そもそも痛風とは?

痛風は血液中の尿酸が結晶化してアレルゲンとなり、腫れと激痛をともなう深刻な関節炎を引き起こす病気です。基本的に中高年の成人男性に多くみられる疾患ですが、近年では若年化も進んでいます。

痛風の症状

痛風の症状は手足や肩などの関節が炎症を起して赤く張れ、がまんできないほど激しい痛みをともなうのが特徴です。発症する部位は足の親指のつけ根やくるぶし、足の甲、膝といった脚部の関節が多く、肘や手首、肩関節など腕の関節にも発症します。

痛風の痛みの激しさは骨折よりも激しく、身動きもできないと言われるほど。発症する部位は初期の段階では1カ所に限られる場合が多く、患部の腫れと激痛に苛まれて身動きもならない状況が2日あまりつづきます。

多くの場合、症状は長くても1~2週間でおさまりますが、放置すると発作をくり返しながら悪化するだけでなく、腎臓結石など他の生活習慣病を併発する可能性が高くなるので注意が必要です。

原因は高尿酸血症

痛風の原因となる尿酸は「プリン体」の代謝で合成される有機化合物で、体内ではそれ以上は分解されず、老廃物として尿や便とともに排泄されるのが普通です。それが何かの原因によって体内に蓄積されて血液中の尿酸値が高くなると高尿酸血症と診断されます。

尿酸は溶解度が低く、血液中の尿酸が飽和状態になると結晶化して重力の作用で手足の先端に沈着。しかも手足は体温が低いために結晶が肥大化しやすく、それが破砕して関節液に混入すると、白血球の過剰反応による炎症性の痛風発作を引き起こします。

また痛風は男性患者が圧倒的に多いことも大きな特徴のひとつです。東京女子医大の調査によると男性の痛風患者の割合は実に98.5パーセント。女性が少ないのは女性ホルモンの「エストロゲン」に尿酸の排泄を促す作用があるためだと考えられます。

高尿酸血症は高い確率で痛風を発症するだけでなく、高血圧や高血糖、腎障害、尿路結石などの生活習慣病を併発しやすい危険も。高尿酸血症の人は食事を含む生活習慣を改善することが尿酸値の上昇と痛風などの予防になります。

プリン体と尿酸値

プリン体は動物・植物を問わず全ての生物の生命活動を支える重要な有機化合物の総称です。遺伝子でおなじみのDNAや、生物のエネルギー源となるアデノシン三リン酸(ATP)もそのひとつ。古い細胞が代謝によって分解されるとプリン体が生成されます。

一方、ATPは加水分解によって生命活動に必要なエネルギーを供給する物質です。分解されたATPはすぐに再生されますが、筋力トレーニングなどの無酸素運動で筋肉の代謝が活発になると、分解されたATPの一部はプリン体から尿酸へと変化します。

人間の体内で1日に生成される尿酸の量は約700mg。健康な人の排泄量もほぼ同量なので体内の尿酸値は一定に保たれますが、尿酸の過剰合成や腎臓の機能不全によって高尿酸血症になってしまうと、痛風の発症リスクが一気に高まります。

痛風の人が食べてはいけないもの

痛風の原因となる高尿酸血症は生活習慣病のひとつ。予防と治療には食事を中心とした生活習慣の改善が不可欠です。

 プリン体の多い食べ物は避けるべき?

痛風はかつてグルメに多いという意味で「贅沢病」といわれていました。実際にプリン体を多く含む食べ物は肉や魚など栄養価とうまみ成分が豊富な「ごちそう」が多く、日本食は西洋料理に比べてプリン体の含有量が少ない傾向があります。

痛風の原因となる尿酸はプリン体の代謝によって生成される物質です。そのためプリン体を多く含む食べ物は痛風に悪いといわれます。実際にはプリン体の80~90パーセントは体内で合成されるので、食品に含まれるプリン体を極端に忌避する必要はありません。

高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン「生活指導」

日本痛風・核酸代謝学会が発行する「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン」の「生活指導」によると、プリン体の1日の摂取量は400mg以下が目安。プリン体を多く含む食品をなるべく控えることが推奨されています。

また近年ではプリン体よりも肥満防止が重視されており、前述の「生活指導」でも、プリン体だけでなく果糖やアルコール類などの摂取制限と摂取エネルギー量の適正化、水分補給による尿量増加や有酸素運動の継続などの生活改善も合わせて推奨しています。

プリン体を多く含む食べ物

プリン体の1日の摂取量を400mg以下に抑えるのは決して難しいことではありません。プリン体が多い食べ物を控えることで無理なく達成することが可能です。

非常に多い(100gあたり300mg以上)

プリン体の含有量が非常に多い食品としては、鶏レバー、干し椎茸、ローヤルゼリー、あん肝などがあげられます。干し椎茸は乾物なので100gあたりの含有量は多くなりますが、水に戻せば数値は大きく下がります。

 かなり多い(100gあたり200~300mg)

プリン体を比較的多く含む食品には豚や牛レバー、カツオ、マイワシなど。魚も干し椎茸と同様に干物にするとプリン体の含有量が高くなります。プリン体は動植物を問わず細胞数の多い部位や、細胞分裂が盛んな組織に多く含まれます。

