態を確認しなければならないなど、責任も重く、仕事量も多くなっています。
・高齢者施設
高齢化にともない、高齢者施設における栄養士の求人は拡大中です。利用者の状態によって流動食やきざみ食、普通食などの段階に分けて作成するなど、通常の献立作成とは異なる対応をします。利用者だけでなく、ケアマネージャーや介護職員、医師、リハビリ担当者など、施設に関わる様々な職種の人と関われることがメリットです。
・食品メーカー
健康志向が高まっている近年では、健康に良いとされる食品のニーズが高まっています。商品の企画や開発で、栄養士の専門的な知識をいかすことが可能です。消費者の動向調査や商品設計も業務の一部です。
他の業界に比べて、住宅手当などの福利厚生が充実している傾向にありますが、メーカーへの転職は、求人数がかなり少なく狭き門とされています。
・給食センター
少子化にともない、各々の学校の給食室で調理する「自校式」から、給食センターで一括調理して各校へ配送する「センター式」の導入が広がっています。献立作成に加えて、調理員と共に大量調理にも関わることから、大きな鍋をかきまぜたり、大量の食材を運んだりと体力が必要な職場です。また、近年増加している食物アレルギーへの対応で代替食や除去食の献立も作成することになりますので、アレルギーに対する知識が身につくこともメリットといえます。
基本的に、土日祝の休校日がそのまま休日になり、プライベートの予定が立てやすいことがメリットです。
・スポーツ業界
スポーツジムで、利用者の食事の栄養管理やサポートします。食事指導を受けながらダイエットやトレーニングができるジムも増えており、ジムの職員兼栄養士という働き方もあるでしょう。
また、時間はかかりますが、管理栄養士の資格まで取得すれば、「スポーツ栄養士」の資格に挑戦するのもよいかと思います。スポーツ栄養士の資格を取得できれば、スポーツ選手の栄養管理などの仕事にも携われる可能性もあります。スポーツ栄養士の合格率は低く難易度が高いですが、スポーツが好きな人にとってはやりがいのある仕事です。
・フリーランスとして働く
特定の企業で雇用されるのではなく、自営業で栄養士をしていくという方法です。飲食店のメニュー開発に携わったり、レシピ本の監修をしたり、料理教室を開催するなど、自分で時間や仕事量をコントロールできます。
しかし、自分のしたい活動ができる反面、守ってくれる会社がなく福利厚生もありません。仕事を得るためには、取引先との信頼関係を築く為のコミュニケーション力、栄養に関する知識、経験など、様々なスキルが必要になるでしょう。
まとめ
栄養士の離職率は比較的高いといえますが、それ以上に離職率の高い業種も存在します。
栄養士の勤務できる業種は一般企業、病院、社会福祉施設、自衛隊、保育園、幼稚園、学校など多岐に渡り、様々な企業や施設から選ぶことも可能です。一方で、栄養士の配置の都合上、採用人数が少ない求人が多い傾向にあります。
自分の活躍したい分野への転職には、相応の努力が必要です。転職前にしっかりと情報収集をして、活躍できる転職先を探しましょう。
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