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パン屋さんって儲かるの?パン屋開業の基礎知識を解説

シェアダイン編集部
作成日:2022/07/31
更新日:2022/11/01
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目次

パン屋さんは儲かるというのを聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。少しの小麦で大きく膨らむパンは、利益率が良さそうという印象を持たれることもあるようです。
この記事では、実際にパン屋さんは儲かるのかどうか、パン屋さんを開業するとしたらどんなメリットがあるのか解説します。
 

パン屋さんは儲かるのか

パン屋さんが儲かるといわれるのには、一般的にパンの原価率が安いという理由があります。しかし、これはあくまで一般的にというだけであって、使う食材やパンの製法にこだわればこだわる程、原価率が上がっていきます。また、従業員を何人雇うかによって、人件費もかかってくるので「パン屋だから儲かる」とは、一概にはいえません。

パン屋の全国店舗数

現在、全国にパン屋さんは10,000軒ほどあるとされています。2010年ごろから米の消費量をパンが上回り、パンの需要が増えてはいますが、パン屋さんの軒数は年々減少中です。工場生産のパンが増えているので、全体のパンの生産数は減っていませんが、後継者不足により町のパン屋さんの廃業が増加していることが、パン屋さんの軒数減少の要因となっています。
出典:統計局ホームページ/統計データ (stat.go.jp)

パン屋の平均的な収入

パン業界の年収は、雇用形態や店によって大きく異なります。パン職人として働く場合は300万円前後の年収が一般的です。開業した場合でも、350万円前後とそれほど高くはありません。
しかし、経営の仕方によっては年収1000万を超えるパン屋さんの経営者も存在しますので、経営の方針や売り上げ次第で大幅に変動します。
出典:賃金構造基本統計調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

パン屋の平均的な利益率

一般的な飲食店の原価率は30%ほどです。一方、パン屋さんのパンの原価率は10%程度と言われています。実際にはロスが多かったり、食材へこだわると原価率が高くなったりということがありますので、すべてのパン屋さんで10%程度の原価率というわけではありません。さらに、パン屋さんの開業にあたってはパン作りの設備に高額な費用がかかることが多いです。
キッチン、オーブン、ミキサー、発酵器、冷蔵庫、冷凍庫など、ある程度のパンを量産できるように、業務用ですべてを揃えるには相当な費用となり、これらの設備費用に加えて、凝った店舗デザインを希望するだけで数百万円以上のお金がかかります。パン屋さんの開業は、初期費用が相当かかるといえます。
また、店内に多くの種類のパンを並べるためには、それだけ時間と手間がかかりますが、ひとつひとつの商品単価が低いため、客単価を上げる努力も相当必要になります。
そもそもパン屋さんは、朝からパンの仕込みをして、閉店後に片付けや翌日の仕込みもして、体力的に負担も大きい職種であることを念頭に置いておきましょう。

パン屋を開業するメリットとデメリット

パン屋さんを開業しても、1年以内に6割ほどが閉業すると言われています。せっかくパンが好きで開業してもすぐに閉業という事態にならないように、事前に開業するにあたってのメリットとデメリットを把握しておきましょう。

パン屋を開業するメリット

やはり、一番メリットとしては、自分のこだわりを詰め込んだ思い通りの店を作れるという事です。パン屋さんは、子供の将来の夢ランキングでは、常に上位に入ってくる職業です。自分の描いた夢を実現し、自分のこだわりを追求したパンを焼いてお客様へ提供できます。パンのメニューはだけでなく、内装や外装、パン紹介のポップ、制服など、すべてを理想の形にすることができます。
誰かに雇われている状態ではできなかったような製法を試したり、原価率の制約で作れなかったようなパンも作ったりすることができるようになります。
また、人間関係も自分が中心になって作っていくことができ、自分一人でこぢんまりとしたお店をやるのか、従業員をたくさん雇えるような規模のお店にするのかも、自分で決めることができます。

パン屋を開業するデメリット

メリットは様々な決定権が自分にあるということになりますが、デメリットも多くあります。
まず、個人店のパン屋さんはもちろん、コンビニエンスストア、大手メーカー、スーパーなどで手軽にパンを買える時代であることから、競合やライバルが多いということが挙げられます。パンの需要が増加傾向にあり、パン屋さんにわざわざ行かずともパンを買うことが出来ます。
さらに、飲食業界全体に言えることですが、食材価格の高騰に加えて、世界的な天候不順などで輸入小麦の価格が毎年のように高騰しています。バターなどの油脂の価格なども年々上昇し続けていることにより、パンの価格の高騰に繋がっているのです。ほかにも、野菜や果物の価格も、農業に関わる人件費と肥料の高騰や異常気象による不作などで高騰しているものもあります。
加えて、近年、最低時給が上がり続けているため、従業員を雇う場合には人件費を効率よく使うことが大事になります。アルバイトを教育するためのマニュアルの準備や、メニューの提供方法の工夫なども必要です。
このように食材や人件費が高騰している上に、パン屋さんは廃棄(ロス)が多く出ます。パン屋さんに訪れる人は「焼きたて」を求めているので、閉店間際の冷めたパンの売れ残りを目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。パンになる前の小麦の状態であれば長期保存ができますが、一度パンとして焼き上げてしまえば当然保存はききません。廃棄分を加味して利益率を考えると、それほど高いとは言えません。

