なかなか人に相談できない、妊活中の食事や栄養の悩み。なかには「必要な栄養はわかっていても、料理の負担が重い……」とお困りの方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、妊活・不妊治療で悩みを抱える人をサポートしている「ファミワン」とのコラボで実現した対談企画をお届けします。
対談したのは、産婦人科での栄養指導のご経験のあるシェアダイン管理栄養士のあゆこさんと、不妊症看護認定看護師の資格を持ち、ファミワンで代表看護師として働く西岡有可さん。
妊活・食事の専門家であるお2人に、妊活における食事の役割や重要性、積極的に摂りたい栄養素や人気の妊活レシピについてお話いただきました。
病院では相談しにくい、妊活中の食事の悩み
編集部
西岡さんは「不妊症看護認定看護師」として、妊活領域でさまざまなアドバイスをされてきたかと思います。妊活における食事については、どんな認識を持ってらっしゃいますか?
西岡さん
妊活中の身体づくりの基本となるのが、「食事」だと思っています。
身体づくりは、卵(=卵子)を育てたり、子宮内膜を厚くしたりすることにも繋がっていくので、必要な栄養素をしっかり摂っていく必要があるんです。
患者さんにも、必要な栄養素をできるだけ食事で摂っていただくようお伝えしています。
あゆこさん
実際、妊活中の食事に関する悩み相談を受けることは多いですか?
西岡さん
そうですね。「どんなものを食べたらいいですか?」「避けたほうがいい食べ物はありますか?」など、食事に関する相談はすごく多いです。
というのも、栄養士さんなどの専門家による食事・栄養指導が受けられる病院・クリニックってほとんどないんです。
病院では相談できないために、ファミワンで相談される方が多い印象です。
あゆこさん
妊活中の食事について相談したい、というニーズはかなりあるんですね。
西岡さん
はい。食事のような生活面での相談事は多い一方で、「医療」を専門とする病院やクリニックでのサポートには限界があって。それに代わる相談先が見つからないのが、現状の課題だと思っています。
だからこそ、管理栄養士さんに栄養の相談ができて、さらにレシピにまで落とし込んで作ってもらえるという、出張シェフサービス「シェアダイン」の必要性を感じますね。
妊活中の料理は負担大…。出張シェフの利用で、生活はどう変わる?
あゆこさん
私自身、出張料理を通して妊活のサポートができているんだな、と実感できたことがありました。
以前、お客さまから「食事に安心感が増し、精神面(でのサポート)が大きいです」「あゆこさんの食事のサポートがあったから妊娠できたのではないかと思います」とメッセージをいただいたことがあるんです。そのときは、思わず泣きそうになりました。
西岡さん
それは嬉しいですね……!
あゆこさん
「食事に安心感が増した」という言葉の背景には、たとえ病院で栄養・食事バランスに関するパンフレットをもらって知識はついても、「毎日の食事でどうやって摂取すればいいの?」「具体的なレシピがわからない」と実践に結びつかない実情があると感じています。
実際、夫婦で話し合って「実践が難しいとなると、料理を依頼した方が早いんじゃない?」と、シェアダインを利用し始めたという方もいらっしゃいました。
西岡さん
なるほど。食事の相談に加え、「栄養バランスを考えて料理をする」という負担を減らせるのは心強いですよね。
今は働きながら妊活される方も多いですが、ただでさえ仕事と家事の両立でも大変なところに妊活を加えるとなると、もう持ち物がいっぱいな状態なんです。
仕事を終えて駆け込みで病院行って長い待ち時間を過ごして帰宅、さらに料理となると、女性はかなり苦しいかなと……。
その重すぎる負担を1つ減らすのに、妊活専門の出張シェフに任せるという選択肢を持ってもいいと思います。
妊活中に意識したい「栄養素」とは?赤ちゃんを迎える前の注意点
編集部
あゆこさんは、妊活中の方向けに料理を作る際、どんな相談やリクエストを受けることが多いですか?
あゆこさん
「身体が冷えやすい」「貧血気味だから少しでも食事で改善したい」というお客さまが多い印象です。
たとえば、冷えが気になる方には、身体を温める食材を使った料理や温かい食事を提供しつつ、普段の食事ではこうするといいですよ、といったアドバイスもお伝えしています。
身体が冷えて血の巡りが悪くなると、どんなにいいものを食べていても、身体に栄養が行き渡らなくなってしまうので……。
西岡さん
そうですよね。貧血や冷えは妊活にも影響を与えるので、普段から身体を温めて血行をよくするのは重要だと思います。
編集部
妊活中に摂りたい栄養素には、どんなものがあるのでしょうか?
