ゆがくとは 茹でるとの違いと脂質の変化を解説
レシピには「湯がく」「茹でる」という言葉が当たり前のように出てきますが、「湯がく」「茹でる」の正確な意味はご存じでしょうか。同じような意味としてとらえている方もいるのではないかと思います。
言葉の意味を理解することで、よりレシピに忠実に作ることができますので、ぜひ理解しておきましょう。
今回は湯がくとは何か、湯がくと茹でるの違い、湯がく必要のある食材や、湯がくと脂質は落ちるのか、について解説いたします。
湯がくとは
湯がくとは、食材をお湯にさっと浸すことです。中まで火を通すことは目的としておらず、主に野菜などをしんなりさせる程度に短時間だけ湯に浸します。
湯がくことで、臭みをとったり、あく抜きをしたり、野菜を柔らかくするという効果があります。
茹でると湯がくの違い
茹でるとは、食材の中までしっかりと火を通すために、沸騰したお湯で加熱することを意味します。湯がくよりもお湯の中に入れる時間は長いイメージです。オクラは1分程、卵は8分~13分程、ジャガイモは20分程と食材に合わせて茹で時間は様々です。
西日本では方言として茹でることも「湯がく」と表現する地域もあります。また、湯がくと茹でるは似ている言葉であり、意味を混同しやすいです。
しかし、正しい意味としては、湯に入れる時間にこのような違いがあることを覚えておきましょう。
湯通しとは
湯通しとは、食材を湯の中に入れて表面だけ軽く火が通ったら、すぐに湯から取り出すことを言います。「熱湯にさっとくぐらせる」と同じ意味です。肉や魚を湯通しすると表面が白くなることから、肉や魚を湯通しすることを「霜降りにする」と表現されることもあります。
湯がくは少ししんなりするまで湯につけておくので、湯通しの方が湯がくに比べて、湯につける時間が短いイメージを持っていてください。
湯通しすることで、豚バラのような脂が多い肉は余分な脂質を落とすことができます。また、ぶりは臭みやぬめりをとる必要があるので、調理前に湯通しすることが多いです。
わかめは色を良くするため、しらたきはあくを抜くために湯通しする必要がある食材です。
ゆでこぼしとは
こぼしとは、沸騰した湯に食材入れ、2~3分茹でたら食材をザルにあけ、鍋のお湯を捨てることをいいます。
ゆでこぼしする食材の例としては里芋が挙げられます。里芋は調理する前にぬめりをとるために、5~10分程茹でてからゆでこぼしをします。
ごぼうはあく抜きのため、小豆は渋みを抜くためにゆでこぼしが必要な食材なので、覚えておくと良いでしょう。
ゆがく必要がある食材
湯がく必要があるのは、あく抜きや、臭みとりが必要な食材です。生のままでは食べづらい食材も、さっと湯がくことでおいしく頂くことができます。
以下の通り一例を示します。
葉物野菜
葉物野菜ではほうれん草や小松菜などは湯がいてから調理しましょう。
ホウレンソウや小松菜には「シュウ酸」という成分が含まれています。
シュウ酸はえぐみの原因物質で、さらに体内でカルシウムと結合して結石になります。カルシウムの体内への吸収を阻害するだけでなく、結石は尿中に排出されるので尿管結石の原因にもなりかねません。このシュウ酸は水に溶けやすい性質があるので、湯がくことでシュウ酸の量を減らすことができるのです。
例として、ほうれん草の湯がき方を解説いたします。
ほうれん草は根元の泥を良く洗い流したら、小さじ1程度の塩を入れた湯で湯がきます。この時、根元から湯につけて、茎の部分だけ先に30秒程湯がきます。その後葉も湯に沈めてさらに30秒程湯がいて、冷水に取ります。水気を十分に切ってから使いましょう。
葉物野菜は傷みやすいので、購入したらできるだけ新鮮なうちに湯がいて召し上がることをおすすめします。
そして、ほうれん草や小松菜は湯がいて使用する大きさに切ってから、フリーザーバッグなどで冷凍することもできます。汁物に入れるときは凍ったまま鍋に入れて調理もできるので便利です。
たけのこ
たけのこもあくを抜くために湯がく必要がある食材です。
