若年化が進む痛風、気をつけるポイントは?

忘年会や新年会が続く、年末年始。ついつい、食べすぎたり飲みすぎたりしがちですよね。この時期に気をつけなければいけないのは、体重増だけではありません。とくに気をつけたいのが「痛風」です。

よく聞く言葉ですが、痛風を患っていても外からは元気に見えるので、軽く考えられてしまうことも。でも、じつはとても怖い病気です。

血液中の尿酸値が高い状態が続く「高尿酸値血症」になると、関節や皮下などの組織に「尿酸塩」というトゲトゲした結晶が沈着して、急激な関節炎を起こすのが、痛風の症状です。この結晶が尿路にできてしまうと「尿路結石」となり、激痛に襲われてしまいます(実際には、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムも混ざっていますが、尿路結石は通風の合併症といえます)。

尿酸値を下げれば、発症しないという仕組みはわかっていても、暴飲暴食が続くと、痛風のリスクが一気に高まってしまいます。

最近では、痛風発症患者の若年化が進んでいるとの指摘も。「単なる痛風だから」と放置してしまうと、腎機能低下から腎障害を引き起こしたり、メタボリックシンドロームの要素として動脈硬化性疾患へ移行したりする可能性があります。

そもそも食べすぎ飲みすぎは何らかの負担を身体にかけるものですが、尿酸値を上げないためには、とくにどんなことに気をつければいいのでしょうか。ポイントは2つ、高プリン体食品を控えること、そして尿酸を排泄できる身体作りです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

魚卵や干物、レバーの食べ過ぎに注意!

■プリン体の多い食品を控える

尿酸値を上げやすいと言われているのが、プリン体です。じつはこのプリン体、旨味の成分であり、核酸中に多く含まれているもの。そのため細胞数の多いもの、細胞分裂の盛んな組織に多く存在します。細胞核の数=プリン体の数なので、プリン体の数で比べると「たらこ>鶏卵」となります。

毎年冬になると、白子やあん肝、ウニなどがふんだんに使われた鍋料理が「痛風鍋」と呼ばれてSNSでも話題になったりしますが、「魚卵を食べすぎると痛風になる」と言われているのは、細胞の数ゆえですね。

高プリン体食品は、動物の内臓や魚の干物にも多く含まれています。もともと尿酸値が高い人はこうした食品をを極力控えて、プリン体の摂取量が 1 日 400mg を超えないようにしましょう。 そうでなくても、高プリン体食品(100g 当たり 200mg 以上のプリン体を含むもの)は食べる量を控えるのがよいそうです。

プリン体が多く含まれている食品の例

・鶏レバー:312.2mg
・まいわし(干物):305.7mg
・いさき白子:305.5mg
・あんこう肝(酒蒸し):399.2mg
・豚レバー:284.8mg
・牛レバー:219.8mg
・かつお:211.4mg
・まいわし:210.4mg
・大正えび:273.2mg
・まあじ(干物):245.8mg
・さんま(干物):208.8mg

*出典:『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版』より(100g当たりの含有量)

■プリン体は水溶性、鍋の煮汁にも注意

尿酸値を上げやすいプリン体ですが、核酸系であるイノシン酸やグアニル酸の旨味成分に多く含まれているので、出汁好きの日本人としては出汁を取る素材にも、ちょっと気をつけるといいかもしれません。

プリン体は加熱しても減りませんが、水溶性のため「茹でる・蒸す・煮る」ことによって、量を減らすことができます。細胞を断ち切るように食材をカットするといった工夫によって、溶け出す量が違ってくるそうです。

逆に、プリン体が溶け出した煮汁に注意です。煮物や鍋料理は、煮汁にプリン体が溶け出ていますので、なるべく煮汁を飲まないようにするのも効果的といえます。

プリン体を多く含む食材は、鍋に入れるととってもいいお出汁が出るような誘惑の食材が多いですよね。「〆の雑炊も最高!」って盛り上がりますが、それが「プリン体、増し増し」の状況になります。美味しいわけですから、食べるなとは言いません。でも、食べるならそのことを意識して、年末年始だけでなく、日々の生活でもフォローしてほしいと思います。

