妊娠は「おめでた」とも言うようにとても喜ばしいことですが、仕事を持つ女性の中には、産前産後の生活や経済面を考えると心配になる、という方も少なくありません。こうした不安を軽減するために、国や自治体ではさまざまな妊産婦サポートを行っています。

そこでこの記事では、妊娠出産にかかわる金銭的な支援制度をはじめ、妊娠から子育てまで切れ目のない支援を提供する各種サポートサービスについてくわしく紹介いたします。

分娩にかかわる金銭的支援

妊娠出産は病気ではないため、経過が順調であれば公的医療保険は適用されません。そこで国や自治体では妊産婦と家族の経済的な負担を軽減するために、出産と育児にかかわる金銭的な支援制度を設けています。

ここでは妊婦健診などの助成制度と出産育児一時金、および出産手当金について個別に解説いたします。

妊婦健診などの助成

妊娠をしたら所定の医療機関で定期健診を受けて、経過が順調かどうか、妊婦と胎児の体調に異常がないかどうかを確認しなければなりません。しかしながら前述のように妊娠出産に要する費用は基本的に自己負担となってしまいます。

そこで市町村などの自治体では妊婦検診14回分の費用を助成する制度を設けています。妊娠がわかったら地元の市区町村の窓口に妊娠届を提出しましょう。窓口では母子健康手帳とともに妊婦健診を公費の補助で受けられる受診票が交付されます。

妊婦健診は経過が順調であれば妊娠27週目までは4週間に1度。妊娠後期の28~35週目までは2週間に1度。臨月となる36週目以降は週1度検査を行います。最初の健診が妊娠8週目であれば受診回数は合計14回となるので受診票で全てまかなうことができます。

里帰り出産で帰省する方は、住所地と帰省地双方の区市町村の母子保健担当窓口に連絡して助成制度の手続きや詳細について確認しましょう。ほかにも妊娠や出産に関する悩みや不安などがあれば遠慮なく相談してください。

なお公費による助成制度には金額の上限枠があり、実費がそれを超えた場合は自己負担となるので注意が必要です。

出産育児一時金

国民健康保険など公的医療保険に加入している女性が出産すると赤ちゃん1人あたり42万円が支給されます。ただし産科医療補償制度に未加入の医療機関で出産した場合は産科医療補償制度の掛金1万2千円を差し引いた40.8万円が支給額となります。

産科医療補償制度とは、出生児が重度の脳性マヒとなった場合に家族の経済的負担を軽減する補償制度のこと。詳細や加入分娩機関の検索については、公益財団法人日本医療機能評価機構の産科医療保障制度のホームページをご覧下さい。

参考:公益財団法人日本医療機能評価機構の産科医療保障制度

出産育児一時金は公的医療保険に加入している母親が妊娠4ヶ月(85日)以上で出産した場合(死産や流産等も含めます)に支給されます。支払方法は、医療機関が請求と受取を行う「直接支払制度」と、母親が医療機関に受取を委任する「受取代理制度」があります。

いずれも出産育児一時金が直接医療機関等へ支払われるため、妊婦が高額な出産費用を事前に準備する必要はありません。出産費用が出産育児一時金の支給額より少なかった場合は、差額が母親や家族に支給されます

何らかの事情で直接支払制度や受取代理制度を利用できない場合は、加入する健康保険組合等に直接請求して支給を受ける方法も選択できます。

出産手当金

出産手当金は国民健康保険以外の健康保険の加入者が出産のために仕事を休み、その間の給与が得られなかった場合に支給されます。対象期間は妊娠が判明した日から出産の翌日以降56日目まで。その間の休業で減った収入を補うために出産手当金が支給されます。

1日あたりの支給額は、支給開始日以前の12ヶ月間に継続して受け取った給与の平均月額÷30日×2/3で算出。要するに会社を休む前の1年間に継続して受け取った給与日額の3分の2が支給額です。

休業期間中も給与や報酬を受け取った場合は、その額が出産手当金の支給額よりも少なければ差額分が支給されます。出産手当金は社会保険(健康保険)に加入する労働者を対象とする手当金です。国民健康保険の加入者は対象外となります。

地域子育て支援センター(子ども家庭支援センター)の概要

地域子育て支援センターは厚生労働省の通達を受けて全国の市区町村が開設している子育ての支援拠点です。子どもをめぐる家庭や社会の環境が大きく変化する中で、子育てをする親の不安や孤独感を緩和するために乳幼児と保護者が交流できる場を提供しています。

事業目的は子育て中の親子の交流促進と子育てに関する相談と援助、情報などの提供、および健やかな子どもの養育を支援すること。自治体によっては「こども家庭センター」や「子供家庭総合センター」などの名称で同様の支援活動を行っていまます。

運用拠点は全国で約8000カ所におよび、就学前の子どもたちがいっしょに遊んだり、保護者同士が交流したり、育児の相談や指導も受けられるスペースとなっています。くわしくはお住まいの自治体の窓口にお問い合わせてください。