たけのこには「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」という物質が含まれています。
ホモゲンチジン酸は、チロシンというアミノ酸が酸化してできた物質で、たけのこのあくの主な原因物質として知られています。
たけのこは掘り起こしてから時間が経てば経つほど、チロシンが酸化されてホモゲンチジン酸になり、えぐみが増していきます。そのため、掘り起こしたらできるだけ早く湯がいて、酸化を止めることが必要です。
たけのこの湯がき方を解説いたします。
たけのこは外側の皮を2,3枚むいたら、あとは皮付きのまま湯がきましょう。湯がく前にたけのこの穂先を切り落とし、繊維に沿って縦に2本切り込みを入れます。米ぬかと赤唐辛子を加えてかぶる位の水を加え、1時間ほど弱火で湯がきます。
たけのこは湯がくときに米ぬかを入れると良いと言われています。
米ぬかに含まれているカルシウムがシュウ酸やホモゲンチジン酸と結合しやすい性質があるからです。
また、米ぬか以外にも米のとぎ汁や重曹などのアルカリ性の物質を入れると、酸性のホモゲンチジン酸取り除きやすいことが知られています。
湯がいたら鍋の中でそのまま自然に冷めるまで放置しましょう。そのままゆで汁につけておくことによって、さらにアクが抜けるとされています。
湯がいてあく抜きしたたけのこは、ゆで汁につけた状態で冷蔵であれば5~6日間保存が可能です。
こんにゃく
こんにゃくもあく抜きが必要であることは、よく知られているのではないでしょうか。
こんにゃくは原料であるこんにゃく芋にあくの成分である「シュウ酸カルシウム」が含まれています。また、こんにゃくを製造する際に凝固剤として使用する「水酸化カルシウム」もあくの原因です。
こんにゃくのあく抜きについて解説いたします。
こんにゃくは使う大きさに切ってから小さじ1程度の塩でもみます。塩が付いたまま沸騰した湯に入れ、2~3分湯がきます。ザルにあげて下ごしらえ完了です。
肉類に関して
肉に関しては一般的に「茹でる」や「湯通しする」といった調理法を用いますが、しゃぶしゃぶは「湯がく」といった表現を用いることがあります。
しゃぶしゃぶで豚肉を湯がいた場合、脂質がどれ位落ちるのかについてご紹介いたします。
また、牛肉も茹でることで脂質をカットすることができます。
牛薄切り肉の場合、それぞれの部位で100gに含まれる脂質の量が、生の状態から茹でた後にはどれ位の脂質が落ちるのかをご紹介します。
肩ロースは24.5gだった脂質が茹でると10.3gに、ヒレでは14.8gだったものが12.3gに、モモでは8.3gから7.3g、バラでは39.3gから30.4gにと、いずれの場合も茹でると脂質の量を減らすことができます。 肩ロース肉に関して言えば、生の状態と比較して57%も脂質を落とすことができるのです。
脂質の摂りすぎを気にしている方は、薄切り肉を茹でて料理に取り入れる方法も試してみてはいかがでしょうか。茹でた薄切り肉をサラダにトッピングする、野菜とともにマリネにするなど、工夫次第で美味しく頂くことができます。さっぱりと食べたいときにもおすすめです。
まとめ
湯がく、茹でる、湯通し、ゆでこぼしの言葉の違いについて解説いたしました。言葉の意味を正確に理解することで、レシピに忠実に作ることができ、より美味しく召し上がることができるでしょう。
湯がくことで得られる効果には、代表的なものとしては野菜のあく抜きをする、臭みをとるというものがあります。さらに、肉は湯がくことで余分な脂質を落とすことができるため、脂質を抑えてより食べやすく調理することができます。
1つ1つの作業をおろそかにせず、丁寧に行うことで、料理のおいしさも1ランクアップするのではないでしょうか。時間があるときはレシピの細かい表現にも注目しながら調理してみてください。
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