新型コロナウイルス感染症の世界的な流行をうけて、ヒトの免疫力にたいする関心が高まっています。とりわけ、食べ物によって免疫力を高める取り組みも、メディアなどで紹介されるようになってきました。今回は、医学博士の白澤卓二先生に、免疫力と食事の関係について井出有希シェアダイン共同代表がお話をうかがいました。

Q.まずはじめにお伺いします。そもそも免疫とは何でしょうか

A.免疫力について原理的に説明しますと、自分と自分でないもの(自己と非自己)を区別して自分は攻撃しないけれども、非自己を攻撃するというシステムです。それは植物にもあります。そのためにはまず、「自分自身とは何か」ということを認識できる細胞が存在する必要がある。それが免疫細胞というふうに言われるものです。

免疫細胞は、自分自身でないと認識した場合には、相手を攻撃します。攻撃のやり方には何種類かあり、抗体というたんぱく質を作って、相手をダメにするというタイプがひとつ。他には細胞自身がそのままアタックして、相手を殺す物質を出していく。そういう方法もあれば、相手を食べて消化してしまうという方法もあるのです。


Q.食事で免疫力を高めることは可能なのでしょうか。

A.食事は免疫をつくっている細胞の数や機能に影響を与えるため、その免疫細胞も例外ではありません。もう一つはその細胞が働くための環境というものがあり、それも食事にとても関係していると思います。したがいまして、食事は極めて重要な要因になると考えます。

例えば我々はがんに対する免疫力を、もともと持っています。ある人のがんが増えている場合に、一つの可能性としては、がんに対する免疫力が弱っていると考える訳です。インフルエンザを考えてみても、インフルエンザにかかる人とかからない人がいる。それは免疫力の違いによるかもしれない。

Q.食生活において、気をつけることはどのようなことでしょうか。

A.お米や小麦粉などの炭水化物を取り過ぎないように気をつけることが大切です。世界的テニス選手のジョコビッチは、炭水化物を制限してガリガリの状態でコートに立ちますが、フルセットを戦ってもほとんどスピードが落ちません。ちょっと皮肉な話なのですが、彼はパスタ屋の息子として生まれたのです。

ジョコビッチは、小麦の中のタンパク質であるグルテンに囲まれて育ったですよね。ある時、身体の切れが悪いジョコビッチの様子をテレビで見た、セルビアの栄養士がグルテンによってパフォーマンスが低下していると考えた。それから栄養士はジョコビッチに助言をして、食生活を改善したそうです。

ただ、極端な炭水化物制限という方法は、万人向けではありません。糖尿病や高血圧の治療を受けている人は、症状が悪化する可能性もあります。外出時に食べるご飯の量を減らすといったように、無理のない方法で炭水化物の摂取を抑えるとよいでしょう。

Q.炭水化物を取り過ぎないといったこと以外に、食生活でどのようなところに気を付けたらよいでしょうか。

A.りんご、きのこ、ナッツなど、免疫力アップのためにおすすめしたい食材はたくさんあります。ただし最初の80%の勝負は、「どこの店で何を買ったか」で決まります。あとの20%は調理法により、食材の栄養素を壊さない調理法で、おいしく食べるということが大切ではないかと考えます。免疫力アップを考えるならば、防腐剤や添加物などによって固められた加工食品や、袋詰めされているものはできる限り控えたほうが良いでしょう。

また、「年をとったら粗食にしよう」というのは、実は間違いです。高齢者ほど栄養価の高い食事を摂るべきです。そういう意味では、鰻はいいですよ。

Q.食用油の摂り方にも気を付けた方がよいようですね。

A.サラダ油はアラキドン酸を多く含みます。皆さんは、スーパーマーケットに行くとサラダオイルを見かけますよね。このサラダ油の正体は、ほとんど「オメガ6」と呼ばれる飽和脂肪酸で、大豆油や菜種油を原料としています。現代人は、これら植物油を中心としたオメガ6系脂肪酸を過剰に摂りがちです。

ココナツから抽出したココナツオイルなど、体に良い油を選んで摂ることが重要です。また、青魚などに含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などのオメガ3系脂肪酸も積極的に摂りたいです。手軽にオメガ3系脂肪酸を摂るなら、鯖の水煮缶などもおすすめです。

Q.弊社は管理栄養士など食の専門家による出張料理サービスを展開しています。栄養学や調理について、アドバイスをお願いします。

A.管理栄養学の知識を身につけることは、ある病気を予防したり治療したりすることにつながると、私自身は考えています。そのために、シェアダインの管理栄養士さんをはじめとするシェフには、免疫力に関するベーシックの知識をしっかり学んでいただきたいと思います。

ただし、まず材料として何を選ぶかということは決定的に重要です。その後に出てくるのが調理法であるとか、食べ合わせ。それから、発酵食品をどのように使っていき、いかに化学調味料を減らしていくかという、テクニカルな問題に入っていくだろうと思います。シェフに頼るばかりでなく、ユーザー側も、用意する食材に気を遣う意識が必要です。

シェアダインのホームシェフとユーザーが協力しながら、ご家族の健康を守り、インフルエンザやコロナウイルスに負けない強い体を作っていくと良いですね。


白澤卓二医師監修
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監修 白澤卓二、Dr.ジョエル・ファーマン
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