プリン体は食品のうまみ成分でもあり、栄養価が高くおいしいものほど多いといっても過言ではありません。しかも肉や魚や野菜などほぼ全ての食品に含まれています。プリン体が多い食品を制限すると食事が味気ないだけでなく、栄養不足にもなりかねません。

痛風の食事療法では、プリン体が多いというだけで特定の食品や食材を忌避するのではなく、飲みすぎ食べすぎを避けること、エネルギーと栄養バランスの取れた食事を毎日つづけることが重要です。

尿酸値を上げる飲み物

尿酸値を上げるのはプリン体を多く含む食品だけではありません。果糖を含む甘い飲み物やアルコール飲料にも尿酸値を上げる作用があるので注意が必要です。

果糖を含む甘い飲み物

「果糖」とは糖質の最小単位となる単糖類のひとつ。果物やハチミツに多く、体内に吸収されると肝臓で代謝されて乳酸などを生成。その際にアデノシン三リン酸が消費され、最終的に大量の尿酸を生成します。

また果糖の代謝で生成される乳酸には尿酸の排泄を抑制する作用があります。実際にジュースやコーラなどの甘いドリンクを大量に飲むと痛風の発症リスクが高まるという研究データもあるので注意が必要です

アルコール飲料

酒などのアルコール飲料も尿酸値を高める食品のひとつ。ビールなどは植物由来のプリン体を含みますが、問題はむしろアルコールそのものです。アルコールは体内に吸収されると肝臓で酵素によって分解されます。その際にATPを消費して尿酸の生成を促進します。

またアルコールは利尿作用が強く、血液中の水分を減少させて尿酸値を高めることも痛風発作の引き金になる要因のひとつ。高尿酸血症や痛風の人にとってアルコールは厳禁です。

高カロリーで太りやすい食べ物

痛風の食事療法では高カロリーで太りやすい食べ物を避けることも重要です。体重が増えるとエネルギー消費も増えて代謝が促進され、尿酸値を高める結果になります。尿酸値が高い人は適正な摂取カロリーを維持して体重の増加を防ぎましょう。

尿酸値を下げるために気をつけること

水分を十分にとる

尿酸の多くは尿とともに体外に排出されます。そこで尿量を増やせば尿酸値を下げることができます。水分摂取の目安は1日あたり2L。清涼飲料水やスポーツドリンクではなく、カロリーのない水やお茶を摂取するようにしてください。

またアメリカのコホート研究によると、コーヒーを多く飲む人は痛風の発症リスクが低いという調査結果が出ています。高尿酸血症の人は脂肪や糖分を控えてブラックで飲むのがおすすめです。

乳製品をとる

牛乳やヨーグルトに含まれるタンパク質には尿酸の排泄をうながす効果があります。牛乳の摂取は1日にコップ1杯が目安。肥満防止に効果的な低脂肪タイプがおすすめです。ヨーグルトもできれば低脂肪の無糖タイプを選びましょう。

なお豆乳には残念ながら尿酸値を下げる効果はありません。

適度な運動をする

痛風にはウエイトトレーニングのような激しい無酸素運動は禁物ですが、ウォーキングやサイクリングといった軽めの運動を長時間行う有酸素運動は、内臓脂肪や皮下脂肪を燃焼させて体重減少と尿酸値の低下につながる効果が期待できます。

また運動によって体力や筋力が向上するだけでなく、内臓が刺激されて腎臓の排尿機能が高まり尿酸の排泄量も増加します。

注意すべきは運動中に水分補給を怠らないこと。汗で血液中の水分が減少すると尿酸値が高まり痛風発作の原因になることも。また運動によって関節を動かすと、骨に付着した尿酸結晶がはがれて痛風を誘発する可能性もないとはいえません。

痛風や高尿酸血症の人はどんな運動をどれくらい行うべきかを医師や専門家に相談すると良いでしょう。

ストレスを上手に発散する

ストレスもまた尿酸値を上昇させる原因になります。名古屋大学の研究発表によるとストレスによって「XOR」という酵素が内臓脂肪や肝臓、小腸などに誘導され、尿酸値を上昇させることが解明されました。

また強いストレスや心理的な不安は身体だけでなく精神にも悪影響を与え、不眠や自律神経失調症、飲酒量の増加や暴飲暴食、摂食障害などの症状や問題行動を引き起こします。

高尿酸血症は痛風発作が発症するまではっきりした症状がありません。ストレスを抱えている方や自覚がある方は健康診断を受けて心身の状態を確認してください。そのうえで適度な運動を行ったり、趣味を持つなどしてストレス解消と気分転換を図りましょう。

まとめ

痛風は血液中の尿酸が結晶化して激しい関節炎を引き起こす病気です。原因となる尿酸はプリン体の代謝によって体内で生成されるため、痛風や高尿酸血症の患者はプリン体を多く含む食べ物を控える必要があります。

プリン体の含有量が多い食品にはレバーやあん肝、カツオ、マイワシなどがあります。プリン体の1日の摂取量は400mg以下が目安。また果糖やアルコール類も尿酸値を高める作用があるため摂取を控える必要があります。

高尿酸血症は痛風だけでなく、高血圧や高血糖などの生活習慣病や腎障害、尿路結石などを併発しやすい傾向があります。肥満やストレスも尿酸値を上昇させる要因になるので、暴飲暴食を控えるなど生活習慣を改善して尿酸値を適正水準に保つことが大切です。