■単なる厄介者ではない、プリン体の重要な役割

プリン体の摂取量に気をつけることはもちろん大事ですが、旨味成分ですので、減らしすぎると料理の美味しさを感じられなくなって、ストレスを生じることもあります。

 厄介者のように思われがちなプリン体ですが、じつは生物が生きていくうえで遺伝情報やエネルギー源を担う大切な役割を果たしています。プリン体は、あらゆる生物の体内に存在しています。小さな細胞のひとつひとつに備わっているということは、それだけ生き物にとって大切な物質ということになります。

これはあまり知られていないことかもしれませんが、プリン体は体内で合成されています。 じつは食事から摂取したプリン体が占める割合は、体内にあるプリン体全量の約2割。含有量に差はあるとはいえ、ほぼすべての食品にプリン体は含まれていますから、気にしすぎると、逆に全体の栄養バランスを崩す恐れがあります。

プリン体に過敏になりすぎるのではなく、幅広い食材を適量食べるように心がけることが大切だと言えます。

水分、野菜や海藻で、尿酸を体外に出す!

■水やお茶をたくさん飲む

尿酸を排泄できる身体作りの第一歩は、水分摂取から。高尿酸の9割は、尿酸の排泄がうまくいっていないそうです。

水やお茶をたくさん飲んで、尿の量を増やすことで尿酸の排泄が促されれば、尿酸が薄まって尿路結石もできにくくなります。重い腎臓病や心臓病のある方は注意が必要ですが、そうでなければ、水分をこまめに補給しましょう。

水分といっても、気をつけたいのが、お酒です。お酒を飲むと、水分補強どころか、逆に利尿作用が働き、尿酸が処理される前に尿だけが排泄されてしまいます。尿酸は体内に残り、体は脱水症状に。体内の尿酸値が上昇してしまいます。お酒を飲んだ翌日に、痛風の発作が出る人は多いのは、そういうわけなのです。

忘年会や新年会でお酒を飲むときは、飲酒量を控えるだけでなく、飲む前や飲んでいる間、飲んだ後にもきちんと水分補給することを忘れないようにしましょう。

■野菜や海藻を毎日食べる

尿酸は酸性の液体には溶けにくく、アルカリ性の液には溶けやすいという性質があります。健康な人の尿は弱酸性ですが、通風になると尿の酸性が強くなるので、腎臓で濾過した尿酸が尿に溶けにくくなって腎臓にたまり、尿酸結石ができやすくなります。

この尿の酸性度というのは、食べ物の影響を強く受けています。酸性化した尿をアルカリ性に傾けて、尿路結石を予防するためには、毎日の食事で、尿をアルカリ化する食品を十分に摂取することが大切です。こちらにアルカリ性食品の例をまとめましたので、ご参考になさってください。

毎日食べたい、アルカリ性食品

・海藻類:ワカメ、コンブ、ヒジキ など
・野菜類:キャベツ、ニンジン、ダイコン、ナス、ホウレンソウ など
・いも類:ジャガイモ、サツマイモ など
・果物類:バナナ、メロン など

*食べすぎによってエネルギー量が増えてしまう食材に関しては、食べる量に気をつけましょう。

繰り返しになりますが、食べすぎ飲みすぎはつねに身体に何らかの負担を与えるものです。とくに、痛風や高尿酸血症は生活習慣と密接に関連している病気ですから、年末年始はもちろん、日常生活でどれだけ気を配っておくかが大切になってきます。

病気になってしまったら楽しめるものも楽しめなくなってしまいます。いつまでも美味しい料理とお酒を楽しめる人生のために、皆さまの「カラダ☆メンテナンス」のお役に立てれば嬉しく思います。

(文:管理栄養士 Charさん)

Prolife
Charさん
3児の母。子どものPTA活動を通じて、もう少しだけ”役に立つお母さん”になりたいと考えるようになる。ある日、「ミスター食育」こと服部幸應氏の講演を聴いたことをきっかけに、服部栄養専門学校に入学。老体に鞭打って栄養学を学び、卒業後は病院勤務の傍ら管理栄養士資格を取得。その後、保育園の給食室に勤務し、離乳食や幼児食、行事食についての経験もあります。現在は、自宅で「小学生のための料理教室」を開き、子どもたちの「生きる力」を育むお手伝いをしています。