妊娠や出産を機に休職や退職をした方の多くは産後に復職を望んでいます。しかしながら出産後に体力が妊娠前と同レベルまで回復するには3ヵ月から1年程度はかかる、とも言われます。体力不足で育児をしながら復職できるのか不安に思う方も少なくありません。

そこでこの記事では妊娠出産で休職した方の復職と、退職した方の再就職に役立つ情報として、育児に関する手当や給付金などの金銭的支援制度と、地域の子育て支援センターの概要、および育児にかかわる各種サポートサービスについて解説いたします。

育児にかかわる金銭的支援

2021年の日本の出生数は約81万人。データが残る1899年以降で最少数となりました。少子化は国にとって大きな問題ですが、経済的な理由から結婚や子づくりをあきらめる人も少なくありません。そこで国や自治体ではさまざまな給付金や手当を支給しています。

ここでは国が行う育児支援制度のうち、育児休業給付金、厚生年金・国民年金の保険料免除、児童手当、児童扶養手当について個別に解説いたします。

育児休業給付金

育児休業給付金は、雇用保険の加入者が1歳未満の子どもを育てるために育児休業を取得した場合に支給される給付金です。夫婦で育児休業を取得する「パパ・ママ育休プラス」制度を利用した場合は子どもが1歳2カ月になるまで両親2人分が支給されます。

また保育所に入所できないなど所定の事情がある場合は最長で2歳になるまで支給が可能。支給額は育休開始から180日目までは休業前の賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。

なお支給額には上限と下限があります。また休業中も賃金がある場合は、「休業中の賃金+給付金-(休業前の賃金×0.8)」の額が減額されます。休業中の賃金が休業前の賃金の80%以上支払われる場合は、育児休業給付金は支給されません。

厚生年金・国民年金の保険料免除など

厚生年金の保険料免除など産休・育休等を取得した際の特例

産休や育休などを取得した場合は特例として、厚生年金保険や健康保険の保険料が免除されます。免除期間中の保険料は納付済みとして取り扱われますので、復職後に請求されることはありません。

また休業後に復職した際に時短勤務などで報酬額が低下した場合は、子どもが3歳未満など所定の要件を満たしていれば、産休や育休などの取得の有無にかかわらず被保険者(保険加入者)の申し出によって休業前の高い報酬月額を元に年金額が計算されます。

納付する保険料については低下した月額報酬に応じた金額となります。この特例措置を受けるには被保険者の申し出が必要です。共働き世帯の場合は夫婦それぞれが申し出ることができます。

国民年金保険料の免除

国民年金の第1号被保険者、すなわち出産した本人については、出産予定日か出産の前月から4カ月間(双子以上では出産予定日または出産の3カ月前から6カ月間)の産前産後期間における保険料が免除されます。この特例措置に所得制限などはありません。

免除期間中の保険料は納付済みとみなして、老齢基礎年金の受給額に反映されます。免除の届出は出産予定日の6カ月前から可能。出産後でも届出ができます。

児童手当

児童手当は0歳から中学3年生(15歳になって最初の3月31日まで)の児童を養育している人に支給されます。支給額は子ども1人につき、3歳未満は月額15,000円。3歳から小学校修了前の第1子と第2子には月額10,000円、第3子以降は同15,000円です。

この場合の「第3子以降」とは、18歳で高校を卒業するまでの養育児童で3番目以降の子どものこと。たとえば子どもが3人いたとしても一番上の子どもが高校を卒業した場合は対象の養育児童を2人とします。

中学生の支給額は月額10,000円です。

なお子ども2人と年収103万円以下の配偶者がいる年収960万円以上の世帯には、特例として子ども1人につき月額5,000円が支給されます。2022年10月以降、子ども2人と年収103万円以下の配偶者を持つ年収1,200万円以上の世帯は支給対象外となる予定です。

児童扶養手当

児童扶養手当はさまざまな事情で「ひとり親」なった世帯に支給される手当です。対象となるのは18歳になって最初の3月31日までの児童です。親が遺族年金などの公的年金を受け取っている場合は原則として支給されません。

ただし受け取っている公的年金額が児童扶養手当額よりも低い場合は差額分を受け取ることができます。またひとり親で障害者の方は児童扶養手当の額が障害基礎年金等の子の加算部分の額を上回る場合、その差額分の児童扶養手当を受け取ることができます。

児童扶養手当の受給には所得の制限があり、受給資格者の所得や子どもの数などによって受給額が変わりますので、くわしくは居住する市区町村にお問い合わせください。

地域の子育て支援センター(子ども家庭支援センター)の概要

「地域の子育て支援センター」は、児童福祉法に定められた子育て援助活動支援事業として全国に設置された子育て支援拠点です。子育てに関連する児童館などの公共施設や保育所といった地域の身近な場所に専用のスペースを設置しています。