出産にかかわるサービス紹介

子育ての孤立化で妊娠や出産、育児に不安を抱える女性は少なくありません。こうした女性と家族の悩みを解消するために、民間企業もさまざまなサービスを提供しています。ここでは出産と育児にかかわるサービスをご紹介します。

陣痛タクシー

「陣痛タクシー」は日本交通株式会社が提供する妊婦のための緊急送迎サービスです。日本交通株式会社は首都圏を中心にハイヤー・タクシー事業を展開する会社。陣痛タクシーのサービス対象エリアは東京23区と三鷹市、武蔵野市となっています。

利用したい方は事前に自宅の住所と連絡先、かかりつけの医療機関などを専用サイトで登録してください。急な陣痛時でも対応できるようにオペレーターが専用の電話回線で常時待機しています。妊婦の住所や出産予定の病院を登録しているので迅速な送迎が可能です。

日本交通株式会社の「陣痛タクシー」は首都圏限定ですが、ほかにも全国のタクシー事業者がマタニティタクシー、マタニティマイタクシーなどの名称で同様の搬送サービスを展開しています。

事業所によっては妊婦だけでなく、乳幼児を持つ家庭を対象にしたママサポートタクシーサービスを実施。定期検診や日常的な買い物にも利用可能。子供の急な発熱などの緊急時には夜間でも通常料金で利用できるほか、繁忙時でも優先的に配車します。

利用したい方は電話帳などで地域のタクシー事業者を調べてお問い合わせください。

参考:陣痛タクシー | タクシーなら日本交通

宅食系サービス

宅配食の定期サービスは社食などでおなじみですが、近年では産前産後のママを対象にした宅配食サービスが増えています。身重で行動が制限される妊婦や、育児で食事の用意が満足にできないママの負担軽減と、健康的な食生活の実現に役立ちます。

宅食系サービスを大きく分けると、できたてや冷凍の弁当を定期的に配達する宅配食サービスと、野菜や肉などの食材を宅配するミールキットサービスのふたつが主流。冷凍弁当などの宅配食は電子レンジで温めるだけでおいしい料理が食べられます。

ミールキットは下処理された食材を自分で調理するタイプ。添付のレシピどおりに調理すればおいしい料理が作れます。調理が面倒ではありますが、料理スキルの向上にもつながりますので、産後の体の回復に合わせて併用すると良いでしょう。

ここでは妊産婦におすすめの宅配食サービスを2つご紹介します。

nosh(ナッシュ)

「nosh」は大阪府のナッシュ株式会社が提供する定期購入の食品宅配サービスです。自社の管理栄養士と一流シェフが開発したメニューは和・洋・中合わせて60種類以上。しかも毎週3品を新メニューに入れ替えるので、マンネリ化の心配もありません。

料理は全て自社工場で調理して冷凍します。安全な食材を使って1食あたり糖質30g以下、塩分2.5g以下に設定。低糖質のデザートも豊富です。配送間隔は週1回から3週間に1回までの定期配送。食数は6食・8食・10食の3コースで日本全国に配送可能です。

定期配送価格の目安は、6食プランで1回分が4,190円、2回分が8,380円、3回分は12,570円。10食プランでは1回分が5,990円、2回分が11,980円、3回分が17,970円となります。

【nosh-ナッシュ】ヘルシー・糖質に配慮した食事宅配サイト

ヨシケイ

静岡県のヨシケイグループが提供する料理宅配サービスはミールキットが主体。妊婦や産後のママ向けのプチママコースはおいしくて栄養豊富な料理の食材をレシピ付きで毎日お届けします。レシピは動画で早わかり。ビギナーでも20分で2品作れます。

さらに大人用の料理を取り分けて離乳食も合わせて作れるレシピも用意。離乳食レシピは成長に合わせて4コース。レシピのダウンロードも可能です。入会金は無料。初めての方には5日間、1メニューをお得な価格で試食できる「お試し5days」も提供しています。

配達エリアは全国ですが、一部、対応できない地域もあります。

食材(ミールキット)宅配サービス:ヨシケイ

家事代行サービス

家事代行サービスは買い物や料理、洗濯、掃除などの家事全般を、プロのスタッフが代行するサービスです。妊娠期から産後にかけての時期は思うように体を動かせず、多くのママがワンオペ育児と家事の両立を迫られてつらい思いをしています。

家事代行サービスは一般的な家事のほか子育て支援プランとしてベビーシッターなどの代行サービスも多くの業者が提供しています。地域によっては家事代行サービスや産前産後のケアサービスを金銭的に補助していますので確認するとよいでしょう。

株式会社ダスキン

株式会社ダスキンはハウスクリーニング業界のパイオニア企業。玄関マットなどの販売・レンタルでおなじみですが、同社が提供する家事おてつだいサービス「merry maids(メリーメイド)」は年間人気ランキング1位の実績を誇ります。

「メリーメイド」はご家庭の要望に合ったオーダーメイドの組み合わせで依頼が可能です。産前産後の家事代行サービスではマタニティママ応援プラン。赤ちゃんを迎える部屋を中心に掃除するウェルカムベイビー応援プラン、育休復帰応援プランなどを用意しています。

