最近、絵本にはまる大人が増えているって、知っていますか? 大人になったからこそ見えてくる絵本の良さに気づいた人が多いようですよ。クスリと笑わせながら、実は奥深い絵本も増えていますね。もちろん、本来は子供向けに作られている本ですから、子供たちにはいろんなシーンで触れて欲しいですね。そのひとつが「食育」です。近年、残念な事に、子供たちは加工されていない「生」な食材に触れる機会が、加速度的に減ってきています。肉が赤い色をしていることを知らなかったり、チューブではないショウガを食べたことがない、丸ごとのスイカを見たことがない……なんてことも! 核家族ではなかなか丸ごとスイカは食べきれないし、便利な加工品が山ほど流通しているのですから、使いたくなります。ただその一方で、自分の体を作っていく食の大切さ、生産者への思いや食環境への意識を育む「食育」も子供には伝えていきたいですよね。そんなときには絵本を活用してみませんか? 日本人なら知っておきたい食育絵本をご紹介します。

なぞなぞみたいに楽しい! 断面で野菜に興味がわく秀逸絵本

『やさいの おなか』

  • 作・絵 きうち かつ
  • 出版元 福音館書店
  • 価格 1,080円(税込)

野菜の断面を見せて「これ なあに」というクイズ形式の絵本。断面を見てすぐにわかるレンコン・タケノコから、やや難しめなネギやニンジンなど、11の野菜が登場します。なにせクイズなので、2歳くらいから喜びます。この絵本が食育にぴったりの理由。それは、単に野菜の名前を教えるのではなく、断面を見せることで、実際に親子で試したくなる工夫がある点です。この絵本を読むと、絶対やりたくなりますよ。まず丸ごとの野菜を買ってきて、丸ごとの野菜の手触りや重みを感じながら、いよいよ切ってみる。サクッと音がした? それともガシガシ? 切った瞬間には、それぞれの野菜特有の匂いがするでしょう。『やさいのおなか』は視覚ばかりではなく五感を刺激する、よくできた食育絵本なんですよ。

子供と作ろう! 季節の味を残したくなる絵本

『よもぎだんご』

  • さく さとうわきこ
  • 出版元 福音館書店
  • 価格 972円(税込)

子供たちに大人気の「ばばばあちゃん」のシリーズの一冊です。庭で泥だんごを作っている子供たちを見て、ばばばあちゃんは本物のだんごを作ろうと、子供たちを野原や川べりに連れ出します。ヨモギはもちろん、ナズナやセリなど山ほど摘んで、和えたり、だんごにしたり。みんなで摘んで、作って、食べる。一連の様子がとっても楽しそう。町暮らしをしていると、いえ、町じゃなくても、こんな風にヨモギを摘める環境にある人は、もう少なくなっています。それに、もしそこらでヨモギを見つけたとしても、口に入れることにためらいがあったりしますよね。

この絵本の手順通りに作ると、本当によもぎだんごは完成します。ほんのり苦みのある味は、どんなことがあっても、春を感じさせてくれますね。いまはネットでヨモギ自体は簡単に手に入りますので、ぜひ作ってみてください。春に限らず、季節ごとの思い出の味を子供には残していきたい……。この絵本は、そのことに気づかせてくれる絵本です。

47都道県の食文化が見えてくる! ぜんぶ食べたくなる写真絵本

『にっぽんのおにぎり』

著者 白央篤司

出版元 理論社

価格 1,080円(税込)

おにぎり! おそらく日本人で食べたことのない人はいないと思います。そのおにぎりにも、日本各地でその土地ならではの具材や握り方があるんですって。この写真絵本では、47都道府県、それぞれの土地で愛されているおにぎりが、地図とともに紹介されています。例えば、岩手の「すじこのおにぎり」、長野の「野沢菜のおにぎり」、愛知の「天むす」、鹿児島の「豚味噌おにぎり」………。形もイロイロです。まん丸だったり、三角、俵型、平べったいのもあり、海苔が巻いてあるのもないのも、本当にイロイロ。いまはたいていの食材が、どこにいても手に入る時代ですが、やっぱりその土地で収穫したものを食べたら、おいしいに決まってますよね。

子供は、きっとこの絵本を通して、我が家の見慣れたやり方以外がたくさんあることを知ります、具材も握り方も。そして、日本各地に特産品があって、それをその土地の誰かが食べているんだなあ、どんな味がするんだろうなあと、リアルな写真絵本でありながら、逆に想像力を働かせてくれるでしょう。大人にもじゅうぶん見ごたえのあるおすすめ絵本です。

絵本を活用して、気軽に食育してみましょう

 

今回は幼児さんから小学生くらいまでで読める食育絵本をピックアップしてみました。

  • 『やさいのおなか』
  • 『よもぎだんご』
  • 『にっぽんのおにぎり』

どの絵本が気になりましたか?

『やさいのおなか』は、野菜の断面なんてふだんは気にせず調理してますから、意外な姿に大人も思わず「ああ~」と声を出すくらい新鮮な発見があります。こんな風に、ご紹介したおすすめの3冊は、なにかを「教えよう」という内容ではなく、親子で一緒に楽しみながら親子で一緒に知ってみようという絵本ばかり。親が「へえ、そうなんだ!」って言ってると、子供って秘密を共有した気分になるみたいで……とっても喜ぶんですよ。子供のための食育ではなく、親子で一緒の食育に、絵本をうまく取り入れてくださいね。

ライター紹介 絵本de子育てコーチ 大久保徳久子
絵本・児童書の編集の仕事に30年携わり、JPIC読書アドバイザーの資格を持つ。雑誌やwebで絵本紹介を担当するほか、絵本のある子育てを応援するために親向けの講座を開催、図書館や児童館などにも出向く。「絵本で発見!子育てのヒント」「本好きの子どもを育てる絵本の読み方・選び方」「えほんお茶会」「ベビーマッサージ×絵本の時間」等の講座を通じ、多くの親子に絵本の力を普及し続けている。また、コーチングの資格も有し、コーチングを通した親支援も行う。公式ブログはこちら。