シェアダインで活動されるシェフは、管理栄養士や栄養士、調理師といった資格を持つ食の専門家たち。登録の際には出張料理に特化した衛生研修をしっかりと受講してから、シェフとしての活動をスタートします。

シェアダインではさらに、実際にお伺いする一般のご家庭のキッチンを利用した、衛生研修の実習編を開催しています。8月20日に開催された研修には7名のシェフの方が参加されました。

まず最初に、運営局のsayuriさんから「つけない、増やさない、殺す」という食中毒の三原則、そして食中毒を引き起こす菌の特徴から感染を防ぐ方法を改めて説明。消毒用アルコール、マスク、キッチンペーパー、タオル、ビニール手袋など、ユーザーのご家庭にお伺いする際の持ち物リストの再確認をしました。

作り置き料理に必要な衛生管理のコツ

この日の講師は、管理栄養士のyokoさん。「3時間の作り置きで、キッチンがまったく汚れず、つねに調理しているものしか外に出ていない」とsayuriさんがその腕をご紹介すると、参加されたシェフたちは興味津々。実際にユーザーのご自宅にお伺いするのと同じ流れで作り置き料理5品を調理いただき、衛生面で気をつけるべきポイントを説明いただきました。そのいくつかをご紹介しましょう。

◉キャベツと人参のコールスロー

「生肉や生魚を扱うときは手袋をつけますが、できれば生野菜のときもつけると安心です」と、キャベツをカット。芯を取り除くと腐りにくくなることやラップでの保存方法もユーザーの方にお伝えするそうです。

このとき、キッチンテーブルにはコールスローに使う食材しか出ていません。後で肉魚類はまだ冷蔵庫の中。これも食中毒を防ぐ大きなポイント。また、手袋を取り替えながら「ゴミ箱の上で外して、裏返しにして捨てている」とのこと。これも手についた菌が飛ばないようにとの配慮です。

また、メニューのバラエティとしては「サラダはあまり日持ちしないので、作るのは1品か2品。野菜をたくさん食べたいといったリクエストで品数を多く作るなら、ホットサラダなど火を通したものがいいですね」とのアドバイスもいただきました。

◉味噌汁

続いて、味噌汁の準備が始まりました。「冷ます時間が必要なので、汁物は早い段階で作ります」。味噌汁やスープなどは、他の料理で使った野菜の残りを使って最後に作りがち。でもそれでは十分に冷ます時間がないため、衛生面のリスクが残ってしまいます。

汁物は最初に作っておき、ジッパーバッグなどに入れて十分に冷まし、冷蔵庫に保存することが大切とのお話に、参加されたシェフたちは大きくうなずきます。

◉ミニトマトのマリネ

「トマトが嫌いなお子さんでも、湯むきすると食べてくれるんです」と、yokoさん。鍋からあげたミニトマトの皮をむくときも手袋をしています。「茹でたトマトですが、生で食べていただくので手袋をしている」とのこと。保存容器のマリネ液に綺麗なミニトマトが並びます。

「マリネのように時間が経つと美味しいものは、メニュー全体の1/3から半分が目安」で、出張料理当日だけでなく後から楽しんでもらえるように「これは2日後が美味しいですよ」とユーザーの方にご説明されているそうです。

出来上がった料理で温かいものは冷ましながら、冷たいものはすぐ冷蔵庫に。コールスローとトマトのマリネを仕舞います。そして、食材を切るごとにまな板を洗い、お湯を沸かしている間に洗い物を済ますなど、とにかくキッチンテーブルもシンクもすっきりと綺麗な状態です。

◉ナスと鶏肉の炒め物

夏は食材が傷みやすく、また旬の野菜であるナスは色が変わりやすいため、酢と醤油で味付けて、保存期間を長くするメニュー。「炒め物は、水分をしっかり飛ばしてから」保存容器に移すのがポイントとのこと。

yokoさんはここでも、出来上がった料理を冷ます大切さを強調。「完全に冷めるの待つと1、2時間かかってしまいます。粗熱が取れたら、すぐ冷蔵庫に入れています」。冷凍庫に急冷スペースがあれば、保存容器の蓋を開けたまま冷やすといったコツも伝授。参加されたシェフの方々は熱心にメモを取っていました。

◉鮭の漬け込み

最後は冷凍保存もできる、漬け込み料理。醤油、みりん、お酒で味付けします。最初にジッパーパックの口を外側に折っているのは、周囲に鮭やドリップ液をつけないための工夫。さらに「もしジッパーバッグの周囲が汚れたら、拭いてアルコール消毒しています」とのこと。この日はあらかじめ冷凍することがわかっていましたので、すぐ冷凍庫に入れました。

「つけない、増やさない、殺す」を徹底する

yokoさんに一般家庭のキッチンで5品を作っていただき、食中毒の原因になる菌を「つけない、増やさない、殺す」ための具体的な方法をたくさん伝授いただきました。

まず、とにかくキッチンテーブルの上を綺麗に保つこと。必要な食材しか出さず、何かを切るたびにまな板を洗い、よく拭く。洗い物も溜めないようにしていらっしゃいました。

調理の順番も、なるべく最初に野菜を処理し、そのあとに肉や魚。野菜用、肉魚用とまな板が2枚ない場合は、食中毒のリスクを軽減するために、表面で野菜、裏面で肉や魚と使い分けたり、まな板を使わずにフライパンの上でキッチンバサミでお肉を切る裏技も。

容器は基本的にアルコール消毒。離乳食の場合は熱湯消毒を行います。「最初に熱湯消毒しておき、ざるにかけるなどして乾かしておくといいと思います」とyokoさん。

5品作り終えると、参加されたシェフの方々から「こういう場合はどうしたらいいのか」と多くの質問が寄せられました。yokoさんやsayuriさんからの回答だけでなく、「私はこうしている」と参加されたシェフ同士で経験を共有する、シェアダインらしい場面も見られました。

シェアダインでは出張料理の専門家としてのスキルアップのために、ミールプレップ・エキスパート講座やレシピ交換会、女子栄養大学出版部『栄養と料理』との共催イベントなど、これからも学び合う機会を設けてまいります。

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