料金はマタニティママ応援プランで税込み7,700円から。地域やプランの組み合わせによって料金が変わります。

家事おてつだいサービス merry maids | ダスキンスペシャルサイト

ぽっかぽか株式会社

ぽっかぽか株式会社は東京・神奈川地域を対象に家事代行・家政婦サービスと産後支援サービスを提供しています。ハウスキーパー(家事代行)は掃除や洗濯、食事の支度などを代行。産前産後のママには保育と家事の両方を支援するマザーリングサービスを提供しています。

利用料金はマザーリングで、入会金10,000円(税込11,000円)。年会費はかかりません。利用料金は時間帯によって変わります。19:00 から 23:00では会員料金が1時間あたり3,000円。非会員のビジター利用料金は1時間あたり4,000円となっています。

ぽっかぽかのサービスは、中央区育児支援ヘルパー事業、杉並区産前・産後支援ヘルパー事業を受託運営しています。対象の地域区にお住まいの方は、それらの支援事業によって料金の補助を受けられます。

東京の家事代行ぽっかぽか – 産前産後・ベビーシッター・家政婦

東京都出産応援事業

日本の出生率低下が進む中で、多くの地方自治体が子育て支援策を講じています。東京都ではコロナ禍での出産と育児を支援するために「東京都出産応援事業 ~コロナに負けない!~」と銘打った支援策を展開。育児用品や家事・育児等の支援サービスを提供しています。

具体的には、出生時に居住する都内の区市町村を通じて、対象家庭に専用IDを記載したカードを配付。専用ウェブサイトから申し込んだ対象者に新生児1人当たり10万円相当のポイントを付与して、希望する育児用品および子育て支援サービスを提供します。

育児用品はベビー服やおむつ、離乳食、知育玩具、ベビーカーなど。支援サービスは家事・育児の支援サービス、ベビーシッターなど700点以上から選択できます。

対象家庭は令和3年1月1日から同年3月31日までの間に出産し、出生日及び令和3年4月1日に出生した子供を含む住民登録が都内にある世帯。または令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に出産し、出生日に、出生した子供を含む住民登録が都内にある世帯です。

さらに東京都が実施中の子育て支援等の情報提供を専用サイト上で行うとともに、都内在住の子育て家庭を対象にアンケートを実施。より具体的な子育てニーズを把握することで今後の施策立案と改善に活かす方針です。

東京都出産応援事業

その他:厚生労働省の妊娠・出産包括支援事業を活用した自治体の取り組みについて

日本では高度成長期から核家族化が進み、人と地域のつながりが希薄化したことで妊婦や産後の母親が孤立感や育児不安に苛まれるケースが増えています。その解消には結婚から妊娠出産、子育てにいたるまで切れ目ない支援策を地域レベルで強化することが重要です。

そこで厚生労働省は2014年に「妊娠・出産包括支援モデル事業」を創設。それまでは妊娠から子育て期までの支援を個別の機関が展開していた状況を改善するため全国に子育て世代包括支援センターを設立。全ての支援を一拠点で提供できる体制作りを進めています。

子育て世代包括支援センターには保健師やソーシャルワーカーを配置。妊娠、出産、子育てまで切れ目のない支援を行うことで、地域における子育て世帯の安心感を醸成しています。

ここでは子育て世代包括支援センターにおける活動の一例として、愛知県春日井市の取り組みについてご紹介します。

春日井市では「子はかすがい。子育ては春日井(かすがい)」をテーマに、妊産婦のケアに重点をおいた切れ目のない妊娠・出産支援の充実を図っています。その一環として、子育て支援の対象を「母子」ではなく「母」にスポットをあてた取り組みを実施中です。

毎日の子育てに疲弊した母親を一時的に子供から離してケアすることで、育児の疲労やストレス、不安などを軽減するとともに、安心して子育てに向き合える健康的な環境の構築をめざしています。

産後ケア事業では宿泊型とデイサービス型の2種類を同時に設立。産後の不安定な時期に母親に対する専門家の適切で積極的な介入が容易になり、切れ目ない支援サービスの提供を可能にしました。関係機関の連携を強化することで虐待予防にもつながっています。

妊娠・出産包括支援モデル事業の取組事例集 – 厚生労働省(pdfファイル)

まとめ

妊娠は喜ばしいことですが、仕事を持つ女性の多くが産前産後の生活や経済面に不安を抱えています。そこで国や自治体では妊娠出産にかかわる金銭的な支援制度をはじめ、地域の子育て支援センターを全国に設置するなど子育ての支援を行っています。

また民間企業や事業所も陣痛タクシーや宅配食、家事代行など子育ての負担を軽減できるさまざまサービスを提供しています。

シェアダインの産前産後・離乳食プランについて

シェアダイン日本最大級の出張シェフサービスで、管理栄養士から一流レストラン出身シェフまで1,800名のシェフが登録しており、プランには産前産後・離乳食をとりあつかったものもございます。

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