あゆこさん
・葉酸
・鉄
・タンパク質
・炭水化物
・脂質
・亜鉛
・ビタミンD
妊活では、このような栄養素を積極的に摂ることをおすすめしています。
西岡さん
なかでも葉酸は、厚生労働省でも摂取が推奨されているくらい知名度が高く重要な栄養素。
「妊娠中に摂るもの」と思っている方も多いのですが、葉酸は二分脊椎など赤ちゃんの先天異常リスクを抑制するのに必要です。
妊娠が判明する頃には摂取していただきたいので、私はよく「赤ちゃんが欲しいと思ったら意識的に摂り始めてください」とお伝えしています。
あゆこさん
葉酸は「造血のビタミン」とも言われていて、鉄と葉酸を一緒に摂取することで、妊活・妊娠中の貧血改善も期待できます。
赤ちゃんのためにはもちろん、お母さん側にとっても嬉しい栄養素なんです。
編集部
そのほか看護師という視点から、意識的な摂取を推奨されている栄養素はありますか?
西岡さん
鉄分や葉酸に加えて近年注目を集めているのが、ビタミンDです。ビタミンDと着床の関連性を示唆する研究結果がある一方、不足しがちな女性は多いので、しっかり摂っていただきたいですね。
あと注意していただきたいのは、避けがちだけれど適度に摂る必要がある「脂質」。
というのも、女性ホルモンのエストロゲンは、コレステロールが分解されてできるもの。つまり、過度に脂質をカットしてしまうと、エストロゲンがうまく作られず、排卵しなくなってしまうんです。
あゆこさん
たしかに、「過度なダイエットによって生理が止まってしまった」なんて話も聞きますよね。
西岡さん
そうです。それも、脂質の過度な制限が原因なんですよね。
もう1つ食事で気をつけたいのが、炭水化物や糖分の摂りすぎによる「糖尿病」です。糖尿病の方のなかには、排卵障害や多嚢胞性卵巣症候群が見られることも少なくないんです。
妊活中の食事については、そういったお話をすることもあります。
あゆこさん
私も「甘いお菓子などは避けたほうがいいですよ」とアドバイスすることが多いです。とはいえエネルギー源としての炭水化物は必要なので、GI値(血糖値の上昇度合いを表す数値)を意識するのが重要かなと思っています。そもそも炭水化物は、食物繊維と糖質を合わせたものです。
白米と甘いお菓子を「同じ炭水化物」と思っている人も多いかもしれませんが、食物繊維の量やGI値で見れば、質が違うんです。
西岡さん
質ですか?
あゆこさん
たとえば、食物繊維を豊富に含む玄米を食べるのと、食物繊維をほぼ含まないクッキーを食べるのとでは、血糖値の上がり方が全く異なります。玄米の場合はゆるやかに上昇するのに対し、クッキーの場合は、ポンと急激に上がるのが特徴。
しかも、血糖値は急激に上昇すると同じく急に下がるので、また甘いものを食べたくなる悪循環に陥り、イライラするなど精神面にも影響が出てしまうんですね。
だからこそ「お菓子を食べたいからといってご飯を抜くというのはやめてくださいね」とお伝えしています。
身体に嬉しい素材や工夫が満載!人気の妊活レシピは?
西岡さん
管理栄養士のあゆこさんから、そういった栄養のお話を聞けるのは、利用者さんにとってすごくいいですね。
実際、そういった食の知識をレシピ開発や料理にも活用していらっしゃるんですか?
あゆこさん
そうですね。妊活中のお客さまへの出張料理では、私は砂糖を使わないと決めています。
砂糖の代わりに、みりんなど甘みのある調味料や、甘いお野菜を活用するんです。
たとえば、切干し大根や煮物を作るときの調味料って、どんなイメージですか?
西岡さん
砂糖や醤油、みりんでしょうか。
あゆこさん
それが一般的ですよね。でも私が作る切干し大根は、砂糖を使わずに、玉ねぎの蒸し煮という調理法で甘さをカバーします。
玉ねぎに少量のお水を加えて弱火で煮ると、砂糖を入れなくても甘〜くなるんですよ。
西岡さん
おいしそうですね!
あゆこさん
この「白砂糖不使用 切干大根煮」はお客さまにも「甘くておいしい!」と言っていただけて、好評でした。
こんな風に、砂糖を使わない料理があることもお伝えしています。
西岡さん
そういったレシピも提案してもらえるんですね。
そのほか、妊活中の方向けによく作られるメニューはありますか?