地域の子育て支援センターでは乳幼児と保護者同士で遊びや交流を楽しめるほか、子育てに関する悩みや困りごとなどを相談できる専任のスタッフを配置。子育てに役立つ情報提供をはじめ、子育て支援に携わるスタッフのための研修会なども実施しています。

地域によっては「子ども家庭支援センター」などの名称で同じ機能を果たす施設を設置しています。ほかにも地域の方が運営する子育てサロンや、保育園などの園庭開放を行っている自治体もありますので、居住する市区町村にお問い合わせください。

育児にかかわるサービス紹介

子育て支援については行政や自治体が主導する公的事業のほかにも、民間の企業や事業所が提供するさまざまなサービスがあります。また民間企業と自治体が協働して保護者が安心して育児ができる環境と支援制度の確立に取り組んでいるケースも少なくありません。

そこでここでは民間企業が提供する育児関連の各種サービス事業と、東京都が運営する「東京都 家族ふれあいの日」の概要について解説いたします。

ベビーシッター

「ベビーシッター(babysitter)」とは、依頼者の自宅や託児所などに出向いて身内以外の子供の世話や保育をする人のこと。育児をする人が赤ちゃんの世話をしながら抱いたりあやしたり、話しかけたりすることを「マザーリング(mothering)」といいます。

育児の際に愛情をかけてマザーリングをすることで赤ちゃんの情緒が安定し、思いやりのある優しい大人に育つといわれています。しかしながら愛情と情緒の安定が求められるのは赤ちゃんだけではありません。

近年では母親に対するマザーリング (マザーリング・ザ・マザーmothering the mother)も重視されており、そのための支援も行われています。育児と家事の両立やストレスに悩む母親を専門のスタッフがサポートすることで母と子の双方に良い影響を与えます。

以下に紹介する2つのベビーシッターサービスはいずれも赤ちゃんへのマザーリングだけでなく、「マザーリング・ザ・マザー」のサポートも選択可能。出産準備から産後のケア、一般的な家事代行などの依頼も可能です。

キッズライン

キッズラインは株式会社キッズラインが運営する、ベビーシッターと家事代行サポーターの紹介サービスです。登録サポーターは全国47都道府県で4,000名以上。地域や用途に応じてベビーシッターと家事サポーターを選べます。

妊娠中や産後間もない時期の家事と子育てサポートをはじめ、保育園のお迎えから寝かしつけ、お子様の急な発熱やケガなどにも対応可能。通常の家事代行や英会話レッスンも可能です。入会金と登録料は無料。1時間1,000円(手数料別)からご利用できます。

キッズライン | ベビーシッターマッチング・病児保育/一時保育

miraxs(ミラクス)シッター

miraxsシッターは株式会社ミラクスが運営するベビーシッター派遣サービスです。対象区域は東京23区と川崎市および横浜市。シッターは子育て経験者やベビーシッター認定資格者はもちろん保育士や看護師なども多数登録しています。

サービスプランはベビーシッターコースとマザーヘルパーコース、病児ケアコースの3タイプ。乳児から小学生まで24時間・365日いつでも子育てのサポートが可能。専任コーディネーターが依頼者の要望に合わせて最適なシッターを手配します。

料金はベビーシッターコースで入会金22,000円。年会費13,200円。シッター料金は平日9:00~18:00で1時間2,200円となっています。

東京・神奈川・埼玉・千葉のベビーシッターサービスmiraxs(ミラクス)シッター

子供服レンタルサブスクの紹介

洋服は季節やTPOに合わせていくつも用意しなければなりません。でも子どもは成長が早く、すぐ着られなくなってしまいます。そんな問題を解決してくれるのが子供服のレンタルサブスクリプションサービスです。

「サブスクリプション(subscription)」とは「定期購入」のこと。日本では「サブスク」の略語でおなじみの定額料金サービスを意味します。ここで紹介するのは、いろいろな子ども服を定額料金でレンタルまたはシェアしてお得に利用できるサブスクサービスです。

コドめぐ

「コドめぐ」はモダラバ株式会社が運営する子ども服のサブスクサービスです。希望する服のサイズをリクエストするとスタッフが選んだ服を3ヵ月ごとに専用バッグでお届けします。服の返却期限はありません。気に入ればずっと着続けることも可能です。

着なくなった服は送付時の専用バッグで返送。「コドめぐ」でレンタルした服以外でも送ることが可能です。返送された服は『コドめぐ』提携のクリーニング店が洗濯・補修を行い、ほかのユーザーにシェアします。

コドめぐのサブスクプランは「お試しプラン」「BABYプラン」「TODDLERプラン」「JUNIORプラン」の4コース。「お試しプラン」以外はLINE申込みが基本ですのでLINEの友達登録から始めましょう。

コドモのめぐる服 ~「コドめぐ」~

Cariru(カリル)

Cariruは株式会社トレジャー・ファクトリーが運営するフォーマルドレス専門のレンタルサービスです。ドレスとアクセサリー、バッグ、靴などのセットプランをチョイスするとTPOとマナーに合ったコーディネートで全身一式そろいます。