パン屋開業のための手順

必要な手続き、資格

パン屋を開業するまでに、必要となる資格は「食品衛生責任者資格」のみです。店舗の衛生管理と教育を目的としている資格で、食べ物を扱う店舗では必要不可欠な資格となります。このとき、調理師や栄養士の資格保持者は、「食品衛生責任者」の講習を受ける必要はありません。
必要となる手続きは、どのような業態をとるかによって変わります。
菓子パンの製造と販売のみを行う場合は「菓子製造業許可」、調理パンの製造や、イートインスペースを設けて店内飲食もできるようにする場合は、追加で「飲食店営業許可」も必要です。
どちらの場合でも、保健所への「営業許可申請」の手続きを行います。店舗の場所などが決定したら、保健所へ書類を提出します。店舗の完成後に保健所による検査が行われ、保健所の条件を満たしていれば、営業許可を取得できます。
「菓子製造許可」は、ジャムや果物が乗っているデニッシュのような菓子パンなどだけでなく、アンパンやクリームパンも菓子パンとなるため、菓子製造業という区分になります。パン生地を仕入れて、店内で焼成だけでも、菓子製造許可が必要なので注意が必要です。
イートインできるスペースを設けたり、サンドイッチ等の調理パンを製造販売したりする場合は、「飲食店営業許可」と「菓子製造業許可」が必要になります。このとき、ちょっとしたカフェスペースを設けるだけでも、飲食店や喫茶店と判断される場合もあるため、申請は必ずしましょう。
また、個人業の場合は「開業届」を提出して、確定申告を行うことも必要となってきます。保健所からの許可が下りた後に、開業届を税務署に提出する流れになり、この際に確定申告の申請書も提出できるよう準備しておくと安心です。

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必要な厨房設備

一般的にパン屋さんが用意する厨房機器を紹介します。お店の規模によって使用していない設備もあります。

  • ミキサー…パンの元となる生地を作るために、小麦粉と水、イーストなどを混ぜる機械です。ボウルの大きさによって、一度に作成できる記事の量が変わるので、効率よく作業が進められるサイズにしましょう。
  • モルダー…「ガス抜き」と「成形」を行なうための機械です。生地をシート状や、ロール状に成型することが出来ます。
  • 冷蔵庫・冷凍庫・ショックフリーザー(瞬間冷凍機)
  • オーブン…パンを焼くための機械です。2段式、3段式などがあります。サイズも様々なので、厨房のサイズやどれくらいのパンを店頭に並べたいかを考えて選びましょう。
  • ホイロ(焙炉)…パンの生地を発酵させる機械です。発酵の工程そのものをホイロと呼ぶこともあります。
  • フライヤー…揚物を作るための機械です。カレーパンやドーナツなどの揚げ物を作るのであれば、フライヤーが必要となります。油のろ過装置が付いているものもあります。
  • バケットモルダー…食パンや、フランスパンの成形をする際に必要な機械です。
  • ドゥコンディショナー…パン生地の温度管理・湿度管理から発酵までを一括で管理ができる機械です。また、生地だけでなく酵母の培養としても利用が可能です。


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パン屋を成功させるためにできること

パン屋を成功させるためには、パン屋を開業する前に、しっかりとコンセプトを固めておきましょう。どのようなこだわりを表現したいのか、食材の産地はどうするのか、テイクアウトのみかイートインできる店舗にするのかなど、コンセプトは様々です。このコンセプトがぶれてしまうと、お客様も混乱し「またこのお店にパンを買いに来たい」とは思えなくなってしまいます。
初期費用については、コンセプトを固めてから考えましょう。先述したように、パン屋さんの開業には高額な初期費用の準備が必要です。この初期費用を抑えるには、パン屋さんの居抜き物件を借りる、機材を中古品で揃える、内装や外装をDIYで整えるなどの方法があります。

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まとめ

パン屋さんは必ずしも儲かるとは言えませんが、パンの需要は年々上がってきています。経営がうまくいけば、高い収入を得ることもできます。初期費用が高いなど、デメリットにも目が行きますが、自分のこだわりを形にできる職業です。夢を持ってパン屋さんの開業を目指す場合は、しっかりとコンセプトを熟考し、資金繰りの計画を立ててから行動に移しましょう。

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