
妊娠中のビタミンを解説 摂取したほうが良いものと悪いものとは
妊娠中は赤ちゃんが育つための栄養として、またお母さんの健康維持や体力づくりとして、栄養が偏らないようにバランスのよい食事を心がけたいものです。
この記事では、栄養素の中のビタミンに注目して、妊娠中に特に積極的に取りたいビタミンの種類、また逆にとり過ぎてはいけないビタミンについて解説します。取ったほうがよい(悪い)理由と多く含む食材を紹介していますので、妊娠中の毎日の食事に活かしていただけるでしょう。
妊娠中に特に重要なビタミンとは
ひとくちにビタミンといっても、ビタミンには多くの種類があります。どれも身体には必要なものですが、妊娠中に特に重要となるビタミンを紹介します。
ビタミンB6の解説
ビタミンB6は、たんぱく質の新陳代謝に役立つビタミンです。妊娠中は、妊娠中期からたんぱく質の摂取量を増やすことが推奨されていますから、その分ビタミンB6も必要になります。
そしてまた、ビタミンB6にはつわりを軽減する働きがあるとされ、産婦人科診察ガイドラインのつわりの治療法の中にも、悪心の緩和にビタミンB6を投与するとの記載があります。
つわりに悩んでいるお母さんには、ぜひ積極的に取ってもらいたいビタミンといえるでしょう。
ビタミンDの解説
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助け、骨の健康に役立つビタミンです。カルシウムは赤ちゃんの骨や歯をつくるのに不可欠で、妊娠中は積極的にとりたい栄養素のひとつです。カルシウムの吸収をサポートするビタミンDをあわせて取るようにしましょう。
不足すると妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などのリスクが高まるほか、カルシウムが体内に吸収されにくくなるために、骨粗しょう症や骨軟化症の原因にもなります。
ビタミンCの解説
ビタミンCには強い抗酸化作用があり、皮膚や血管、骨などを形成する重要なたんぱく質であるコラーゲンの合成を助ける働きがあります。
また、ドーパミン、アドレナリンなど神経伝達物質の合成、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモンの合成にもかかわっています。
ビタミンCが不足すると、疲労感や倦怠感、関節痛を引き起こします。また、血管がもろくなりやすくなってしまうことも分かっています。
妊娠中はなにかとストレスがかかりがちですから、ビタミンCを積極的に補給したいものです。厚生労働省発表の資料でも、妊娠中、授乳中はビタミンを通常時より多く取ることが推奨されています。
ビタミンB6を多く取れる食材
ビタミンB6は、かつお、まぐろ、サンマなどの赤身の多い魚、鶏ささみ、豚ヒレなど脂の少ない肉、バナナ、ピスタチオ、にんにくなどの食品に多く含まれています。
レバーにも多く含まれていますが、妊娠中はレバーを食べることはおすすめできないので、ほかの食品から取るようにしましょう(おすすめできない理由は「妊娠中にとり過ぎてはだめなビタミンAとは その理由」で解説します)。
また、米にも含まれていますが、白米より玄米のほうが含有量が多くなっていますので、毎日のご飯に玄米を混ぜるのも継続的に摂取する方法のひとつでしょう。
ビタミンDを多く取れる食材
ビタミンDは、サケ、サンマ、ブリ、イワシなどの魚、しいたけ、舞茸、エリンギなどのキノコ類に含まれています。しいたけは生よりも干ししいたけのほうが含有量が多くおすすめです。さらにしいたけは日光にあてるとビタミンDが増えるといわれています。もともと日光で干してあるのでは?と思うかもしれませんが、ほとんどの干しシイタケは熱風で乾燥させているそうです。余裕があれば、調理に使う前に30分~2時間程度、日光に当てるとよいでしょう。
また、ビタミンDは脂溶性のため、油で炒めたり、ゴマやピーナッツなどと一緒に取ると吸収がよくなります。
ビタミンというと野菜に多く含まれているイメージがありますが、実はビタミンDは野菜や穀物には含まれていません。ビタミンDを多く含む食品はわりと少ないので、意識して取るようにしないと不足してしまう恐れがありますので注意しましょう。
ビタミンDは食物から摂取するほかにも、紫外線を浴びることで体内で生成することができます。また、カルシウムは適度に運動をすることで骨に沈着しやすくなりますから、日光浴と運動を兼ねて、ウォーキングを習慣にするのもよいでしょう。
ビタミンCを多く取れる食材
ビタミンCは、赤ピーマン、ブロッコリー、ほうれん草などの野菜、キウイフルーツ、イチゴ、ネーブル、レモン、柿などの果物、じゃがいも、さつまいもなどのいも類に多く含まれています。
ビタミンCを効率よく取る方法として、アセロラジュースもおすすめです。アセロラはビタミンCを大変豊富に含んでいます。ジュースなら果物を切ったり野菜を調理したりという手間が必要ないので、忙しい妊婦さんでも手軽にビタミンCが補給できるでしょう。
ビタミンCを多く含む食品を食べるときは、調理法にひと工夫するとビタミンを効率よく摂取できます。ビタミンCは水溶性で水に溶ける性質があるため、ゆでるとゆで汁に溶け出ししまいます。加熱調理をする場合は、長い時間ゆでたり水にさらしたりせず、電子レンジで加熱したり、炒める、蒸すなどの調理法を選べば流出が少なくてすみます。
ビタミンの中には過剰摂取が心配なものもありますが、ビタミンCは取り過ぎた分が体内に蓄積されることはなく、速やかに尿として外に出てしまいます。食品として取る分には、取り過ぎを心配する必要はないでしょう。
妊娠中に取り過ぎてはだめなビタミンAとは その理由
妊娠中は多くの栄養素をバランスよく摂取するのが基本です。しかし、中には取り過ぎると赤ちゃんによい影響を与えないものもありますので、覚えておきましょう。
ビタミンAは目の機能、皮膚や粘膜の健康を保つために重要なビタミンです。しかし、妊娠初期に取り過ぎると、お腹の赤ちゃんに先天的な奇形が起きやすくなるといわれています。
豚レバー、鶏レバー、ウナギなどはビタミンAを多く含んでいますので、特に妊娠初期には取り過ぎに気をつけなければいけません。
ビタミンCなど水溶性のビタミンは、摂取し過ぎても尿として排出されてしまうので取り過ぎを気にする必要はないのですが、脂溶性ビタミンのビタミンAは身体に蓄積される性質を持っています。
サプリメントの利用で過剰に摂取してしまうケースもあるようです。ビタミン摂取を目的に複合型のサプリを飲む場合には、成分をしっかり確認するようにしましょう。
まとめ この記事のおさらい
妊娠中は、赤ちゃんとお母さんの健康のために、普段よりいっそう栄養バランスには気をくばりたいものです。
ビタミンの中では、たんぱく質の新陳代謝を助け、つわりを軽減する働きのあるビタミンB6、カルシウムの吸収をサポートするビタミンD、抗酸化作用が高く、コラーゲンの合成に役立つビタミンCは、妊娠中に特に意識して取りたいビタミンでしょう。
ビタミンには水溶性のものと脂溶性のものがあります。水溶性ビタミンは、長くゆでたり水にさらしたりするとビタミンが溶け出してしまうので注意しましょう。脂溶性のビタミンは、油で炒めたりゴマやピーナッツと一緒に取るとビタミンを効率的に摂取できます。
妊娠中に取り過ぎてはいけないのはビタミンAです。妊娠初期の過剰摂取は胎児に先天的な奇形を起こすリスクが高まるとされていますので、気をつけてください。サプリメントからの過剰摂取にも注意が必要です。