大人のための洋服はレディス用だけですが、キッズ用は男の子と女の子用のアイテムをそれぞれ用意。ご利用の際は会員登録が必要ですが、登録料や会費はかかりません。会員登録後は専用サイトで商品とレンタル日数を選択して発注します。

結婚式パーティーのレンタルドレス・アイテムはCariru

 

知育玩具のレンタルサブスクの紹介

知育玩具のレンタルサブスクは子どもの知能の発達に効果的なおもちゃを定額でレンタルできるサービスです。サブスクのメリットは不要になったおもちゃを簡単に返却できること。子どもが興味をなくしたおもちゃの処分に悩む必要はありません。

知育玩具はふつうのおもちゃよりも高価ですが、サブスクなら安価で気軽に利用できるだけでなく、子どもの発育に応じた玩具を専門家が選んでくれるので、おもちゃ選びに悩むこともありません。

ここでは知育玩具のレンタルサブスクサービスを2つ紹介いたします。

ToySub!(トイサブ)

ToySub!は株式会社トラーナが運用する国内最大級の知育おもちゃ定額制レンタルサービスです。累計利用者は1万人を突破。世界中から集めた80,000点以上の知育玩具の中からお子様の成長に合わせてプロが選んだおもちゃを2ケ月おきにお届けします。

不要になった玩具はいつでも簡単に返却できるので収納にも困りません。気に入ったおもちゃは安価に買い取ることも可能。ToySub!の先進的なサービスは評価が高く、日本サブスクリプションビジネス大賞をはじめ数々の賞を受賞しています。

料金プランは全国一律・送料込みの統一金額で月額3,674円(税込)から。初月特別割引もあります。

おもちゃのサブスク定額レンタル【トイサブ!】

HappyToy(ハッピートイ!)

HappyToyは株式会社ユニットのハッピートイ事業部が運営する玩具定額制レンタルサービスです。知育玩具先進国のドイツやフランス、ベルギーなど海外メーカーの一流玩具を中心に、お子様の成長に合わせて最適なおもちゃをセレクト。2ヵ月間隔でお届けします。

対象年齢は4歳未満。玩具を壊したり汚したりしても弁償は不要です。お子様が気に入った玩具は特別価格で販売もできますので、お気軽にご相談下さい。料金プランは関東・東海・近畿・北信越地域で毎月払いが2,500円。年間払いが27,000円となります。

知育玩具 定額制レンタルサービス ハッピートイ! | HappyToy

行政サービス 東京都 家族ふれあいの日

ここでは行政による子育て支援サービスとして、東京都が実施する「家族ふれあいの日」について解説いたします。

東京都では都内で生活する親子のきずなを深めるために毎月第3土曜日と日曜日を「家族ふれあいの日」に設定。都内の美術館や博物館、庭園、ファミレスなどの協力企業と施設を家族で利用する際に優待券を提出すると、料金割引などの優待サービスを受けられます。

対象となる世帯は18歳未満のお子様連れの都民。割引・優待内容は施設によって異なりますので、事前にご確認下さい。なお令和4年度は新型コロナウィルスの感染状況をふまえて当面の間中止となっています。実施日については東京都のサイト等でご確認ください。

家族ふれあいの日|東京都生活文化スポーツ局

その他 神奈川県横浜市の子ども・子育て支援事業計画について

東京都に次ぐ人口を有する横浜市では、5年を1期とする「子ども・子育て支援事業計画」を推進しています。令和2年度より第2期計画に進展。第1期計画に続いて親子の居場所の実施数の拡充と機能強化を進めるとともに、支援の質の向上に尽力しています。

横浜市では市内18の各区に1ケ所、地域の子育て支援の中核を担う多機能型の支援拠点を設置。さらに市内 66 か所に常設の「親と子のつどいの広場」を運用しているほか、447 か所に子育てサロンを設置するなど市民の身近な場所で子育て支援を展開しています。

また子育て中の母親や家族などの仕事や入院等により一時的に家庭での保育が困難となった場合や、保護者がリフレッシュしたい場合などに児童の一時預かりや一時保育を行う制度も導入。母親の育児不安の解消と負担軽減を図っています。

横浜市子ども・子育て支援事業計画 横浜市

まとめ

妊娠や出産を機に休職・退職をした方の多くは産後に復職を望んでいます。しかしながら出産で体力が失われた状態で復職するのは容易ではありません。

いまや少子高齢化は国家の存亡を左右する問題となっています。そこで国や自治体では出産と育児をサポートするために金銭的な支援制度をはじめ、地域の子育て支援センターを全国に設置するなど、子育て支援制度の拡充に力を入れています。

さらに民間の企業や事業所なども子育てや復職に役立つさまざまな支援サービスを提供していますので、育児や家事と仕事の両立に悩んでいる方は積極的に利用することをおすすめします。