あゆこさん
リクエストをもとに作って好評だったメニューが、鉄分や亜鉛、葉酸などを豊富に摂れる「レバニラ炒め」。
蒸し煮にして最後にごま油で香りづけしていただくことで、酸化した油を使わないよう工夫を凝らしました。ごま油の代わりに、亜麻仁油やえごま油など身体にいいとされる油を使うのもおすすめしています。
西岡さん
そんな作り方もできるんですね。
あゆこさん
あとは、冷えの改善を意識して考案した「根菜の重ね煮ジンジャーソース」も人気の妊活メニューです。
これは、根菜の蒸し煮をベースに、生姜を効かせた醤油系のソースをかけた一品。身体を温める作用がある根菜と生姜、2つの素材を使いました。
少し変わったものだと、「かぶの葉ソフトふりかけ」もあります。かぶ、ごま、干しエビなど妊活で摂りたい栄養素を豊富に含むふりかけで、あるとご飯が進みます(笑)
ふりかけなので、お子さんが生まれた後、離乳食や乳幼児食にも使えるのもいいかなと思います。
西岡さん
こういった料理で、共通して意識されていることはありますか?
あゆこさん
「身体をつくる」という意味では、妊活中でもそうでなくとも、必要な栄養素や注意点はあまり変わらないんです。
その基本を押さえたうえで、妊活中に必要な栄養素を含む料理や、貧血、冷え性などの改善をサポートする食事を心がけています。
また、私は「化学調味料や白砂糖を使用しないナチュラル料理」をモットーとしているんですが、同時に腸内環境を整える「常備菜」ならぬ「腸美菜」の提案もしています。
西岡さん
「腸美菜」って、魅力的なキャッチフレーズでいいですね!(笑)
あゆこさん
ありがとうございます(笑)
「腸美菜」で腸内環境を整えることで、栄養をしっかり吸収できるんです。そのほか、近年では腸内環境と免疫力に関連があると言われているなど、さまざまなメリットが期待できます。
出張料理では、ほぼ毎食、食物繊維が豊富な食材や発酵食品を使った「腸美菜」を入れています。
西岡さん
栄養面以外でこだわっていらっしゃるポイントはあるんですか?
あゆこさん
おいしさはもちろん、楽しんで食べていただけるように彩りも意識しています。
出張料理では、メイン料理を3〜5品ほど、副菜を5〜10品ほど作っているんです。その料理を並べて見せたときに、お客さまに「わぁ!」と喜んでもらえる出来栄えを目指しています。
食事は夫婦のコミュニケーション。妊活を底上げする「生活習慣」
編集部
あゆこさんの「楽しんで食べてもらえるように」という言葉で、食事は家族や夫婦でのコミュニケーションの機会をつくる役割も果たしているように感じました。
あゆこさん
食事は夫婦、家族で一緒にとられるものだから、栄養面はもちろん「おいしいね」といった会話も大切ですよね。
食卓をともにすることは、「一緒に妊活に取り組んでいこう」と同じ気持ちで妊活と向き合っていくことにも繋がるのではないでしょうか。
西岡さん
たしかに食事って、コミュニケーションの意味合いも大きいですよね。
妊活は夫婦2人で取り組んでいくもので、食事もその1つだと思います。
あゆこさん
出張料理を通して生まれる「これおいしいね」「今はこの食材が旬なんだよ」といった食事中の会話が、妊活中はもちろん、お子さまが生まれた後にも繋がっていったら嬉しく思います。
編集部
今回の対談をきっかけに、「まずは、食事などの生活を見直すことから妊活を始めてみようかな」という方もいるかと思います。そういった方が気をつけるべきことはありますか?
西岡さん
日々の生活で自分の身体や健康状態に意識を向けることは大切ですが、定期的に病院で検診を受けるなど、ときには医療機関の受診も必要。
医療と生活、両方を意識していただきたいです。
というのも、婦人科系の病気や貧血などの不調って、自覚するのが難しいんです。
あゆこさん
「疲れているだけかな」と誤った判断で見過ごしてしまう人も多いですよね。
西岡さん
そうなんです。だからこそ、医療に頼った方がいい面と、生活で改善できる面を分けつつ、両方を活用してもらえればと思います。
全部で自力で、食事だけでどうにかしようとすると、疾患を見逃すことにもなりかねません。
あゆこさん
貧血の治療も同じですよね。貧血も症状がひどすぎると、食事だけだけではカバーしきれないんです。
もし鉄剤や薬が処方されたり、サプリが推奨されているなら、食事にプラスして改善していきましょうと私もお伝えしています。
西岡さん
とはいえ、医療機関を受診したり治療をしても、自分の生活には戻らなきゃいけないわけで、そこでは、食事や運動などの生活習慣が大事になってきます。
医療はピンポイントで使いつつ、毎日の生活はセルフケアで支えていく。そういう意味で、食事は妊活を底上げしてくれるものだと思います。
シェアダインでは、妊娠しやすい体づくりをサポートするためのお食事をご提案しています。
妊活専門の管理栄養士さんに、お気軽にご相談ください。